それぞれの戦い1
~魔界~
「ふーっ。結構簡単に来れるんやな。しかも何でお前がいるんだ?トワ。」
セツナはまずトワが目の前にいる事に驚く。
「何か?問題ある?それより、にぃに、人選に問題を感じるよ。何で?ライデル兄さんが?」
悪びれる様子が無いトワは少し付いてきた事を後悔する。
「いや。ついてくるお前が悪いだろ。お前に文句言われる筋はない。」
ライデルが少し眉間に皺がよる。
「母さん、ほんとトワに甘いよな。本当に一緒にするか?」
セツナは、今頃笑ってそうな母親の顔を思い浮かべる。
「にぃに、結構無理するから私にいてほしかったんでしょ。」
母親がトワのわがままを聞いてくれてうれしそうに話す。
「まあ、それより早速動こうよ。でもここ何処?」
ライデルが周囲を確認する。
「ここは闘技場よ。いるんだろ?666?」
セツナ達は再び魔界の闘技場に帰ってきたのだ。
戦った傷跡が生々しく残っていた。
「はは。何でわかったんですか?ばれてないと思ったんですが。」
666は闘技場の観客席にポツンと座っていた。
大きくそしてゆっくり拍手をして3人を歓迎する。
「お前のマーキングした刻印が疼くんだよ。」
セツナは右腕を触る。
禍々しい刻印がはっきりとうかんでいる。
「それだけじゃ、ないんじゃないですか?」
一歩一歩丁寧に階段を降りて、客席から闘技場へと飛び降りる666。
飛び降りた後に指をならす。
小さな蝋燭が一つ闘技場の真ん中に現れる。
「舐めてんの?」
セツナはそれが何なのかすぐに悟る。
足元に現れた蝋燭、それは今回の事件の楔そのものだったのだ。
「まさか!」
666はもう一度指を鳴らす、数えきれない数の蝋燭がこの会場一面に灯る。
「あー。そういう事ね。これもしかして?全部?」
ライデルも何かを悟った。
「この蝋燭、全て消し去ればいいの?」
トワは壊す気まんまんでまず足元にある蝋燭を踏んず蹴る。
一緒で意識が飛ぶトワ。
「これは壊せないわ。」
セツナは脱帽する。
そんな簡単な話ではないのだ。
「えっ?何?」
直ぐに意識を取り戻すトワ。
「天秤の効果だよ。こんな小さな蝋燭のくせに、えぐい程込めてるな魔力を。」
ライデルは拾ってマジマジと眺める。
魔気そのものに触れるため手のひらがジリジリとひりつく。
「この蝋燭が消える時間と天秤のカウントダウンは同じ理屈?」
セツナは握手出来る距離まで近くに来た666に尋ねる。
「そうですね。一緒ですよ?もしかして壊せるとでも思って再び魔界に来たのですか?死にたいのかな?今なら聖域に送り返して差し上げますよ。今すこぶる気分がいいので、帰って下さるなら見送ります。」
666はいつも被っている帽子を取り、杖と帽子を消し去る。
握手を求める前に手袋を綺麗に嵌めなおす。
「まさか?あなたを倒してから帰りますよ。うちの妹がね?」
セツナは差し伸べた手を払う。
「とりゃ。」
トワが全力の拳を繰り出す。
「ありゃ。」
666はにやりと笑うとトワの拳が体を貫通する。
メラメラと燃える体がそこにあり、痛くも痒くもなさそうな顔をする。
「はぁ、じゃやりますか?」
666は魔術を口ずさむ。
魔術、二重詠唱。
『滅びの燈火。座標指定。空間固定。認識阻害。獄炎。業火。圧縮』
発動、滅びの賛歌。
神術。
『炎龍の日。封陣解除。太陽を宿し者。龍が来たれり。』
発動、降臨、炎龍のトワ。
隠密ため隠していた神気を爆発させる。
トワを縛っていた封陣がほつれて熱い熱気が噴き出す。
「ハくいしばれよ?レツ。」
すり抜けた拳をもう一度振りかざすと666の魔術を消し去る。
神術。
『炎龍の日。付与。灼熱の業火。魔気融解。一撃必中。次元を切り裂く波動。』
発動、太陽の拳神術。
トワの神気に満ちた拳が666にあたり闘技場の壁まで吹き飛ばす。
「まったく上品じゃないですね。」
666はドロッとしたマグマを吐く。
その隙にセツナとライデルも封陣を解く。
神術。
『水龍の刻。封陣解除。空間支配。時の雫。』
発動、降臨、水龍のセツナ。
神術。
『鳴り響け、神の雷。封陣解除。天空の怒り。月光天雷。』
発動、降臨、雷龍のライデン。
神術。
『水龍の刻。凍てつく空。凍てつく大地。凍てつく空気。』
発動、永久凍土。
セツナは666の動きを封じる。
神術、多重詠唱、略式。
『天雷。一撃。』
発動、雷雷轟轟。
ライデルの千を超える稲光が666に直撃する。
凄まじい土煙が上がる。
雷が落ちた衝撃がそれほど大きかったのだ。
全員の意識が吹き飛ぶ。
天秤の制約が重くのしかかるのだった。
土煙がひくと無傷の666が立っていた。
「あっけないですね。所詮こんなもんですか。」
意識を失ったセツナに近づき顔を蹴り上げる。
それでも起きる気配が無い。
666はわざと全てのダメージを受けて依り代を破壊させたのだ。
今、意識を失っている皆の前に堂々と立っているのは本体そのものなのである。
勝利を確信しているから、セツナ達の前に本体を晒す。
「あっけないですが、これでさよならですね。」
666は全員を火葬する。
『滅びの燈火。座標指定。空間固定。認識阻害。獄炎。業火。圧縮』
発動、滅びの賛歌。魔術。
「短い様で長いお付き合いでしたが、楽しかったです。」
倒れこんだ全員が燃え上がる。
「レツ、そこまでにしな。」
何処からか声が聞こえる。
燃やしていた三人の姿が闘技場の上から消えていた。
「誰??」
666は驚く、老人が闘技場の上空に浮いていた。
「ワシだ。」
神気を纏った老人が666をたしなめる。
気絶した3人を保護していたのだ。
小さなポータルを開いて3人を別次元に送る。
「0?でも少し雰囲気が違う?」
666は目を凝らして驚く、0だったのだ。
「あれ?言って無かったけ?レツ。」
0が驚く。
空中にゲートが開いて、0が二人現れる。
0が二人いたのだ。
「ほら。」「ほら。」
0は合わさり若い青年の1となった。
0と0が掛け合わると1に変貌する。
666すらその存在は幻と思っていた1の姿があった。
永久欠番の1。
魔界最初の魔神であり唯一神1の姿があった。
肖像画や彫刻で描かれた姿で降臨する。
「えっ?聞いてませんよ。1は、遥か昔に死んだのでは?」
666が鳥肌を立てる。
0の一番の理解者すら知らない真実が明るみに出る。
0の姿は仮初の姿だったのだ。
「確かに死んだよ。遥か昔にね。ずっとこの姿でいれる訳では無い。」
すぐに二人の老人に戻る。
魔気と神気を持つ老人0へと姿が変わる。
魔気を帯びた姿に一番馴染みを感じる666。
神気を帯びてる瓜二つの0に違和感しかない。
でもどちらとも0なのだ。
「理解が追い付きません。少し説明が欲しいです。0?1?」
666は説明を求める。
「覚えてないのか?レツ、お前が精霊だった頃、初めて会った姿は1として契約したんだ。」
神気を帯びている0が寂しがる。
「第二次聖魔対戦で確かに死んだよ。1としてね。かつての力はその時に喪失したよ。だけど、ワシの能力はしっているだろ?」
魔気の0は666に問いかける。
「知っています。感情を具現化する魔術です。」
666は即答する。
「そうだよ。レツ、少し昔話をしてあげよう。世界が何故二つ別れたのか。そこに全ての答えがある。」
そう前置きを置くと0は1の姿に再び化けて昔話を始める。
「かつてこの世界は善意と悪意が入り混じった醜い世界だった。神族は負の感情を糧とする魔族を疎み見下す、魔族は正義とためなら他種族を見下し支配する高慢な奢り高ぶる神族を憎み恨んだ。お互いがこの世界の支配者としてふさわしい存在だと争いが絶えなかった。初めて世界を巻き込むほどの戦争を経験した時にお互いに絶滅する恐怖を知ったんだ。それからは、議論を重ね合いそれなりの平和な世界でお互い生きていたんだ。神族と魔族との交流がありそれなりなり比較的平和な日々を我々は過ごしていたんだ。ところがある日、神族と魔族の過激派の連中がを全て消し去る術を編み出した。それが諸悪の根源、滅びの賛歌、お前だよ。魔火と聖火を融合してこの世界を消し去るつもりだったんだ。決して交わる事の無い神聖な聖火と純粋な魔を帯びた魔火を融解させると聖魔爆発が起きるを発見したんだ。それを知ったワシは魔族と神族の穏健派が手を取り合いその兵器の破壊を試みた。それは熾烈な殺し合いとなった。多くの仲間が世界を救うために命を散らした。過激派のやつらも神族と魔族がてを取り合っていたためこちらの情報が全て筒抜けだったんだよ。とても残念な事に実験を阻止する事は出来なかった。ただ諦めはしなかった、彼らの思惑を阻止するために我々の世界わ救うためには世界を二つに割く事にしたんだ。その結果としてその実験は失敗して魔火に聖の意識を持つお前が生まれた。。」
1は666を指差す。
「お前は世界を破壊するため生み出された兵器なんだよ。」
真実を伝える1。
伝え終えると力尽きたのか0の姿に戻る。
「二つに世界を割くには守護者が必要だったんだ。この世界を維持するための精密な結界を維持するシステムに組み込まれた守護者がね。」
聖の0。
「このシステムの設計を担った1であるワシに白羽の矢がたった。」
魔の0。
「何故なら、魔気と聖気を扱える神族だったからね。」
聖の0。
「ワシは心の中にある悪意を魔気に善意を聖気に変換して扱えるエヴァン・ワンって訳じゃ。」
魔の0
「生まれたてのお前はとても不安定が危ない存在だったが、魔火に意識が宿っている事に気付いた時、皆の反対押し切ってお前と契約したんだ。」
聖の0。
「自分人格を2つに分ける時に力を貸して欲しかっただよ。」
魔の0。
「そうしてわしらがこうして生まれたんだよ。初代白の守護者、0。」
聖の0。
「ワシが初代黒の守護者、魔君0。」
魔の0。
「代償はあまりにも大き過ぎたがな。ほとんどの魔族と神族は世界の分裂に耐える事が出来なかった。辛うじて助けれた魔族と神族の子供達が、今の長老世代ってわけ。当時を知る世代はもういないため混沌とした世界になってしまったがな。」
聖の0。
「じゃあ、私がしたかった事は全く無駄だったわけですか。」
世界の真実を知った666は生まれて初めて胸の奥がズキズキ痛む。
0が良く昔話を聞かせてくれた世界に憧れをもっていた666。
境界の向こう側の世界に懐かしさを抱えていた自分正体を知り納得する。
聖火に触れた時に温もりを感じた理由を知り少し口を閉ざす。
世界を壊すために生まれた自分が、今、世界を一つにするために全力を尽くしている事が馬鹿らしくて悲しかったのだ。
善意と悪意の狭間で感情が激しく揺さぶられる。
0のためを思って善意での行動。
こんな世界を憎む悪意での行動。
どちらも本心からおもって世界を統一する決意に揺るぎが生じた瞬間だった。
「お前自身が、罪悪感を感じる必要は無いんだよ。確かにワシはもうすぐ死ぬ。」
聖の0。
「それは、自然の話なんだよ。ワシは神族として禁断の行為を犯した。魔に染まり魔族として歩んだ人生も嫌いじゃ無いんだよ。お前がワシのために行動してくれたのは知っている。お前の行為を止める権利はワシには無いのかも知れんが、あの悲劇をもう一度繰り返す危険性がある以上、ワシはお前を全力で止めるよ。例え死ぬ事になったとしてもね。」
魔の0。
「世界の均衡を守るために死ねるなら本望じゃよ。」
聖の0。
「それは、本心ですか?本当に昔が恋しく無いのですか?今の世界は憎しみでしかありません。分断された世界ではただ永遠と互いに憎しみを煽るだけでは無いですか?私はそんな世界なんてくそっくらえなんです。」
666は再び瞳に強い意志が燃える。
「はぁ、そういう話だったんですね。正直、何が正解なんて解りませんが、お先祖様がそこまで自分を犠牲にして維持する平和なんてくそっくらえですね。」
セツナとトワがゲートを開いて魔界へ帰ってきた。




