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〜 黄昏 〜  作者: 晴倉 里都
第五章
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同志

「本当に水くさいですねぇ」


 酒巻 大介(さかまき だいすけ)はそう言った。


「その柳川建設のバックに何が付いていようが、早く言ってもらえれば良かったのに。こっちは……」


 酒巻は笑うと


「なんせ国家権力ですからね」


 冗談めいていても、その言葉は心強かった。



 酒巻と智恵香は、智恵香が9歳の時、当時官房長官の秘書をしていた酒巻と出会い、仕事の依頼を受けてから、かれこれもう10年ほどの付き合いだった。

 立場上、会うことはほとんど無いものの、智恵香は酒巻から直接間接を問わず何度か依頼を受け、(こと)の解決に(みちび)いた。


 今は政権交代して官房長官の秘書では無く、一議員の秘書ではあるものの、当時、長期政権を果たした元総理や元官房長官は未だに現政権に、口を出せるどころか、陰で操れるほどのの実力者たちであった。


 智恵香の中に個人的なことで政治家達を巻き込むつもりは毛頭無(もうとうな)かったが、事情を知らない親友の奏や彼氏の小宮山などを守るためには、「酒巻さんに頼んでみよう」という案が出た時には否定出来なかった。


 酒巻にすれば、智恵香のためにいつでも動く覚悟で、逆にすぐに頼ってもらえなかったことに、後でグチグチと不満を(つら)ねたくらいだった。



 優斗は電話口で「戸倉さんどうだった?」と智恵香に聞いた。

 智恵香は乾いた笑いで「絶交するって」と言った。


 智恵香が本当は落ち込んでいることがわかった。

 親友の奏に事実は言えない。

 理由も告げられず、親友にいきなり遠くに引っ越すと伝えられたら、それは誰でも怒るだろう。


「落ち着いたら、話せる範囲で説明に行こう。あの人、年季の入った智恵香バカだから大丈夫だろ」


と、優斗が元気付けた。


 そして


「彼氏はなんか言ってた?」


 本来なら立ち入って聞くことではないが、今、智恵香たちが守るべき対象として、奏と小宮山も入っていることから、二人を密かに護衛してもらうためにも状況把握が必要だった。


 奏のように本心かどうかは別として「絶交する」と言ってそのように振る舞ってもらうのが、今は一番安全だった。


「……待ってる……って」


と、智恵香が言いにくそうに話した。


「めちゃくちゃ()れられてるんだな」


 優斗が言った。


「冗談はやめて」


 いや、冗談じゃないだろ


と優斗は思った。



 今回、智恵香が対抗策に(おおやけ)に動くことが出来ず、柳川龍之介から言われた2週間以内には家を出なければならないため、その手続きや作業に追われた。


 どうせなら、柳川達が追って来られないところに住居を設定すれば、まだ自由に動くことも出来るかもしれない。

 智恵香は転居先を北海道に決めた。


 柳川龍之介の目的は何なのか。塚本探偵事務所の人間は大っぴらに動けない。

 酒巻は別の探偵事務所を使い、調査を開始した。

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