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〜 黄昏 〜  作者: 晴倉 里都
第一章
33/204

疑問

「えっ?」


 智恵香が聞き返した。


「今後ともよろしく」


と言って、優斗はニッコリと笑って見せた。


 戸惑う智恵香に「所長の許可はもらっているから」と優斗が続けた。


 これを言われると智恵香に拒否権は無かった。


「あっ、そう……なの。……お願いします」


 智恵香は複雑な気持ちでそう言った。



 優斗をこのような仕事に巻き込んで良いのだろうかという思いもあるし、また、優斗の優しさが、仕事に支障を(きた)すことがあるかもしれないとの懸念(けねん)もある。


 しかし、所長が決めたことならもう考えても仕方ない。


 それに、正直、優斗がいてくれるのは非常に助かる。  

 今後、男女ペアで動けるのは潜入が容易(たやす)くなることが多い。


 子供の時は一人でも怪しまれなかったが、やはり大人になれば、男女で行動する方が何かと都合が良いことは白川と組んでよくわかった。


 優斗とは意見の相違が多いが、それも自分の仕事を見直す上で、一つの大きな勉強材料ではある。


 また、白川が「俺、優斗くんに男として惚れたわ」というくらい、優斗は年上の他の所員達からも好感を得ていたため、仕事に慣れればそれなりに懸念材料も少なくなるだろう。

 

となると、問題は……


 小宮山(こみやま)くんをどうしよう


 ペアで動くとなると、どこかで優斗といる姿を見られる可能性がある。


 奏がどこまで(あお)ったのかわからないが、小宮山が優斗に嫉妬していることは確実で、奏にとっては関係停滞中の二人に、ちょっとした刺激を与えるくらいの気持ちだったのだろうが、小宮山は静かに、完璧に刺激されまくったようだった。



 小宮山は本当に良い人だった。優斗の良い人とは、また違い、こちらはどちらかと言うと聖人君子並みの人の良さかもしれない


 小宮山に何の不満もなく、なぜか好いてくれていることは有難いと思いながらも、仕事を優先する自分はこれからも彼を傷つけるかもしれない


 小宮山は智恵香が忙しいと言えば、待ってくれるし、連絡も控えてくれる。


 自分が身勝手なようで、智恵香は何度となく交際解消を小宮山に、におわせてみた。


 しかし、それでも「別れない」と言われると、自分のわがままを全て受け入れてくれている以上、それを押し切ってまで別れる理由がみつからない


 ただ一つ、仕事を邪魔される以外は


 仕事……


 智恵香は自分でもわからなかった。


 今までも仕事を優先してきたために別れた彼氏がほとんどで、今回、小宮山は自分の仕事のことを理解してくれている。

 それも仕事の内容は全く知らないにも関わらず、智恵香が仕事の予定が詰まっていることを説明すれば、何も言わない。


 自分には勿体(もったい)ないほどの人だ

 こんなにも理想的な彼氏はいないはずなのに


 おそらく小宮山は智恵香が何よりも仕事優先という考えをわかっていて、歴代の彼氏達が智恵香に言ってきた


「仕事と俺、どっちが大事なの?」


とは聞かないのだろう。


 この質問があれば、交際解消を智恵香から言い切ることも出来るが、まさか聞かれなければ聞かれないで、罪悪感で別れを考えるとは思っていなかった


 なぜ自分はここまで仕事に入れ込んでしまうのか


 智恵香自身、全く自分を理解出来ていなかった。

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