それぞれの戦い5
〜聖域〜
「全く、破滅的な進行具合だな。」
クランは深いため息を出す。
家の外に出れば龍神の里は廃墟と化していたのだ。
それもその筈、ゲートは里の中心にあり我が家も中心にあるのだから、周囲が廃墟となっていても当たり前と言えば当たり前という訳である。
「全く、魔界の子ってこうも破滅的な思考がなんで、多いのかしら?」
エリスはスカイブルーの髪を後ろに束ねながら戦闘体制に入る。
神術。
『溢れ出る水。命の源水。超回復。広範囲。』
発動、命の海。
エリスの足元からポーションが湯水の如く溢れて里全体に広がる。
この水に触れた者から傷が次元の裂け目も閉じていくのだった。
「流石だな。」
クランは関心する。
得意分野が全く異なるっていうのもあるのたが、それを抜きにしても圧倒的な物量に関心するのだった。
神術。
『風は震え。闇は轟く。光は交わり。大地は溶け。海は吠える。』
発動、神の審判。
次元が閉じた静寂の瞬間に魔獣全てを消し去る。
何が起こったのか認知する暇もなく圧殺される。
「くっそ。これでも破壊出来ないのか。」
クランは悔しがる。
かなり全力を振り絞ったつもりだったのだが、天秤はびくともしていなかったのだ。
せっかく閉じた次元がまた開き出す。
「この魔術、本当に気持ち悪いわね。」
エリスは理の目で天秤を見つめる。
息子の真理の目には勝てないが、術の解析には引けをとらない力がある。
「やっぱり、見た目からして気持ちが良いものじゃないよな。」
クランは新しく裂けた次元を修復しながら天秤に近付く。
「ほんとね。これ、アルーマが一番被害者かもよ?聖域と魔界をくっつける時に生じる衝撃を全てアルーマにぶつけてるわ。」
エリスは解析を終えると苦い顔に変わる。
次元の裂け目から魔気しか漏れ出ない理由が分かったのだ。
「それって何がマズイの?」
ルカルドがエリス様のサポート役で脇を固めつつ全力で裂け目を塞ぐ。
ふと、視線を前に向けると簡単に次元を塞ぐ族長でもあり統治者の後ろ姿が頼もしかった。
「多分、アルーマはこの裂け目が2種類って話。」
エリスは回復役に徹する。
これ以上犠牲者を出さない事に死力を尽くす。
神術。
『癒し、息吹、突風。』
発動、ヒーリングブレス。
「ごめん、ちょっと痛いかも?許して。」
広範囲に行き渡らせるために深呼吸して一気に息を吹き出す。
回復効果が付与された突風が吹き荒れる。
敵味方関係無く、宙に舞う。
「エリス!そよ風にしなよ。ビックリするわ。」
空高く浮かんだクランは、ついでに神術を使う。
神術。
『氷は水に、水は水蒸気に、固まれ群れをなせ、摩擦よ、雷となれ。』
発動、神雷。




