天秤は揺れる2
【消えろ。】
襲い来る魔獣が龍言の一言で消し飛ぶ。
セツナとトワの父親である人物がそこにはいた。
彼の名前はエヴァン・クラン。
現在の神族全体の長を務めている。
「すまん、遅くなった。グレンさんありがとう。倅は私が預かるよ。」
クランはグレンからセツナを受け取ると、セツナの体内に神気を流し込んで回復をする。
リヴァイバルフロー、超難易度の高い回復術と同時に魔界へと通じる門を閉じる。
「とぅ。。さん?」
セツナは目を覚ます。
「あっ、」
急に何かを伝えようと周りを見渡す。
「魔獣消しちゃいましたか。。お父さん大丈夫ですか?」
セツナはボロボロになりながらも父を心配する。
「あぁ、大丈夫だよ。全部解っているから、安心して寝てなさい。」
クランは神術の回復系統のヘブンスリープをセツナにかける。
身体を強制的に睡眠状態にして身体の回復へと専念させる。
「クラン様?どういう事ですか?」
グレンが眠りに落ちる前のセツナの一言が気になったのだ。
「あの天秤のせいだよ。奪った物に対して同じ質の物を奪い取る魔術だよ。」
クランが天秤を破壊しようと試みるが失敗する。
びくともしなかったのだ。
「んっ?どういう事ですか?ちち。」
トワが心配そうに父に抱っこされたセツナを覗き込む。
「さっき魔獣を倒したらいつもより神気の減りが早いと感じなかったか?強い敵を倒したら倒した分だけ。」
クランは丁寧に説明をする。
「それは、確かに感じました。ゲートから溢れる魔気のせいかと思ってましたが、違うのですか?」
グレンは質問をする。
「それは、多少あるが、一番の原因は天秤だよ。これは、三つの世界の質量を天秤にのせているんだ。一つの世界の質量が減ると他の皿から減った分だけ補う恐ろしい魔術だよ。私でも破壊出来ない程にね。」
クランは、もう一度破壊を試みる。
傷一つつかずに天秤の黄金がキラキラと煌めく。
「あぁ、何となく理解しました、クラン様。それって、かやりやばいですよね?簡単な話、命の等価交換を求めてくるんですか?コイツは。」
グレンは天秤を指差す。
セツナの片腕が消え去ったのは魔界へのゲートを閉じようとして削った魔気の対価として腕をもってかれたのだ。
「それだと、本当にクラン様大丈夫なのですか?セツナすらあれだけの代償がいったのに。」
グレンはセツナの心配した気持ちを理解する。
「私を誰だと?あんな門ごときに私の命と釣り合わないよ。ほら、他の怪我人の回復を優先して。」
クランは素敵な笑顔を見せて矢継ぎ早に指示をだす。
続々と大人達が救援に駆け付ける。
「クラン様、鬼神の里他多数、ゲートを確認しております。初動で無理に門を塞ぐ事に挑戦したものが複数人殺されております。申し訳ありません。おのおの族長が対応にあたりなんとか塞げましたが、被害が甚大です。緊急事態宣言出しますか?」
紫鬼ゼタ・ユニトがクランへと報告にやってくる。
「そうか、門番から犠牲者が出てしまったか。遺族には最大限の配慮を、それと非常事態宣言は、まだ出さない。下手に不安を煽ると敵の術中にはまるからさ。冷静に対応しよう。まず、門番をシニアクラス以上に、そしてポータルの復旧を最優先に、アルーマの被害の把握も頼む。」
一つ一つの事案に対してクランは的確に指示をとばす。
「ほっほっ、ワシらも出番かな?」
老夫婦がゆっくりとした足取りでクランの横に立ちお爺ちゃんのカトスが髭を撫でながら会話に参加する。
「ラルク夫妻、長老会議は?」
クランが龍神族の長老であるラルク・カトスとリベアに聞く。
ラルク家は、あのライデル兄弟の家系にあたるのだった。
「こんな騒ぎがあるのに、中止よ。中止。可哀想にセツナ坊や手酷くやられたね。」
リベア婆さんがセツナの腕が消し飛ばされた傷跡を見る。
腕の回復を許さない程の禍々しい呪いが刻まれていた。
呪いの解呪を行う術を展開する。
神気を吸い取る呪いの解呪には成功したが、腕の回復を邪魔する拒絶の呪いまで消すことはできなかった。
「リベアさんありがとうございます。それより、サーベルとクルトのお孫さん達の代わりに門番お願い出来ますか?本来、長老に頼む事では無いのですが。」
クランは申し訳なさそうに長老達に依頼する。
「何、気を遣っている。適材適所じゃないの。任せなさい。」
とリベア。
「そうそう、久々に血が騒ぐな。六万年ぶりかな?門番なんて。」
嬉しそうなカトス。
「本当ね。なんか若返るわ。門番なんて。」
と快諾するリベア。
「助かります。」
そんなやりとりをしていると、
「ジリジリ」
さっきと同じ規模の魔気がポータルの廃墟から湧き上がる。




