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〜 黄昏 〜  作者: 晴倉 里都
第五章
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吐露

「そんなにさぁ、お前が信頼出来ないようなことしてきたかな、俺」


 優斗は寂しさの中に、少し冗談混じりに独り言のように言った。


 そうじゃない


 智恵香は苦しかった。


 確かに他人を信頼すれば裏切られる

 そう思って生きてきた

 でも、あの男に写真を順番に突きつけられた時、自分に守りたいことや守りたい人達がいることに気づいた

 危害を加えるとは直接言われていないが、言うことを聞かなければ、彼らがどうなってもいいのかという柳川の脅しだった

 この人達を自分のことで、危険に巻き込んではいけない


 人は守るものが出来ると強くなると言うが、同時に弱味(よわみ)にもなる。

 皆を信頼し始めているからこそ、今回の件は誰にも言えなかった。



「ツラいなぁ。隠されてるのはツラいわ」


 優斗はわざと明るく話を始めた。


「まぁ、何があったか打ち明けられても、結局一緒にツラい思いをして終わるだけなのかもしれないけど。でもなぁ」


 優斗はずっと独り言のように話をしていた。


「どっちがマシかなぁ。やっぱり言ってもらってツラい方が良いかな」


 優斗は一旦、口を閉じた。

 智恵香は(うつむ)いたまま反応は無かった。



 優斗は覚悟を決めると、智恵香に近寄り、その腕に手を伸ばした。


 そして、以前、智恵香を引き止めるために掴んだ腕の同じ部分を優しく持つと


「あぁ、でも、俺なんかに何もわかるわけないよな」


 優斗が使ったのは最上級の殺し文句だった。


「俺がわかってないことがあるんだろ。俺は何もわかってない(やつ)だからな」


 優斗はもう智恵香に過去のやりとりを思い出させ、罪悪感と後悔に訴えるしか方法が無かった。


 智恵香は、以前、優斗が自分を心配して問題を解決しようとしてくれたにも関わらず、「優くんなんか何もわかってないくせに」と八つ当たりした言葉をずっと後悔していて、優斗もそれは理解していた。



「俺は本当に何もわかってやれなくてごめん」


 優斗は今度は謝罪すると


「だから、教えてくれよ」


 そして、あの時と同じ言葉を伝えた。


「智恵香、どうしてほしい?何か……俺に出来ることを探したいからさ」


 智恵香は(こら)えきれず、(うつむ)いたまま、優斗の腕に両手で(すが)った。


 それでも智恵香は無言で、何か言葉を呑み込んでいるようだった。


「智恵香、俺に言いたいことあるだろ」


 智恵香は首を振った。


「大丈夫だから。ほら、言って」


 最後に優斗が(うなが)した。


「……助けて」


 智恵香から出たのは、たったひと(こと)だった。


 優斗はそれを聞いて、すぐに智恵香を抱き締め、優しく落ち着かせるように、背中をポンポンと叩いた。


「よし、わかった。どうしたらいいか一緒に考えような」

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