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セパレート  作者: アキトの小説の時間
チームアップ
6/32

護衛任務

 オウギのチームに新しい任務が与えられた。日本と良好な関係な国王様とその御一行が観光に来日され、その王子様の護衛を任されたのだ。王族なので元よりロイヤルガードが護衛についているのにも関わらず、今回セーフガードに追加で護衛が頼まれた。

 王子の護衛には側近としてアンセムがつき、それ以外は遠巻きで待機することとなった。王子は今年、受験生であるため合格祈願を込めて、学業の神社を訪れるとのこと。

 神社では何も起こらず、無事に出ることができた。しかし護衛が何も起こらずに終わるはずもない。神社を出てすぐに厄介なのが近づいてきた。


「ゲイン、投げろ!」


 厄介な存在にいち早く気づいたララバイは真っ先に飛んでいく。その速さを抜き、オウギが投げ飛ばされる。アンセムはその厄介な存在から遠距離攻撃が仕掛けられるまで気づかなかった。咄嗟に王子を包むように盾になる。その攻撃はオウギが防ごうとしたが、更に間に入ったララバイが傘で防いだ。


「身を削って守るくらいなら、盾の1つくらい持ったら?」

「そんなもの必要ない。アンセム、早く王子様を安全な場所に」


 アンセムは王子を担いで走っていった。舗装された道だから密林を走った時よりも速い。


「王子様がお姫様抱っこされてる」

「こっちに集中しろ。天使と戦ったことは?」

「あるよ。その結果長い眠りにつかされたけど。そっちは?」

「中学の頃に、4人がかりで惨敗した」

「いいね、リベンジ戦じゃん。あーでも私が戦ったのはあの天使じゃない。まー代わりに復讐されてもらうけど」


 天使は神が自分に似せて作った雑用をさせるための存在であり、先に作った人間と区別するため、自然界の生き物の要素を付け足されている。ちなみに人間は神が、自然界に自分に似た生き物がいた場合どんな生態系を築き上げるのか観察するために作ったのが始まりだ。

 今回の天使は肩から手首にかけて、トカゲのような腕の模様がある。さらに横髪の間から、黄色い丸い目があちこちをぎこちなく見ている。両手に細い剣を持ち、さっきの攻撃はアレから放たれたことが分かる。


「天使よ、目的はなんだ?何故あの王子を狙う?」

「我らに目的などない。お前はオウギだな。突いてみた甲斐があった」

「何?オウギのこと知ってるの?」

「どうやら天使の間でも私は有名らしい」


 天使の腕の模様が離れ、実質4本腕になる。さらにどこからか細い剣が現れ、4本の剣は熱を帯びる。地面の石畳が軽く触れるだけで溶けている。


「楽しませてもらう」


 ララバイが真っ向から攻撃をしかける。高温の剣に触れても傘は全く傷ついていない。しかしこちらの攻撃は見切られており、天使は2本の腕しか使ってない。オウギは自身の体に耐熱加工を施し、背後から殴りかかるも、2本の腕で止められる。どうやら天使の腕の関節はどんな方向にも曲がるようだ。しかも手首を回して剣を回転させてくる。


「振り回すのカッコいいって思ってる?」


 ララバイは天使の動きを学習し、隙を見つけて顔面に蹴りを入れた。しかし蹴られた部分は粘土のように彼女の足に付着し、重荷になる。あえて隙を見せたようだ。天使はオウギを蹴飛ばし、4本の剣で彼女を突き刺す。ララバイはガラスのように砕け散った。どうやら見てオウギの技を学んでいたようだ。背後をとったララバイは、刃のない傘で特大の斬撃を放つ。しかし天使はララバイが姿を表す前に2本の剣を背後に回していた。どこにいるか分からないから全体を守れるようにしたんだ。


「2本では防ぎきれぬか」


 ララバイの攻撃を防いだ剣は折れ、背中には切り傷ができる。傷はすぐ治るし、剣も新しいのが出てくる。


「まだやる気か」

「場所を移します。曲がりなりにも神の屋城の前では、私の最大限の力を発揮できない」


 場所が荒野に移された。石畳溶かしてたのに今更神を気にするのか?それともあれは神社の敷地外だから関係ないのか?

 場所が変わるなり、高熱を帯びた斬撃を放ってきた。ララバイの拡げた傘の後ろに2人で身を隠す。だが相手が見えないのはよくない。放った斬撃より速く動かれれば、どこにいるか分からない。背後に来て右腕の2本で突き刺してきた。その攻撃はオウギが身をもって止める。そして体を回して剣の刃を折る。


「これで私も刃物を手に入れた」


 オウギは体に刺さった刃物を体内で運び、手から突き出す。


「いい加減終わらせるよ。天使の頭真っ2つにしてやる」

「やってみろ」


 ララバイが質量のある分身を3体作り、4人で4方向から襲いかかる。質量のある分身はある程度の衝撃を与えれば消える。まず正面。次に右、続いて左、最後に背後のを斬り上げる。

 これはオウギが剣に力を込める時間稼ぎでしかない。オウギは体か出た2本の剣で勢いよく斬りかかる。天使は4本の剣で2段構えの防御をとる。天使の剣は軽く刃が切り落とされていくが、あいにく天使が剣を出す方が早い。オウギの渾身の一撃だったが、8本の剣を犠牲に防がれた。天使はさらに背後から襲いかかってくるララバイに備える。

 しかしそのララバイは質量を持った分身だった。正確にはガラスのように割れたララバイを内包した分身だった。本物はオウギをガラスのように砕き、天使の胸に傘を突き刺してきた。そして傘で斬り上げ、天使の顔を真っ2つにする。


「どうだ!宣言通り頭を2つにしてやったぞ!」

「おおう、これは確かにしてやられた。私の敗北だ」


 いつの間にか場所が元の神社前に戻る。天使の傷はみるみる塞がっていく。


「だが1つ聞かせてくれ。何故あの時彼女が本物でないと気づいていた?」

「気づいてはいませんでしたよ。ただララバイは、何度も見えるところから攻撃をしかけるほど単調ではありません。それにあなたからの攻撃にも備える必要があった。だから回避にまわっていたんです」

「砕けてくれなかったら、危うく弟を刺してるところだったよ」


 オウギのは安定行動だが、ララバイのは彼を信用してこそできる賭けだ。天使はララバイの賭けに負けたのだ。


「なるほど。私の名はスペクタラルス。困ったことがあれば私の名を呼びなさい。1度だけ私にできる範囲で手を貸そう」


 天使はそう言い残して姿を消した。


「1度だけの手助けって。貴重なアイテムみたいで使い時を見失って、もち腐れてしまうのよね」

「必要にならない方がいい」


 今回王子の護衛として、任務を与えられた。大方セーフガードがあの天使を観測し、このままでは王子に危害を加える可能性があると話し、護衛を増やさせたのだろう。そしてその本当の目的は、オウギと天使を戦わせること。つまり、またテンガンに試されたんだ。

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