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〜 黄昏 〜  作者: 晴倉 里都
第一章
28/204

心咎

 智恵香は携帯電話の画面を見た。


 交際相手の小宮山 健吾(こみやま けんご)からの着信だった。


 優斗が電話の相手が誰か聞いてきたのは、知人なら遠慮なく出てという軽い気持ちか、今回の仕事の関係者と思ったのだろう。


 この場で電話に出るかどうか迷ったのを見透かされたように優斗に席を外された。


 小宮山から、このタイミングで電話があり、話があるとのこと。


 たぶんそうだろうな


と智恵香は予想した。



 小宮山は、隣の県に住んでいて、今まで智恵香と全く繋がりは無かったが、親友の(かなで)の彼氏と同じ大学だった。


 小宮山は奏の彼氏から智恵香のことを聞き、智恵香も奏から「会ってみるだけでも。お願い!彼の顔を立てて」と頼み込まれ、会わずに断るのも失礼かと思い、ダブルデートにとりあえず参加した。


 盛り上がる奏をよそに「期待しないでよ」と釘を刺していたが、どうやら小宮山に気に入られたようで、小宮山の柔らかい押しに、智恵香も良い人だからと付き合いはじめた。


 ただ、智恵香には時間が無かった。毎回、仕事で時間が取れず、彼と仕事のどちらを優先するかと言うと当然のように仕事だった。


 この今の状態で、別れ話が出ても智恵香は納得していた。


 少しだけ時間作ってと言って、小宮山はわざわざ智恵香の地元近くの公園まで出向いてきた。


「忙しそうだね」


と小宮山が言った。


 会う時間が取れないなら別れるという、別れ話の前置きをしてくれていると智恵香は考えていたが


「仕事終わったらバイトの人にちゃんと送ってもらってる?夜危ないし」


 この一言で


 奏……


と智恵香は(さと)った。


 まさか、優くんと歩いていた時のことを今更言いつけたとか

 もう余計なこと言って


 智恵香は心の中で奏に文句を言った。


 まぁ、でもどちらにしろ


 会う時間が無いのなら別れる

 他に親しい人がいるのなら別れる


という、理由が違うだけの別れ話がここから展開されることを智恵香は想像した。


「くだらないこと聞いてごめん。その家まで送ってくれる男の人のこと、塚本さんはどう思ってるの」


 奏!!??


 智恵香は今度は心の中で叫んだ。


 小宮山がこんなにストレートに聞いてくるのは


「堀井っていう男の人、智恵香と怪しいんじゃないかな」


くらいのニュアンスの言葉を、奏が言ったに違いない。


 智恵香は答えられなかった。


 優斗は仕事仲間だが、それ以上に関わりはあるし、恋人役もした。


 浮気などしていないが、表向き恋人としての接し方はしている。


 嘘ではないが、微妙に嘘をつかないといけないという立場に追い込まれた智恵香は、答えを()らし


「小宮山くん。私のことが嫌なら、もう……」


 智恵香はここまで言い掛けて、言葉を止めた。


 小宮山が智恵香を横から引き寄せ、力強く抱き締めたからだ。


「僕は、別れる気は無いから」


 真面目で誠実なこの人が、こんな風にいきなり手をだしてくるなんて。何て言って(あお)ったのよ、奏のバカ!


 智恵香は小宮山に若干の罪悪感を感じ、聞こえないようにため息をついた。

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