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交易都市グラナダ3

バサっ、バサっと影の集団が羽織るマントが風をきって鋭い音を立てる。

いきなり暗闇からナイフが現れては消えてを繰り返して3人を襲う。

ネオはグレンの鬼柄の巾着袋に収納されて、今この場には3人しかいなかった。

カキン、甲高い金属音が鳴る。

セツナは手のひらサイズの小ちゃいガルマンティウム製の棒を強く握りしめると1.5m程のサイズに変わる。

使い慣れた武器で華麗にぶん回す。

*ガルマンティウム鉱石、超硬鉱石アダマンタイトに超柔鉱石ガルを錬成して生み出された特殊鉱石。特性は柔らかで、しなる折れにくい金属。

トワは短剣を四つフードから取り出してまるでお手玉の様に器用に操り敵をあやす。

グレンはシンプルなクリスの木で作られた棍棒で早速一体を仕留めた。

*クリスの木、世界で2番目に固い木材。気との親和性が高い。

何が恐ろしいのかというとサイズが縦横無尽に変形して守備の瞬間は短く、殺す瞬間は太く長くを一瞬で切り返して確実に敵を屠っていく。

まだ共に戦う回数が二回目の筈なのに、無駄の無い3人の連携と六体の影が激しくぶつかる。

敵の能力なのだろうか、さっきまで気配が無かった空間から殺気が襲ってくる。

それを、素早く察知して3人は反応する。

口火をきった初手の敵は油断してたお陰なのか楽に殺せたのだが、それを見たあとの6人が手強かった。

かなりの凄腕のため一瞬でこちらの攻撃にも対応してきたのだ。

「失敗したな。」

グレンは、誘い出したつもりでいたのだが、思った以上に戦い難かった。

これが昼間だったら瞬殺出来たに違いない。

今回の敵は暗殺寄りの夜型だったのだ。

「もぅー。イライラする。」

トワはイライラのボルテージがMAXに達していた。

ちょこまかとすばしっこいのである。

短剣はあくまでサポート武器で本命は拳の一発なのだが、その拳が尽く避けられるのだ。

細かく短剣を宙に廻して敵の奇襲には耐えれるのだが攻撃がヒットしない。

「これ、最初幻影かと思ったら全員実態ですね。まだ本体1人だったら楽だったのに。」

セツナは必死で目を凝らして避ける。

敵のローブはどうやら闇に溶けるローブを装備しており、裸眼で捉えるのは不可能に近かった。

裸眼で避けている人が2人もいるようだが、その2人が異常なだけで普通は知覚すら出来ない。

ローブに刻まれた魔法を解読して暗闇でも位置をハッキリと捉えてはいる、それよりも一番の厄介はテレポートするのだ。

しかも6人全員バラバラのタイミング。

何とか飛ぶタイミングで発動する魔法陣を目の端で捉えて先回りするのだが、フェイントも混ざっている為、空振りが増える。

かなり厳しい状況に追い込まれていた。

「にぃに、2秒ちょうだい。」

トワは前線から一歩下り、溜めを作った。

「えっ?今すぐ?」

セツナは咄嗟に守備範囲を増やす。

「何か思いついたの?」

グレンも一歩下りトワちゃんを守る。

手数が多い敵に2秒はかなりリスキーだったが、他に手がないのでトワに託した。

「ありがとう!!行きます!!」

拳にありったけの火の気を溜めて一気に上空へ解き放つ。

「わぁお。いけるわ。」

グレンの鬼の目でもチカチカする程の真っ赤な太陽が夜空に現れた。

早速一体の影を鬼の目で知覚して棍棒を振り下ろす。

「やっぱり、トワ、天才。」

トワのやりたかった事を一瞬でセツナは理解する。あとはひたすら、グレンの視覚に敵が入るように外側に回り込み誘導する。

さっきまで苦戦していたのが嘘みたいに敵を一瞬で殲滅した。

薄紫の光の柱が6つ立ち上がり消えていく。

「くそっ。本体まで消しきれんかったか。」

グレンは少し悔しそうだった。

「一体でも殺せたので、上出来では?」

セツナは両手を両膝につけて前屈みになる。

「あぁー。ねぇね。ずるい。一発当てたかった!」

少し残念そうにトワは光の柱を見送る。

「今夜MVP間違えなくトワちゃんよ!ありがとう。」

グレンはトワの頭をいっぱい撫でる。

「えへへ。やっぱり天才かな?私。」

自慢げに鼻を軽くすするトワ。

「それで、トワよ、これさ。いつまで明るいの?」

セツナが真っ赤な火の玉を指差す。

「えっ?朝までだよ?にぃにでも簡単に消せない竜火だもん。」

当たり前かのような事実をトワは伝える。

「やっぱりトワ、天才は取り消す。」

セツナは法術で火の玉をゆっくりと念力で初速をつけた後に加速度的に空の彼方へと飛ばす。

「あっ。それは。にぃに、まずいかも。」

トワがボソッと呟く。

遠くに飛ばした火の玉が猛スピードで元の位置に戻ってきた。

「はっ?」

セツナはじっくりと火の玉の術式をみると。

『燃焼、業火、固定、球体、帰巣本能』

「んっ?トワ?」

最後に小さく普段見掛けない構成式が組み込まれていた。

「だって、火の玉。。こていしたかったの。」

人差し指で可愛くツンツン胸の前で突き合わせる。

「終わったわ。」

セツナは諦めた。

この瞬間、グラナダに新しい観光地が誕生した。

隕石の降る街グラナダ、綺麗なクレーターが出来上がった奇跡の日である。

何が奇跡かって?それは大きなクレーターが出来た衝撃を誰も知らないからである。

皆んな口を揃えてこう言った。

朝が来たら遺跡が消えていたと。








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