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〜 黄昏 〜  作者: 晴倉 里都
第一章
7/204

延長

「どういうことよ!」


 そう言われて優斗は思った。 


 何故いつも、相手の女性本人より、周りの女性陣から責め立てられるのだろう


「浮気って、アンタ!塚本さん、こんなに泣いてるじゃない!どうするつもりよ」


 そう言えば、最近、智恵香が目薬を大量に買っていたのはこういうことか


と優斗は納得した。


 きっと目を拭っているタオルの中に、目薬を隠しているのだろう


「もう……。いぃから……」


 智恵香は、悲劇のヒロインのごとく、涙をしゃくり上げながら、サークル仲間の女性たちに言った。


 女性陣は、その後も延々と優斗を責め立て、最後のおきまりは


「行こ、智恵香。こんなサイテーな奴より、あんたにはもっともっと素敵な彼氏が出来るから。こんなのと付き合ってたら、勿体(もったい)ないわ!ね、行こ」


 女性たちは泣き崩れる智恵香をなだめながら、退出して行った。


 優斗はため息をついた。


 なんだかな

 嘘とは言え、想像通りすぎていたたまれない


 しかし、この後はまたおきまりで、残った男性陣からは

「お前、やるならバレないようにしろよ」「同じサークルってのは、やっぱりちょっと厳しいよな」「良い子なんだけど、面白味はねぇもんな」「まぁ、その浮気の子と付き合えばいーじゃん」


 と、女性陣にいたぶられた同情なのか励ましなのか、白い目で見られることは無く、笑いに変えられていた。


 それにしても、智恵香やり過ぎだろーよ


 優斗は愚痴の一つも言いたい気分だった。



(ひど)い目に遭った」


 優斗が呟くと、智恵香は笑って


「本当に浮気して怒られて、へこんでいる人みたいだったけど。経験あるでしょ、名演技だったもの」


と、珍しく冗談を言ってクスクスと笑い続けた。


 優斗にすれば、どう見ても只々(ただただ)女性陣の圧に一方的に押されていただけで、演技も何もあったものでは無かったが、1つ目の山場が上手くいったので、智恵香の方も優斗に信頼を置いて、ちょっとした軽口も出てきたようだった。


 しかし、すぐに真剣な顔になり


「女性の先輩が大きな声で言ってくれたから、部室を出た後、部員の何人かは何があったか聞きに来ていたわ。直接私に話しかけては来なかったけど、平本先輩が女の先輩に冷たいタオルを渡して、もし良かったらこれで塚本さんの目元抑えてあげてという声は聞こえた。先輩が去った後、やっぱり平本先輩って優しいよねみたいな会話が皆の中で繰り広げられていたから、顔は見てないけど平本先輩が関わろうとしてきていたのは間違いないわ」


早速(さっそく)かもな」


「とりあえず、仕掛けてくるなら、近いうちに動き出すでしょ。ありがとうね」


「いや」


「所長に一旦、現状報告してくる。後は、私が上手くやるから。優くん今までありがとう。バイト代、(はず)んでもらえるようにお願いしとくね」


 優斗は、そう言えば自分の役目はここまでであったことを思い出した。


「何か手伝えることないかな」


 優斗の口から自然と言葉が出た。


「このまま結末も見ずにって言うのも気になるし。サークルで気まずい雰囲気を出さないといけないにしろ、何か情報があればこうやって伝えられるだろうし。味方もいないよりはいた方がいいだろ」


 優斗の提案に智恵香は少し悩んだ。

 実は一つ、すでに潜入前から気になっていたことがあり、実際にサークルに入ってからは少しずつ確信してきたことがあったのだ。

 これを所長に言えば、優斗の潜入を延長する可能性は高かった。

 ただ、経験の少ない優斗を、今後も巻き込んでよいものかどうか智恵香は迷っていたのだ。

 しかし、智恵香個人で決められる話ではない。


「優くん、ちょっと所長のところに一緒に来てくれる?話があるの」

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