交易都市グラナダ4
「にぃにのバカ。こげくさい。」
真夜中の宿に3人が戻ってきた。
「私も髪の毛チリチリだわ。」
グレンは巾着袋を大きく広げてネオを取り出してセツナに抱き渡す。
「嫌っ。あれ、俺が悪いの?」
セツナは2人からの苦情に抗議する。
「うん。」
2人の声が揃って返ってくる。
「むにゃむにゃ、ミルクおかわり。」
ネオは寝言も漏らしながら小さく蹲る。
「なんか、ごめんなさい。」
セツナは素直に謝る。
「にぃに、せっかち。」
トワは少し焦げたローブを脱いで畳む。
「ほんまやで、良くみてから処理しなよ。とりあえず、明日昼に下で集合しよ。」
グレンは長い髪の毛を優しくとかす。
砂時計の時刻を確認してから集合時刻を決定した。
砂の色は黄色で半分くらいまで減っていた。
真夜中の0時30分、間違えなく夜更かしをしている。
「うーん。どうしたら正解になりました?竜火で消すのダルかったし、固定化は簡単に解けるから簡単に解除して投げ飛ばしただけなのに。本当にとばっちりですよ。トワ、最後の式、あれ最後に思い付きで足したでしょ。めっちゃ小さく組み込まれてた。」
セツナはネオを背中に背負いヨシヨシあやしながら階段を上がる。
「しらない。おぼえてないし。とっさだもん。」
何故か自慢気に話すトワ。
「そうだよな。トワも直感タイプよな。必要と思ったんだから仕方ないか。確認して処理しなかった俺が悪かった。じゃあ、おやすみ。」
諦めたように二階の階段で別れを告げる。
「地味に重たいんよ、ネオ。」
首を鳴らして背中からそのまま布団へ落とす。
「まぁ、今日の敵さん、かなり逃しちゃったな。もっと強くならないと。」
トボトボと風呂場へ歩く。
「でも。。結果的に大丈夫か。666との約束で敵側の魔族何体か欲しいって言ってたし。」
暖かいお湯がセツナの疲れた心を癒す。
「水の音ってほんと良いよな。」
水を浴びていると隠していた右手の火傷が消えていく。
クレーター、実は火球だけで作られていなかった。
衝突する直前にセツナが咄嗟に水球をトワの火球にぶつけた。
高温に触れた水は水蒸気爆発となり地面をえぐる結果となった。
グレン姉さまが空かさず結界を張ってくれたので周囲への被害は最低限で抑え込めれた。
ただ、セツナは衝撃の直下におり、高熱に蒸発した熱波を抑え込むため右手を負傷してしまったのだ。
「まったく、兄貴より強い妹ってどうなん?ケンカしても勝てた事も無いし。」
セツナは右手をグーパーと動かして感触を確かめる。
こうして全員深い眠りついた。
~グラナダに到着して3日目の朝~
「起きなはれ。セツナ、朝やで。ご飯食べようや。」
ネオは、爆睡しているセツナを揺さぶり起こす。
「んっ。、先行って。」
セツナはゴニョゴニョと布団にもぐる。
「そう?じゃ、行くでな!」
そう言って、下に降りたネオは驚く。
師匠すらいないのだ。
「珍しい。。あっ、女将さん、ミルクね!」
しれっと最高級ミルクを注文する。
グラナダ新聞を開いて朝食を待つ。
「どれどれ、赤月の遺跡が消滅か?ふむふむ、次、隕石襲来!!見つけた方に金貨1枚。へー。観光してる時に隕石なんてきてたか?夜景見て、、皆で宿帰ったしな。今日の天気は恐らく雪。今日は、皆で旅館に籠るか。」
ペラペラとページを捲って昨日の出来事をさらえる。
「おはよ。。ネオ」
トワが1階に降りてきた。
「あれ?師匠は?」
ネオは一緒に降りてこなかった師匠の事を尋ねる。
「ねてる。あれ?にぃには?」
凄く眠そうなトワ。ネオと逆の質問する。
「寝てる。」
ネオはそのまま伝える。
「あっそ。ママ、わたし、ミルク。グーzzZ」
トワは、机で二度寝をする。
「みんな、おはよ。」
「おはやで。」
セツナとグレンが揃っておりてくる。
伝言板にはでかでかと感謝の言葉と小文字で文章が刻まれていた。
『お土産ありがと♡次は、コーネル王都だよ。結論から言うとグラナダで儀式を行い二人は王都に向かったみたい。残念ながら一歩遅かったね。あと場所は不明だけど、何処かの人間が魔王クラスを完璧な受肉で降臨させている。最大限警戒せよ。夜が来たれり。夜が来たれり。夜は我らの拠り所。追伸、お金は感謝の証として私が払うよ♡666』
「ふーっ。皆、次の目標わかったよ。奥さん、ミルク2つ!」
セツナは深い溜息をこぼす。
大きい声で一番高いミルクを躊躇わず注文する。
「わっちは別にミルクいらんで。」
グレンは驚く。
「飲まないとダメです。グレンねーさん。あいつの奢りだとさ。そんで伝言、次は王都だとよ。」
レツからのメッセージに闘志をセツナは燃やす。
「燃えてるねー若人が!」
昨日の夜では死んだ目をしていたのでギラギラしたセツナの目を見てグレンは嬉しくなっていた。
「そんで、弱った魔神よりもまずい状況です。魔王クラスが完璧な状態で地上に降り立ったみたい。このミルクうまっ。」
セツナは最高級ミルクに舌鼓をうつ。
「マジ?親父に使いだすわ。ピーッ、KURO、これ親父に」
グレンは犬笛を吹くと、机の影から盲目の犬が現れた。
机にあったメモにちゃら書きをして犬の首に下げてるポシェットに放り込む。
ワンっと軽く吠えた犬はまた机の下の影へ消えていく。
「凄いやろ。鬼神族の番犬、黒犬。目は見えないやけど影移動が出来る警護のプロよ。」
鬼神族に使える忠犬で知能もかなり高い。
愛情たっぷりにKUROについてグレンは語る。
弟子は猫でも実は犬派?と言わんばかりに褒め倒す。
「王都にはどうやって行くんや?」
ネオは追加のミルクを頼みながら聞く。
「はっ。ミルクだぁ。」
犬笛に反応してトワが起きる。
「マジで同じ兄妹に思えない。おはよ!飛竜でいくよ。金はここで稼ぐ。」
セツナはもう絶対走っていく訳には行かないと覚悟を決めていた。
そこからの決意を固めたセツナの動きは早かった。
あっという間にグラナダの公園で三公演行い、飛竜の運賃4人分稼いでみせた。
〜グラナダ飛行場〜
飛行船がずらりと4隻に飛竜が10匹と大規模な飛行場に4人はたっていた。
案内人が注意事項を説明して運転する竜使いを紹介している時間に、クンクンと凶暴で竜使いにしか懐かない飛竜が全匹セツナとトワの近くに集まり、甘えてる風景に周りがざわついていた。
「にぃに。この子達、めっちゃかわいいね!」
トワは甘えてくる飛竜の下顎を優しく触る。
「凄く大切にされてますね。」
案内人の注意を聞かずにセツナは飛竜に跨る。
すると暴れる素振りなど一切なく、大人しくじっとしているのだ。
「ありえない。俺らすら手をやく。やんちゃ盛りばかりなのに。」
竜使いは自分の仕事に自信を無くしかけた。
「僕達、竜人なんで!ほら、」
セツナはトワの尻尾を指差す。
「なるほど。。」
「竜人なんてほんとにいるんだ。」
「ほぇー。こんなに懐くのか。」
トワの尻尾に皆んなが気が付き納得した。
「僕ら乗れるんで、運転手要らないです。二匹で足りるんでお借りしますね!行きますよ!皆んな。王都へ」
クイクイッと指でネオを後部にあるシートに誘う。
「じゃあ、ねぇねも!しっかりつかまってね。」
にっこりトワはふんわりと飛竜に跨りグレンをエスコートする。
大きな翼を広げて二匹の飛竜は大空へと羽ばたく。
地面にぽっかりと空いたクレーターは雪で埋もれて子供達と大人の遊び場になっていた。
「でっかいなー。隕石、わても探したかったなぁ。」
大勢の人がスコップを担いでのお祭り騒ぎに参加したそうなネオの言葉に3人は思わず苦笑いを浮かべる。
可哀想にネオには結局ネタバレせず、丸っ切り風景が変わった隕石の降る都市グラナダに別れを告げる。
冬限定でやってくるプレゼント伯父さんに代わって素敵なモノを届けた4人はソリより素敵な飛竜に乗って王都へと飛翔する。