オウギVS分離したオウギ
オウギにはテンガンの集めた禁書の技と強者たちと戦ってきた実践経験がある。しかし分離したオウギにはそれに加えて、肉体の常識から外れ最も戦闘に優れた体がある。分離したオウギが人間の姿をしているのは飾りだ。
「私は君だった。そして君から離れてから時間を無駄にせずにここまで仕上げ上げた。君は何をしていた?差がどんどん開く一方だったぞ」
「そんな力必要なかっただろ」
オウギは姿を消したり増やしたりしてあらゆる技を披露していく。どれも分離した自分には通じない。
「呆れる。体の違いの差を分かっていない訳じゃなあるまい。あとそうだ、君がここに来られたのは君の実力じゃない。私が来ることを許したからだ」
「なんだ舐めプか?」
オウギは人間の魂からできている黄金の床に叩きつけられた。それはガラスのように割れる。しかしオウギはこの隙を攻撃に使わなかった。
「もうその肉体を保つのも限界だろう。再生能力も無限じゃない。私は君の元から離れたと言ったが、この状況からして、君は抜け殻だ。本来の私が出てきたと言う方が正しい」
「本来の私だと?寝ぼけたことを言う。君はこれまでの自分と同じことをやっているだけのクローンじゃないか?」
「この重要性の分からない変異体め!」
分離したオウギは少し怒った。怒ってオウギの頭を掴み、何度も床に叩きつける。オウギは叩きつけられながら、昔の自分もこんな感じだったと思い出す。叩きつけながら怒りが増している
「私は大いなる役目を果たします! これが成功した時、世界がようやく次のステージへ進めます。あなたはなぜ私を止めようとするのですか?現状を続けることに何の価値があると思っているのですか?」
既に叩きつけられている頭はほとんどはないが、相手の頭を掴み返し、同じように床に叩きつけた。効いてはいる。ただすぐに回復される。
「言ったろ、私はハーミーの仇できた。彼女は敬意を教えてくれた。たとえどんな相手であろうと、己のために無視することは許されない」
「それはハーミーの考えだ。君の意志はどこにある?ただ誰かのための敵討ちで私は止められない!」
分離したオウギは、強力な光でオウギの肉体を消滅させた。その光は霊体にもダメージを与える。
「君がコンバージェンスの用意をしている間、私はハーミーから学んだことを思い出した。なぜあの欲望が、かつての欲望になったのかを思い出した」
「ハーミーに惚れて、望みが達成された時に消滅させてしまうことを嫌がったからだろ」
「違う。それは記憶の流れで、単純化していった結果残っていた思考だ。私はハーミーから相手を尊重する考えを学んだ。コンバージェンスは相手の意志を無視することになる。だから壊させるわけにはいかない」
「結局彼女絡み。私としても情けない。それともそれが君の意志だと言うのか?」
「これで何が悪い?私はハーミーに全てを捧げると誓った。この世界も、全て彼女のもの。それを私が潰すわけにはいかない」
霊体の体で分離したオウギにパンチをお見舞いする。回復されるだけで効いてないわけじゃない。だが、分離したオウギには別で効くものがあった。
「そうか……ただ復讐心だの、責任だの、立場だのでここにいるわけじゃないんだな。ならば、私もその意志に敬意を払おう。そしてこの戦いを意味にあるものにしよう。勝利は対等な戦いで勝ち取って初めて価値がある」
分離したオウギは自ら体を脱ぎ捨て、オウギと同じ霊体の状態になった。これはオウギの狙っていたことだ。私なら価値ある勝利のために己の力を相手と対等になるまで捨てる。
「これで私にあるのは、あらゆる技と戦いの経験。そこに違いはない。そして唯一の違いは、互いの意志。さぁ、決着をつけよう」
2人のオウギが衝突し合う。その様子は下で戦っている連中にも感知される。
「だから、オウギ様の元にアイツを行かせることには反対だったんだ!」
2人の戦いに割り込むために誰かが飛び上がった。しかしすぐに落とされる。ララバイが飛びかかって傘を突き刺したのだ。
「ボスを信じないなんて、忠誠心のない部下だ」
「けど正直言って同情する」
下の戦いも、お互い疲弊し始めている。既にホンドのキャノン砲は破壊され、ゲインの腕も折られた。アンセムは能力がバレて防御で手一杯。ララバイだって体は満身創痍だ。それでも彼らはまだまだ戦う。だから早く勝て。
2人の衝突は、どちらかが消えるまで止まらない。そしてその衝突は完全に均衡している。2人とも消えるならコンバージェンスは止まる。だからオウギの方が死んでも問題ない。しかし、彼にも消えるつもりはないらしい。
「なぜだ?なぜ道連れではなく、生きようとする意志を発している?ここで生き残っても、君には何も残らない?」
「あいにく世界を消滅させたがっているのは君だけじゃない。だから私は守り続けなければならない。死ぬわけにはいかないのだ!」
「重大だな」
オウギは相手の緩みを感じた。心のどこかに「負けてもいい」という感情が出てきたのだ。オウギはそのチャンスに一気に押し切る。
衝突のエネルギーが分離したオウギの霊体を破壊した。再生も効かず、じわじわとその存在を消していく。
「戻ってこい、私の一部よ」
「馬鹿を言うな。それではまた分離してしまうことになる。断ち切ることも大切なのだ」
分離したオウギは完全に消滅した。それと同時に、黄金の要塞城も崩れ始める。オウギに逃げ出す力は残っていない。しかし助けてくれた人がいる。いや、人の体を使っている天使だ。
「そうか、分離した私は、ハーミーの亡骸を、体のない天使に与えて恩を売ったのだな」
ハーミーの姿をした天使はオウギの体を治し、崩れた黄金の要塞城の瓦礫の上に寝かせた。全力を尽くして、体は動きそうにない。
「私にもっと力があれば、あなたに愛する人を返せた。でも代わりになることはできる」
「悪いが、その体を捨ててどこかへ行ってくれ。あ、綺麗な状態で頼む。葬儀に必要になるからな」
「あなたがそれを望むなら。それと伝えておきたいことが1つ」
天使は耳元で衝撃の事実を伝える。その後、オウギの横に寝て、体を置いていった。少なくとも天使が言ったことは、オウギにとって、今回の勝利に1つ意味を持たせてくれた。
コハクはハーミーとの間にできた娘だったらしい。




