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交易都市グラナダ2

〜グラナダに到着して二日目〜

「やばっ、このパン美味いわ。」

ネオが元気良く朝ごはんを食べる。

「やばいね。このバターつけるともっと、やばい。」

知能指数が30まで落ちたトワもがっつく。

「ふーっ。ねむっ。」

ユルファ鳥の茹で卵の殻をピキパキと割りながら無心になるセツナ。

「お前らまだ朝飯かい?ゴクゴク。」

朝のランニングを終えたグレンがカルティ茶を美味しそうに飲む。

「ねぇねぇ、早起きやね!」

トワは頬っぺたに沢山食べ物を詰め込みながら部屋に戻るグレンを引き止める。

「習慣よ!朝起きちゃうんよね。」

可愛くグレンはウィンクして部屋に繋がる階段を上がって行く。

「まぁ、確かに寝過ぎたわ。」

セツナは旅館の砂時計に目をやり赤から白に変化した事で10時00分を確認する。

旅館の砂時計は一時間毎に反転するらしく、反転する度に色が変化するおしゃれな時計だった。

「はじめてやで!お腹減って起きるなんてさ。」

ネオもトワに負けじとフワフワのパンをたらふく食べる。

「さて、風呂でも入って街を探索するか。」

セツナは塩を少し卵にかけてペロリと平らげる。

「んっ?はっ。。ふっ。。んっ。。ゴクン。」

トワは言葉にならない発音で答える。

指はしっかり親指を立ててグーッの合図を出す。

「わっ。。った。。」

ネオも返事にならない声で賛成の意を示す。

「はぁー。全く。俺らはパシリか?」

予約の掲示板の下にある伝言板にデカデカと赤文字で、

『赤い月の下で666』

と見てしまいセツナはピクっと口角が上がる。

ほんとに嫌味な奴だと再認識させられた。

魔法がかけられた特殊な文字で恐らくセツナしか見れないように書かれているのだ。

キラキラと文字が消えて行く、無駄な演出付き。

「ちょいと先に上にあがるな。」

セツナは駆け足で3階へと向かう。

「ふぁい、ふぁい。」

2人揃って見送る。

〜303号室前〜

「はぁーい。」

コンコンと扉を叩く音にグレンは返事をする。

「アイツからのメッセージです。グレンさん。」

少し息がきれたセツナは伝言のメッセージをそのまま伝える。

「んっ?どういう意味?」

グレンは伝言の意味が解らなかった。

「正直、俺にもわかりません。ただ1つわかるのはアイツからメッセージで、決して無意味な伝言ではないって事だけです。それか、本当に遊ばれているかのどっちかですね。」

セツナは目線を下にやる。

部屋から出てきたグレンが薄着だったので目のやり場に困っていた。

「伝言の件は、了解よ!解らないモノは後回し。じゃあ11時に旅館の入り口に集合ね!街中探し回るで!セツナ君。」

グレンはポンポンとセツナの肩を叩いて扉を閉める。

「あっ。まだ閉めないで!そもそも、グラナダを目的地にした意味は?」

扉越しにセツナは大きな声で問う。

「直感よ!」

グレンの元気な声で扉向こうから帰ってきた。

「終わってる。」

セツナは何となく、何となくだが、そんな気がしていたのだ。

頭をかきながら駆け足で一個下の階に下りていく。

部屋に戻るとネオが自分の爪で歯磨きをしていた。

「便利やな。その爪。」

セツナは水を口に含み軽くうがいをする。

「そうやろ?」

褒められて少し笑顔になるネオ。

「もしかして、ネオって綺麗好き?」

「もしかしてって何やねん。生粋の猫人やで?手入れはいつも完璧にするのがマナーよ!」

「ごめん、なんか勝手なイメージで獣人ってなんかもっと粗暴な思い込みがあったかも。」

「いいって事よ。俺は軽く水浴びてるからどうぞ。」

ネオは軽く風呂場を指差す。

風呂場といってもタイルを敷いた簡易的な風呂場である。

手洗い場にある丸いプニプニしたオレンジ色の鉱石を握り風呂場で頭上から絞るとあったかいお湯が滴り落ちる。

「あぁー。気持ちいいな。」

セツナは寝ぼけた頭をスッキリさせる。

サボテンスポンジで身体をゴシゴシ擦る。

シャワーを浴びていると頭の中の考え毎がスッキリとしていく。

法術の進歩により人の生活はより豊かになった。

この世界に満ちているエネルギーは選ばれた人間しか使えない超人の時代が長らく続いた。

しかし、ある時人々は気が付いたのだ、文字と気の関係にそこからの発展は目まぐるしいものだった。

決まったパターンを刻み込む事で誰しもが魔力や気力を使わなくても同じ毎が出来る日が訪れた。

今使っているこの鉱石も人間の努力の結晶である。

熱を持つ鉱石に水が溢れる刻印を刻む事で握るだけでお湯が溢れてくる。

そう真気がある限り半永久機関が手軽に作れるのだ。

「凄いよな。」

セツナは暖かい石をゆっくりと脇のケースにおく。

そこからはテキパキと服を着替えてネオと共に一階へと向かった。

「遅いよ!にぃに。」

一番最後までご飯にがっついていたトワが先に下に降りてまっていた。

そして伝言板には、

『頑張って!666』

と一言が添えてある。

「アイツが何故この宿を選んだかなんとなく分かったわ。」

もう驚く事に疲れたセツナが独り言を溢す。

「なんか言った?」

グレンが門に手をかけて振り返る。

「いいや。何も。」

「そっ!じゃあ元気よく行きましょうか!」

力一杯正門を押してグラナダの街へ繰り出す。

「観光、観光!」

トワは久々の大きな都市なので興奮していた。

こうして、二日目は全て観光で終わった。

ユーラスの丘でピクニック、三日月亭特製ユルファ鳥のフライドチキンを食べて、少しだけ小遣い稼ぎをしてから、夕方はセス通の夕市でショッピング、夜はカルタスの展望台で夜景を4人で眺めた。

本当に久々、羽を伸ばした充実した1日を過ごせた。

夕市では、丁度ムーンフェスタだったらしく、至る所でキラキラ光るアクセサリーが売っていたり、期間限定のアイテムで溢れかえっていた。

特にクァカ宝石店の看板は特に美しかった。

赤いドラゴンをあしらった特徴的なモチーフで竜人兄妹は特に惹かれた。

グラナダは元々宝石が取れる鉱山と共に栄えてきた。

その鉱山の持ち主は何を隠そう、セツナ兄妹の叔父様が守護する山なのだ。

龍神とカッコつけていても根っこは竜なので大好物はキラキラとしたモノ全てとなる。

ミーハーと言われようが、兄妹も大好きなのだ。

「楽しかったね!!あっ、これ気付いた?」

お昼に稼いだお金で買った淡いピンクのリングを大切に撫でる。

買ってすぐに、竜の刻印を施した。

何を刻んだのかお兄ちゃんにすら秘密にして凄く楽しそうにトワは歩く。

チラッとだけ視線を後方に飛ばす。

「うん、凄くかわいいね。」

その後小声でセツナは続ける。

小声「見られてるね。しかも、相当なやり手やね。殆ど魔気を漏らさないなんてやるな。」

小声「魔神、本人って感じはしないけど。」

普通「めっちゃ楽しかったな!!」

グレンも気付いてらしく小石を蹴りながら雑談を交えつつ会話に参加する。

「むにゃむにゃ。」

ネオはグレンにおんぶされて夢の中にいた。

4人は徐々に人混みの少ない通りへと足を進める。

とうとう、町外れの廃墟まできた。

昼は観光地として人混みが凄いのだが、夜は真っ暗で人っ子1人いない寂しさ溢れる場所で歩みを止める。

「ねぇ?いい加減出てきたら?」

トワは、いきなり大声を出して、小石を弾丸の如く弾いて暗闇の奥へ飛ばす。

暗闇に溶け込んでいた影が月明かりに照らされて一つ、二つ、三つ、、、合計7つの影がゆらりと現れた。

「はじめまして。粉砕の鬼姫。そしてさようなら。」

一際濃い影をもつモノが低い声で別れの挨拶をつげる。

静寂が支配する夜、赤月の遺跡で魔族との戦いの火蓋がきって落とされた。














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