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〜 黄昏 〜  作者: 晴倉 里都
第三章
72/204

突入

「きょうそさま?」


 智恵香は知らないフリで返した。


「ちょっと。こんなにベラベラしゃべっていいの?」


 女が(あせ)る。


「いいじゃないか。よくわかってないみたいだし。それに、こいつはどうせ……」


 犯人達の会話から


 ふーん、最終的には殺す気なんだ


と智恵香は改めて思った。



 教祖(きょうそ)様というくらいだから、宗教を作った人かその教えの指導者みたいな人なんだろう


 人質になっている状況でありながら、智恵香は冷静に考えていた。


 こんな風に油断してくれるのも、私が子供の間だけだし、今のうちにできることをいろいろしとかなくちゃ


 お金の請求はカモフラージュで、おそらくこの組織は、総理の孫娘の友人を狙っているが、結論は国のトップを脅して何か要求をしたいことがあると思えた。

 それとも元々恨みがあってそれを返したいなどもあるかもしれない。

 とにかく宗教団体のような組織の仕業(しわざ)であることは間違いなさそうだった。


 もう少しヒントが欲しいな


 きょうそさまって男の人?神様みたいなおじいちゃん?ふーん、おじいちゃんじゃなくてお兄さんくらいの人なんだぁ。格好いお兄さん?会いたいなぁ。どうしたら会えるの?


 智恵香は退屈をしている見張り役から、無邪気さを(よそお)いながら、いろいろと聞き出した。


 さて、そろそろ準備できたかな

 時間だし動き出さなくちや


「トイレいきたい!」


 智恵香が言った。


「我慢してたの!もう漏れる!」


 智恵香は地団駄(じだんだ)を踏んだ。


「あーわかった。わかった。こっちついてきな」


 女は智恵香をトイレに案内した。


 GPSの位置が動かなくなってから2時間後。

 智恵香から何も動きがなければ、突入するという約束になっていた。


 その間、犯人側が、智恵香の扮する家族の家に金銭や何かしらの要求をしてくるだろうし、警察が突入計画を立てるのに何とかそこまで時間を引き延ばす予定だった。


 トイレのドアの前には女が張り付いた。

 銃を持っているので油断は出来ない。

 トイレは換気の小窓はついていたが、面格子(めんごうし)も付いていて智恵香が逃げられるような隙間はない。

 一旦、トイレに()もろうとしても、鍵はこわされていて、しばらく隠れてもいられない。


 智恵香は水音を流し、少しだけ窓を開けてそっと外を見る。

 智恵香は声を上げずに笑った。

 そこには鳩が大量にいて、一生懸命、地面の餌を食べていた。

 所員からの体制が整ったとの合図だ。


 また、鳩代とエサ代が(かさ)んだと、経理に文句を言われるんだろうな


 警察の特殊部隊と探偵事務所の所員達の突入準備は整っている。


 智恵香は下着に縫いつけたポケットからGPS機器を取り出すと、電源を落とした。


 これが智恵香からの突入可の合図だった。

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