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〜 黄昏 〜  作者: 晴倉 里都
第一章
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復縁

 最近、智恵香は平本と隠れてデートを積み重ねていた。


 平本は慎重で、夜遅くまで智恵香を引っ張ることもなく、また金を引き出そうとするような様子も見せることなく、絵に描いたような健全交際を続けていた。


 代議士の娘の件は一年ほど経つが、娘が大学を辞めてまで自分から逃げ出すとまで考えていなかったからか、次のターゲットである智恵香の扱いに平本はかなり用心している様子であった。


 ただ、今のところ平本に智恵香たちの策略がわかっているようには見受けられず、智恵香を本当にお金持ちの生粋(きっすい)のお嬢様だとは思っているようだった。


 白川は智恵香が平本の対応に苦労しているのが面白いらしく、普段、智恵香を『お嬢さん』と呼んでいるくせに


「お嬢様。真面目な平本くんとはどこまで進んだんですか?あまりに完璧な世間知らずのお嬢様過ぎると、お金を引き出されるどころか、手も繋いでもらえないんじゃないですか?」


と笑い


「ちょっとはこう、なんていいますかね。付け入れられるような(すき)を見せてですね。そう、隙ですよ、隙!お嬢様、あなたは普段の()の時でも演技してても完璧過ぎるんですよ。なんかこうちょっとは(あや)ういところを見せないと。そうすれば、こう男も、よし、これならいける!この()落とせそうだぞ!ーとか思うから動けるんですよね〜」


と、恋愛談義を熱く語り


「優斗くんもそう思うでしょ」


と話を優斗に振った。


 俺を巻き込まないで下さい


 優斗は黙って苦笑いで返し、智恵香は


「別に白川さんの好みは聞いてないんですけど」


と、軽くあしらっていた。


 そうして軽く白川をかわしながらも智恵香は考えていた。


 焦りは禁物だが、長引けばこちらの潜入などがバレる可能性も高くなる

 また、依頼主と契約している以上、可能な限り早く決着をつけて、費用をなるべく抑えないと信用問題にも関わる

 何かきっかけがいる

 ただ、私から動くと不自然な感じだし

 やっぱり……悪いけど、それしかないか


 智恵香は思いついたことを実行に移すべきかどうかしばらく考えてみた。



「なんとかしろ」

 そう考えていた矢先、事案の動きが無いことから、所長の指示があり、智恵香は仕方なく、優斗に頼み事をすることにした。


 また優斗を最低男に突き落とす案で、説明を聞いた優斗は少し黙っていた。


「ごめんなさい。嫌でしょうけど」


「いや、今更、サークル仲間にどう思われようと関係無いからいいけど……」


「そっちに犯人達の攻撃はいかないと思うから。ターゲット以外に手を出すと、明るみになる可能性が高いし」


 まただ


と、優斗は思った。


 所長と智恵香は、同じことを言う


 俺は、危険じゃない

 じゃあ、誰かさんは危険だということなんだよな


 どうもこの父娘(おやこ)は、智恵香が危険なのは当たり前という前提で、物事をすすめていく節がある


 優斗はここで考えた。


 ただ、この案を断ったところで、このまま停滞状態を続けるわけにもいかず、いつかは犯人達と対峙(たいじ)する時がくる

 過程の中であまり相手側を煽りたく無かっただけで、目指すところは直接対決になるのだろう


「わかった」


 優斗はこの案を受け入れた。


 しばらくして


 どうも優斗が智恵香とよりを戻したいと言っているらしい


との噂が、サークルの中で(ささや)かれ始めた。

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