天秤は揺れる1
〜龍神族のポータル付近〜
『夜が来たれり。』
禍々しい魔力の塊が文字となって空間に現れる。
「ジリリリ。」
堅牢な守りで固められていた筈のポータルの石柱が瓦解する。
「ぎゃお!!」
巨大な魔獣が何匹もパニック状態で次元の亀裂から溢れ出してくる。
「何やこいつら。」
のんびりグレン達の会話を横で聞いていたネオが一番最初に驚く。
今までに見たことの無い大きさの裂け目が龍神ポータル跡に出現したのだ。
「皆んな、わかってる?」
グレンは落ち着きを払ってまず1匹を陽炎の素振りで消し去る。
「うん!ねぇね。全力でしょ?」
それに続くトワ。
先ほどの連戦の疲れを見せない綺麗な右ストレートで魔獣の塊を肉塊に変える。
「意味がわからん。これ破壊出来るもんなん?」
少し遅れてサーベルとクルトを一歩下がらせるルカルド。
「現に、破壊されてしまったんやから、そうなんでしょ?」
セツナは歯を食いしばり皆んななサポートに徹する。
魔の空間は益々大きく開こうと拡張し続けていたのだ。
それを全力で食い止めるセツナ。
「近づけさせへんで?」
雷光の速さで魔獣からセツナを守るネオ。
神術。
『磁力。回転。加速。ブースト。轟け。唸れ。音を置き去れ。』
魔術。
『磁力。回転。加速。ブースト。蠢け。捻れ。音を抜き去れ。』
発動、『神魔術』音無一閃。
新しく開け始めた空間と魔獣を共に縫い付ける。
空間に縫い付けられた敵は空間の捻れと共に散る。
恐ろしい程の速さで敵を消し去るのだった。
「ごめん。失敗した。」
セツナの右腕が消し飛ぶ。
魔のゲートの制御に失敗したのだ。
虚無の空間に腕を持って行かれる。
目が焼ける様に熱い。
「セツナ。無理するな。無理なら無理で良いよ。」
グレンはセツナに駆け寄り、崩れ落ちる身体を支える。
「グレンさん、あれ見て下さい。」
セツナは、震える左手で空を指す。
巨大な金色に輝く天秤がそこにはあった。
その天秤は見たことのない形をしていた。
秤皿が3つあったのだ。
黒と白と青の三色で、それぞれが連動しており絶妙なバランスを保っていた。
その天秤を見つめながら、ゆっくりとセツナな瞼が閉じる。
「セツナ?セツナ?」
グレンは、セツナの身体を激しく揺らす。
そんなグレン達に魔獣達が止まる事、溢れ出る波となって襲いくる。




