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〜 黄昏 〜  作者: 晴倉 里都
第一章
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支援

 智恵香にはずっと疑問に思っていたことがあった。


 被害者である代議士の娘に会ったことも話をしたこともないが、彼女は友人に誘われて、このサークルに入部したと聞いていた。


 おとなしい内気な性格の生粋(きっすい)のお嬢様


 友人の影響で入部することは普通に考えられるが、彼女が被害に遭い始めたのは、大学入学後、すぐにサークルに入部し、そこから本当に間もない頃だ。


 その時にはもう、おそらく秘密の彼氏が出来て、すぐにお金を貢ぎ始めていることは、娘の預金通帳の引き出し額を見ればわかる。


 ただ、普通に考えれば、通常、新入生はサークル内のいわゆるカースト上位の男性役員たちと、そんなに関わることはない。


 なぜなら、彼らと同様に女性陣にもカースト上位の女の先輩方がいて、男性役員たちの周りを陣取り、入りたての新人が男だろうと女だろうと、おいそれとは近寄れないのだ。


 智恵香も新入部員の立場から、男性役員たちとは挨拶程度の関係で、代議士の娘が入部早々いきなり役員と交際関係に発展したのは、通常ではちょっと無理があるのではと考えていたのだ。


 智恵香に冷たいタオルを持ってきてくれた平本先輩が智恵香に直接話しかけなかった理由は、当然、泣いている女の子に無理やり会話をさせるのは忍びないということもあるが、『新人の智恵香に渡す物を、女性の先輩を通じて渡す』ということが、自然な流れだからだ。


 もし、智恵香が、役員である平本から、直接、優しくタオルを渡されていたら……


「たぶん、私は女性の先輩方から目を付けられて、退部に追い込まれたでしょうね」


と智恵香は苦笑いを浮かべた。


 優斗は思った。


 女の世界は怖え


 もし、仮に男性役員のうちの一人が娘に一目ぼれし、彼女を口説いたとしても、役員たちに群がるお姉様方がいる中で、周囲に秘密とは言え、内気な彼女がその役員の一人と「じゃあ付き合いましょう」と即答するとは、どうも思えなかったのだ。


 彼女の性格なら「私なんかが役員の方となんて、畏れ多くて」と、交際を断るはずだと智恵香は踏んでいたのだ。


 よって、サークルの中で、組織的に犯罪を行えるのは、役員たちだろうと勝手に疑ってかかっていたが、娘はもしかすると、一般の部員と付き合い始め、陥れられたのかもしれないという説も捨て切れはしなかった。


 ただ、考えれば考えるほど、娘をここまで追い詰めることが出来るのは、やはり役員クラスくらいの組織だった者達しか想像出来ず、もし一般部員がそんなことをすれば、役員に遅かれ早かれ気づかれ、抹殺されるに等しい扱いを受けるだろう。


 一般部員の中に、役員達を差し置いて甘い蜜を吸うレベルの者がいるとは到底思えなかった。


 こうやっていろいろと考える中で、智恵香の中で、一つの仮説がしっくりきたのだ。


「どういうことだ」


 所長が尋ねた。


「犯人は男性の役員たちだとは思います」


と智恵香は言った。


「ただ、娘をこのサークルに誘い込み、娘の味方のフリをして役員との交際を後押しし、娘を唆して役員にお金を貢がせ、身体を売ることや美人局のやり方を指南した……」


「裏で犯罪を支援している『女』がいると思うんです」

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