表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
〜 黄昏 〜  作者: 晴倉 里都
第一章
10/204

雑魚

 サークルの女性の上位カーストは5人。


 槇島 瑠華(まきしま るか)渡邊 柚葉(わたなべ ゆずは)椿本 亜梨紗(つばきもと ありさ)の3回生三人。


 的場 桃湖(まとば ももこ)桐谷 鈴音(きりたに すずね)の2回生二人。


 その中のトップは、槇島瑠華だ。


 優斗と智恵香の破局話は、サークルでひととおり噂になったものの、引っ付いたり別れたりが日常の大学生にとって、入りたての新入部員同士の揉め事など、後を引くようなほどのことではなく、すぐに鎮静化した。


 ただ、憔悴(しょうすい)している智恵香に対しては、上位カーストの5人がそれとなく声をかけてくることがあった。


 この5人が優しいお姉さんを周囲にアピールしようとして行っているだけなのか、それとも5人の中に『支援する女』がいて、慎重に次のターゲットを智恵香に定めようとしているのか。


 どちらにしろ、心から自分を心配しているとは智恵香には感じ取れなかったものの、失恋した後輩を優しく思いやるお姉さん達、それを(した)無垢(むく)な新入生という構図を演じ続けた。


 男性役員のみならず、女性の中にも共犯者がいるかもしれない状況から、結局、優斗は潜入を延長して情報を取り、動きがあればその時々で智恵香を助けることとなった。


 しかし、優斗はすでに浮気男として女性の間では受けが悪く、女性陣から情報を得るのは難しいと思われたことから、優斗には悪いが智恵香はこれを逆手に取り、(えさ)()くことにした。



 桐谷鈴音が智恵香に声をかけてきた時、ちょうど優斗が近くを通るタイミングがあり


「彼を見る度につらい。彼のことを早く忘れたい。どうしたらいいのかな」


と呟いてみたのだ。


「智恵香ちゃん、可愛いんだから、他に素敵な彼氏を作ればいいんじゃない?元彼を見返してやれるくらいの」


 桐谷が一気にこう言った。


「忘れられるかな。彼を忘れられるくらいの人……でも、そんな人なら、私のことなんて好きになってもらえないでしょうし」


「そんなことないない。智恵香ちゃん、とっても気の利く良い子だって噂よ。最近は肉食系とか言う子が多いけど。智恵香ちゃんみたいに清楚でおとなしい子が良いって言ってる人、本当にいるんだから」


「先輩、(なぐさ)めてもらって、すみません」


「いや、本当に智恵香ちゃんとなら付き合いたいって言ってる人いるよ」


 智恵香は、桐谷に御礼と謝罪を繰り返した。


 どこまでも、自分を元気づけるために、智恵香を気に入っている人がいるという嘘を付かせ、先輩に気を遣わせてすみませんという態度を智恵香は(つらぬ)いた。


「いや、本当に本当なんだから」


と言うと、桐谷は声をひそめた。


「あのね、智恵香ちゃん、ちょっと内緒なんだけど。智恵香ちゃんと付き合いたいって人が、実はサークルの中にいるんだけどさ。ほら、変に騒ぎになるのもどうかなと思って。だから、一度、皆には内緒で、こっそりその人とデートでもしてみない?」


 智恵香は確信した。


『かかった』

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ