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セパレート  作者: アキトの小説の時間
ダンカイ経歴
30/32

ロイヤルフォース

 ハーミーとオウギが付き合うことになったのが、中1の夏休み前のことだ。付き合っているとは言え、特に変わったことはない。スキンシップが増えて、オウギの家でお泊まり会するようになったくらいだ。なんならオウギの家にはダンカイ、デング、ホンドも泊まってる。

 そんな2人の関係が1年以上続いたある日のこと、5人で隣町の神社の祭りに来ていた。人が多くなる夜を避けた結果、屋台は全然開いていない。


「唐揚げ棒があったからヨシ」

「そんなのコンビニで買えるだろ」


 デングはみんなで別けるために5つ買ったが、これでダンカイの分がなくなった。ホンドは時間が潰せそうな場所を探している。


「カラオケでも行ってみるか?このメンバーで行ったことなかったよな」

「オウギ歌える?」


 オウギは上の空だったのか、1度目は聞き逃した。彼が話を聞いていないことは珍しくない。


「オウギ?」

「あ、あー何だっけ?」

「カラオケで歌える?」

「どうだろう。行ったことない」

「なら行ってみるか」


 残念ながらオウギの初めてのカラオケは中断されることになる。5人で移動中、彼らの前に異形が現れたのだ。それは象の頭を切り落として胴体の方の断面に人間の腰を繋げたような姿をしている。人間の足の部分もあるが、地面に届いていないから足としての役割を果たしていない。何だあれ?


「感じたぞ、強いロイヤルフォースを。その地位に相応しい存在か確かめさせてもらう」

「気をつけろ。天使だ」


 オウギが警戒している。しかし今彼が何と言ったのか理解できない。


「あれが天使?化け物だろ」

「怒らせるようなことを言うな」


 天使であるかはともかく、オウギが警戒していることから強いことは間違いないだろう。何を思って現れたか知らないが、ハーミーだけは傷つけさせてはならない。


「ハーミー、離れてろ」


 ダンカイが彼女の名前を呼んだことで、天使にも標的に名前が伝わった。


「ハーミーと言うのか。お前には配下がいるのか。ならその配下の強さを試させてもらおう」

「配下のつもりはないが、良いだろ。返り討ちにしてやる!」


 デングが無謀に立ち向かった。天使の腕が象の鼻のように動き、デングの足を掴んで地面に叩きつける。さらに象の足でのしかかろうとしたが、デングはギリギリで回避した。ホンドとダンカイも天使に襲いかかるが、軽く叩きつけられる。唯一オウギだけが蹴りを入れられた。


「お前は頭いくつか抜けているみたいだな」


 天使はオウギを蹴飛ばした。だが蹴飛ばされながら3人の傷を修復させる。無理だから離れていろという意図だが、3人とも再戦に挑んだ。


「力の差を分かっていないようだ」


 天使がホンドの右腕を掴んで溶かした。本当は全身溶かすつもりだったが、途中でオウギに離された。ホンドはなくなった腕の痛みに苦しむ。残念ながら天使が直接触れてまで与える呪いはオウギでも解除できない。


「下がってろ!」


 オウギは天使に攻撃を当てられるが、それで勝てるような相手じゃない。オウギは放り投げれ、膨らませすぎた風船のように爆散させられた。


「オウギ!」


 ハーミーが驚いて叫ぶ。幸いこれは修復できる。普通に爆散するよりも時間がかかっている。


「オウギ?お前の名前はオウギか。お前がオウギか。その特徴も一致している!」


 天使はなぜか嬉しそうにオウギと連呼している。さっきからこの天使が何を思っているのか分からない。


「あのハーミーという娘はオウギを配下につけたのか」

「何なんだ?」

「良いだろう。まだまだ力不足だが、ハーミー、その存在を認めよう」


 天使はなぜか勝手に認めて去っていった。去る前にホンドの右腕の呪いを解いてほしかったが、それは彼らが無謀に挑んだ結果だ。

 オウギは不本意ながらも父テンガンにホンドの呪いを解くように頼んだ。しかし、どうやら天使の複雑な呪いを解くことはできないらしい。


「セーフガードでも無理なのか?」


 ダンカイ、デング、ハーミーがオウギの家に集まって、ホンドがどうなったかの知らせを共有してもらっていた。ホンドは腕の苦しみを和らげるためにセーフガードのコールドスリープカプセルで眠っているらしい。


「あの呪いは誰かに移すか、魔術的なもので留めておくのが限界とのことだ。今専用のガントレットを作ってもらってる」

「まぁ腕がないよりは良いだろう。けど結局あの天使は何だったんだ?また来るのか?」

「テンガンが言うには、天使はロイヤルフォースという天使のみが見分けられる特別なオーラを発する者に試練を与えるらしい。それで私たちがハーミーの配下と思われ、力を試された」

「理不尽だな」

「ちなみに天使たちが2度も試練を与えたことはないらしい。だから安心してくれ」


 ダンカイはどういった理屈でハーミーにロイヤルフォースが発現したのか、ロイヤルフォースが発現している人と発現していない人でどんな違いがあるのかも知りたかったが、オウギもよく分かっていないなら聞くだけ無駄だろうと諦めた。それより頼みたいことがある。


「オウギ、俺たちにお前の言う技を教えてくれないか?」

「ダンカイ、俺たちって俺も含まれてるよな」

「さっきも言ったが、もうハーミーが天使に襲われることはないぞ」

「だが俺たちは3人がかりでもオウギ、お前1人に勝てない。回復能力もないから骨折だって辛い。それじゃダメだろ」

「そうだな。オウギ、俺からも頼む。いずれはセーフガードになるにあたって必要になるからな」

「……わかった良いだろう。ただ私から与えられるのは技の基礎となる根源だ。その原理を理解できなければ使いこなすことはできない」

「何でもいい」


 オウギは手始めに、再生能力、予知能力、強化能力、意思疎通能力、文字理解能力の5つを与えた。ただオウギはその原理を説明するのが下手だった。彼は感覚で会得したため他者に教えるのは苦手のようだ。

 ダンカイは実質独学でものにした。デングはあまり扱えず、後から貰ったホンドに追い抜かれた。ハーミーは貰わなかった。彼女は戦う気もないし、オウギも戦わせる気がない。それでいい。ハーミーを守るのが4人の役割だ。

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