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セパレート  作者: アキトの小説の時間
チームアップ
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永存アカデミー新入り歓迎会

 各国を外敵から保護し、国境を再査定することを目的とした世界最大勢力組織セーフガード。そのメンバーになるには、世界に4ヶ所ある専用の実践訓練学校のどれか1つに入り、その実力を証明する必要がある。

 日本にある永存アカデミーもその1つ。今日はその新入りたちの歓迎会だ。規定の大学で優秀な成績や功績を納めて教授から推薦され、困難な実力テストを突破した総勢244人が集まっている。みんな立たされて教官の有難いお言葉を聞いているのに、姿勢がいい。だが壁をぶち破って入ってきた連中を見て、彼らの姿勢は戦闘に特化したものへと変わった。


「歓迎するぜ新入りども!」


 永存ならず者集団。セーフガードのメンバーにするには力不足だが、だからと言って見捨てるには勿体ない連中。永存アカデミーの警備隊として雇われ、毎年新入りへ奇襲を仕掛けるのが恒例行事になっている。毎回負けるのに。


「お前がオウギだな!」


 1人が相手の名前を言いながら斧を振り下ろしてきた。つまり狙ってきたんだ。斧は彼の体を透け、斧を振り下ろした男の体もオウギは通り抜ける。そして背後に回り、そのまま体を回した勢いで相手の顔に拳を入れる。たったそれだけの攻撃だが、相手はノックアウトされた。


「オウギ!セーフガード13人の創立メンバーの1人テンガンの息子!」

「そこまで言わなくても」


 少し離れた位置で、大男が彼にとっても大きなモーニングスターを振り回している。鎖の長さ的に届くには充分な距離だ。だから投げてきた。しかしオウギに当たる前に途中で鎖を掴まれ、距離が足りなくなった。鎖を掴んだのはデカい男だ。大男からしてもデカい。2m半はある。彼の名はゲイン。オウギの高校時代からの友人である。

 ゲインは鎖を持って高く飛び上がった。ゲインより小さな大男は鎖をしっかり握りしめたが、鎖に引っ張られて少し浮き上がった。そして彼に落下するゲインの体重が乗る。あれは痛い。


「オウギ!俺がお前を倒してやる!」


 やはりテンガンの息子という肩書は永存ならず者集団からの注目を集めてしまうようだ。集中的に狙われる。


「オウギ」


 倒しても倒しても次から次へと名前を呼ばれると思ったが、今度のは友人からだった。中学時代からの友人ホンドだ。


「天井落としてもいいと思うか?」

「構わんだろ。彼らも壁を壊して来たのだから」


 賛同を貰ったホンドは右腕のガントレットをキャノン砲に変形させ、レーザーを発射した。

 天井の鉄骨や瓦礫が降り注ぐ中、永存ならず者集団が一掃される。降り終わった時、巻き込まれて倒れたフリをしていた男がオウギを背後から剣で刺した。


「おー、見事なものだ。力の差を考慮して正面から堂々と戦わずに、背を向けているタイミングを狙ってきた。だがこの行動は力の差を考慮しきれていない結果とも言える」


 オウギが男に剣で刺された。そのはずだった。気付いたら男がオウギに剣で刺されている光景に変わっていた。剣は抜かれ、男が倒れる。


「安心しろ。治してやる」


 オウギの言う通り、男の傷はすぐに癒えた。傷跡もない。これらはオウギの力の片鱗に過ぎない。永存ならず者集団では、全員がかりでも勝ち目はない。


「いやー素晴らしい。今年も豊作で嬉しいわ」


 教官が上機嫌に拍手を送る。永存ならず者集団は殺す勢いで襲いかかってきた。彼らを軽く遇らえなければ、セーフガードに相応しくない。だからこの恒例行事が始まった。

 歓迎会は新入りたちの親睦会を兼ねたお食事会に移る。親睦会だが、この時間中に実践訓練の任務を共にこなすチームを作らなければならない。チームはメンバー4人から8人まで。オウギの友人で永存アカデミーに入ったのはホンドとゲインの2人のみ。つまり最低でも後1人はいないとチームとして認められない。


「オウギ、俺たちと組もうぜ。こっちも後1人足りないんだ」

「どけ!オウギはあのテンガンの息子。そんな彼の隣に立つならそれ相応の強さがなければ釣り合わんだろ」

「だったら私が相応しい」


 質はともかく数はなんとかなりそうだ。永存アカデミーに入れてる時点で質は気にする必要ない。だから、ぶっちゃけ誰でもいい。

 そう思っていたら2mくらいあるのっぽの女が提案してきた。


「オウギ、ここにいる候補者をみんな倒したら、私を選んでくれる?」

「上等だ!お前ら全員倒してやる。アイツらじゃ物足りなかんだ!」

「悪いけど決着はもうついてる」


 のっぽの女のその一言と同時に10人くらいいた候補者たちが一斉に苦しみだした。それは立っていられなくなるほどだ。


「私で決定?」

「まだ立てる奴がいるぞ」


 一度倒れた候補者の内の3人が起き上がった。そして何かを吐き出す。


「永存にもなると、一筋縄じゃいかないもんだね。カッコよく決めさせてよ!」


 のっぽの女の腕が黒くなり、立ち上がった3人を殴り倒す。動きは素早く、強度もあって悪くない。しかし動作が単純だ。それで倒されてる3人もそれはそれでどうなんだって話なんだが。


「ホンド、撃て」


 ホンドが腕のキャノン砲をのっぽの女に向けて発射する。見事に命中し、彼女は吹っ飛ばされて体に風穴を開けられた。しかしその傷はどんどん塞がっていく。ついでに破損した服も直されていく。


「うー、なにするの?」

「最初は誰でもいいと思ったんだが、少し不安になってな。再生能力持ちで安心した。君名前は?」

「アンセム」

「よろしくアンセム」


 会話の最中で傷は完全に塞がった。これがいったい何の力なのかオウギにも見当つかない。噂の能力者か?


「おーい、俺たちは?」

「申し訳ないがまた今度で頼む。今は最低限の人数いれば良い」

「次なんてあるのか?」

「チームの誰か1人が欠ければあるだろ。気をつけれなよホンド」


 まるでこの先ホンドが退場することをオウギが知っているかのような言い方だが、彼に未来を見る力はない。適当なこと言いやがって。

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