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セパレート  作者: アキトの小説の時間
チームアップ
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救出任務

 アンセムはナノ物質を体内に飼っており、これを相手や自身に使うことで、行動の抑制、腐敗、強化、修復といったさまざまな効果を発揮できるようだ。最初に会った時に腕が黒くなっていたのもそのナノ物質の影響らしい。本人は隠そうとしていたが、彼ら相手に見せた時点で隠せない。


「ナノは肉体には入るが霊体には入らない。そんな相手に君はどう対処する気なんだ?」


 対人戦の訓練でアンセムの頭をオウギの腕が通り抜ける。霊体なら当たってないで済む話だが、オウギがそこに何の追加効果も足していないはずもない。


「うぅ、頭痛がする」

「倒れる勢いでやったんだがな」

「その幽霊状態どうやってるの?」

「肉体を失えばなれる」

「チームオウギ!任務だ」


 答えになっていない気がするが、この会話はここまで。教官が実践訓練を持ってきた。任務の内容がスマホに送られてくる。


「急ぎの内容だ。動きながら確認しな」


 任務の内容は救出保護。マレーシアでは有名な電力会社の経営者ティガナンが、個人で所有している小型飛行機で移動中、ラオスの密林に墜落。現場には救助ヘリが向かうも、ハンターからの攻撃を受け撤退。墜落もハンターによるものであり、ティガナンを人質にしようとしているのではないかと考えられる。


「それでどうするんだオウギ?」


 セーフガードの隠密ジェット機の運転中、ホンドが聞いてきた。実践訓練だが、今回の場合は実際どういった行動をとるかはチームに丸投げされ、教官たちは任務が達成されないと判断した時か、一般人が死ぬかもしれない時しか出てこない。


「ハンターからも狙えない上空から私とゲインとアンセムで飛び降りてティガナン氏を援護しながら密林を出る」

「え!私も」

「ホンドはジェット機を停められたら場所を送って待機。地面の着地させててくれよ」

「私もジェット機の警護に残った方がいいんじゃないの?これ壊されたら脱出経路なくなるじゃん」

「ラオス警察の元まで走るだけだ。ハンターもそこまで追いかけたくなるような相手じゃないだろう。それとも飛び降りるのが怖いのか?安心しろ。君の体はナノ物質で治される」


 オウギは隠密ジェット機を墜落したヘリの上空で止め、ハッチを開く。ゲインは真っ先に飛び降りた。彼は黙って聞いてくれて助かる。そもそも喋れないがな。

 アンセムも嫌々飛び降りた。なんやかんや言っていたが、ちゃんと飛び降りれる。


「さて、あなたの実力拝見ね」

「テンガンの息子だからって厳しく見ないでもらいたい」


 オウギは最後に飛び降りたが、最初に着地できる。着地点には8時間前に墜落した小型飛行機。その側に破損したドロイドが1体倒れている。


「ティガナン氏はドロイドを乗せていたようだ。おかげで今でもハンターから逃げられている」

「追っ手を巻くプロトコルのせいで私たちも追えないんじゃないの?」

「問題ない。こっちだ」

「何で分かるの?」

「痕跡を消した跡がある」


 実際に300m離れた地点の草むらの中にティガナンが3体のドロイドと隠れていた。こっちに気づいてドロイドが護身用の銃を向けてくる。


「落ちつて。あなたの身はセーフガードが保護します」

「セーフガード?頼んだ覚えはないが」

「頼んだのはラオス警察です」


 助けたが来たのにティガナンは不満そうだ。セーフガードを嫌う人間は珍しくないが、彼もその内の1人だろうか?だろうな。


「ここから27km先に仲間がジェット機を配備して待機しています。そこまで彼らが運びます」

「オウギ、お前は……」


 アンセムは何か言おうとしたが途中で諦めた。パワーだけなら2人の方がある。任されるのは当然だ。


「荷物くらい持ってやる。ティガナンさん、そのリュックお持ちします」

「いや、会社のパソコンが入ってるんだ。誰かに渡すわけにはいかない」

「残念だったなアンセム」


 心の中で、そんなもん持ち歩くなよ!という悪態を吐きながらティガナンをおぶる。ゲインはドロイド3体を担ごうとしたが、2体ですんだ。槍が飛んできたんだ。しかもその槍は飛んできた方に戻っていく。さらにジャガーなのか豹なのかチーターなのか分からない猫型ロボットが16体出てくる。


「俺はガルセナ・ザ・ハンター!その男を置いていけ!」


 時々海外ニュースで聞く名前だ。最近聞いたニュースではニューヨークで活動していたヒーローを剥製にしていたな。ラオス警察は最適な行動を取ったと言える。


「ゲイン、アンセム、全力で走ってジェット機へ。ここは私が片付ける」


 2人は指示に従い、走り出す。猫型ロボットが後を追うが4体を除いて謎の見えない壁にぶつかって止められた。今度は体勢を整えて、壁を生み出した原因であろうオウギに襲いかかる。しかし猫型ロボットはオウギの体を通り抜けて停止した。


「頭がいい。仲間が負けるのを見て無闇に突っ込んでこない。さて、あなたはどう動きますか?」


 ガルセナは猫型ロボットを退けさせた。だが引く気はないらしい。槍を地面に刺し、毛皮のコートを脱ぎ捨てて構える。


「その勇ましさには敬意を払います。小賢しい技も、武器も、道具もなしで殴り合って決着をつけるとしましょう」


 オウギとガルセナが自身の体術のみで戦っている間、アンセムとゲインは猫型ロボットに追われながら27kmの密林を走っている。


「ねえ、ドロイド持っている意味ある?」


 アンセムは半分冗談半分本気のつもりで言ったが、ドロイドは銃口を向けて威圧してくる。思ったより賢い。威圧の後は追ってくる猫型ロボットを撃ってくれる。ここ5年でドロイドはすっかり優秀になった。


 オウギとガルセナの戦いは、オウギが彼の左腕を切り取ったことで決着がついた。ガルセナは膝をつき、諦めて首を前に出す。


「さて、あなたのおかげでセーフガードが関与できなかった問題に関与できた。その点を踏まえると私はあなたに感謝しなければならない」

「殺せ」

「申し訳ないが私の任務はティガナン氏の救出。あなたの殺害じゃない。あなたはハンターとして勇敢に戦い死んだという称号を得たいのでしょうが、私にその称号は与えられない。できるのはせいぜい、」

「だったら、お前が死ね!」


 地面に刺さっていた槍がガルセナの残った手元に戻ってくる。そしてガルセナはオウギに槍を突き刺した。しかしオウギの体はガラスのように粉砕し、消え去った。オウギが再び姿を現す前に猫型ロボットがガルセナは避難させる。あのロボットは追ってられないし、そもそも任務にその必要はない。


 アンセムとゲインは追ってきていた猫型ロボットを破壊し、無事にジェット機まで辿りついた。その途端ゲインが担いでいたドロイドが停止する。


「電磁パルスの結界を配備してたからな。さてティガナンさん、そのリュック開けてもらいましょうか」


 ホンドがキャノン砲をティガナンに向ける。


「何の真似だ!」

「何かの真似をしているつもりはありません。我々のリーダーオウギの指示です」


 ゲインがティガナンのリュックを持ち上げ、中身を確認する。パソコンは確かに入っている。だがそれ以外にも、立方体で持ち手のある特殊な箱がある。


「見せたまえ」


 教官がゲインから箱を受け取った。この箱の特殊な部分は開けにくさと外部の遮断性能。手順通りの開け方でなければ開かない上に閉まっていたら中身はそう簡単に分からない。しかし教官は簡単に開いた。


「純粋なエネルギー、の模造品と言ったところね。残念ながら純粋なエネルギーの許可されない研究、使用、製造、売買、所有は150の国家賛成の元、禁止されています。ティガナンさん、あなたの身柄を拘束します」

「だからセーフガードは嫌いなんだ」


 やがてオウギも戻ってきた。ホンドに指示を出していただけあって状況を把握している。


「ガルセナ・ザ・ハンターはどうした?」

「逃げられました。私も心臓に槍を刺されかけて死にかけました」

「……そういうことにしておこう。それでお前はいつからティガナンが純粋なエネルギーの模造品を持っていると?」

「目を凝らしてたら見えました」

「お前はあの箱の中が見えるまで目を凝らしたのか?相当疑い深いんだな」

「あんな箱見えた時点で目を凝らしますし、疑わせていたのはあなたですよ。ただの救出任務なら大して実力を発揮できる場面じゃありません。ハンターは確かに強かったですが、私の強さを知っているなら拝見させるほどの実力じゃありません」


 セーフガードはティガナンが純粋なエネルギーの模造品を製造し、運んでいることを知っていた。しかし彼らが無断でできるのは各国を外国から保護することのみ。内国の問題や違法行為には依頼や相談がなければ何もできない。今回見つかったのが純粋なエネルギーで良かった。これは模造品であれ、研究データであれ、物的証拠が見つかれば身柄を拘束し、その国の警察に身柄を差し出せる。もしかしたらハンターを雇った者の裏にはセーフガードがいたかもしれない。

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