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〜 黄昏 〜  作者: 晴倉 里都
第二章
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秘密

「お休みなさい、お父様、お母様」

「お休み、百合」


 智恵香は行方不明になって以降、佐々木家で『百合』として過ごしてきた。

 家からの一人の外出は禁止されているため外に出られず、自分の携帯電話も隠されていたことから、まずは探偵事務所の誰かと接触し、自分がここにいることをわからせなければならない。

 そうなると『優斗と約束していたカフェレストランに行くしか無い』と思った。


「お父様、さっきテレビで見たカフェレストランが、水曜日のランチメニューがとても美味しそうだったの。私も行ってみたい。ねぇ、お父様お願い」


 智恵香は佐々木弘一郎を丸め込み、あのレストランに行く予定を立てて、優斗が約束していた日時に来てくれるよう祈った。

 そして優斗が来て、多少騒ぎにはなったが、あの後、他の所員が自分を尾行して、自分がこの佐々木家にいるということはもう突き止めているはずだと確信していた。


 白川が配達員に成りすまし、この佐々木家に来て智恵香に連絡手段となる携帯電話を渡すことも、打ち合わせはしていないが、おそらく何かしらの方法で接触してくることは予想していた。


 弘一郎が外出した今日は特に、チャイムが鳴った時には、自室の2階から必ず1階に降りてくるように心がけていたのだ。


 手に入れた携帯電話は、日中は電源を切って部屋に隠しておき、夜に自室に戻って一人になった時、優斗とメッセージを送り合った。


 智恵香は行方知れずの間のことを優斗に説明した。


 智恵香は帰宅途中に交通事故に遭い、怪我は無かったが、一瞬記憶喪失のような状態になり、通りかかった佐々木夫婦に助けられたこと。

 記憶はすぐに戻ったが、この夫婦が誰かに狙われているような様子があったため、しばらく記憶喪失のフリを続けることにして、佐々木家に居候させてもらい、夫婦の身の安全を守ろうと計画したこと。

 しかし、この夫婦は最初に智恵香が記憶喪失と知った時点で『百合の生まれ変わり』として、智恵香を自分たちの娘として思い込ませ、このまま一緒に暮らそうとして、智恵香を外部と接触させないようにしていること。

 夫婦のしていることは、めちゃくちゃではあるが、記憶喪失のフリをし始めたのは智恵香であり、娘を亡くし誰かに命を狙われている夫婦をどうしても放っておけず、娘の百合を今も装い続けていること。



『佐々木夫婦にすれば、優くんは私の本当の知り合いだとあの時、カフェでわかっているのよ。それもかなり親しい知り合いだと。だから、今後も会えば私が昔の記憶を思い出し、帰ってしまうかもしれないことを恐れているの。夫婦にすれば娘を奪い返しに来る憎き相手で、だからあんなに冷たい態度を優くんに取ったんだと思う。とりあえず優くんは直接接触して来ないでね』


 智恵香のメッセージを読んで優斗は、腹立たしくなり

『これからどうする気だよ』

と送った。

 智恵香は

『またね』

と返してきただけで、その後、どうするのか再度尋ねるも、既読にもならず電源を切ったようだった。


 あいつ……ホントに、何なんだよ


 優斗はやりきれない気持ちで携帯電話をベッドの上に放り投げた。

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