白の守護者5
「あっ、セツナ様、やばいかも?」
ふと、何かを思い出してナツはセツナを呼びとめる。
『バチん』
大きな火花が散る。
「いってぇな。」
セツナは勢いよく後方へと吹き飛ばされた。
大木の幹にぶつかり鈍い音がする。
ぶつけた頭をさすりながら、少しだけ神気を使い目を凝らす。
洞窟の入り口を全て塞ぐ様な形で、綺麗な法術寄りの神術による封印が刻まれていた。
「これは、気づかんわ。」
ぶつけた所が悪かったのか、頭がクラクラする。
「セツナ様だったから、この程度で済んでるよね。これ。」
ナツは目をぱちくりして、恐怖の目で入り口をみる。
「間違えないね。」
頷くフユ。
「ほんと、周囲に溶け込む様ないやらしい封印術やな。なるほどな、内部に神気が入らない様に遮断してるのね。これがあるなら別に苦労して降りなくても直接来たら良かったかな?」
頭に出来たタンコブを痛そうに触る。
「いや、神気で来たら。これ探知するタイプだから秒で弾かれてますよ。」
神気を視覚化する眼鏡を取り出して解析をナツとフユが始める。
「俺も手伝うよ。」
セツナも封印の境目に触れて解術をする。
真理の目をフルに活用して、あっという間に解析と解術を終える。
「これで、行けそうですね。」
フユは念入りに入り口を観察する。
「僕、前走るから。気にしないで行こうよ。まだあったとしてもなんとかなるよ。きっと。」
セツナは、頼もしい台詞とは裏腹にビクビクしながら、足を一歩踏み込む。
「んっ。」
身構えるナツとフユ。
「・・・・」
何も起こらない。
「ふーっ。よし、行くぞ。」
セツナは、緊張から解放されて深く息を吐く。
肩の力を抜いて歩みを進める。
『バチバチ。』
今度は地面から雷撃が全身を駆け巡る。
「いてぇな。もう、いや。次は何?」
セツナは、毛が逆立つ。
もくもくと頭から煙が立つ。
「多分、これはシンプルな法術の埋設探知型の罠ですね。」
ナツは、眼鏡を外して地面を指差す。
「これ、かなりエグいですね。神術の封印術解く事で、神気を抑えて中に入るもんだから、どうしても防御が弱く、罠のダメージがダイレクトに来ますもんね。」
フユはしっかりと作り込まれた罠に関心する。
「マグンじぃ、罠があるなんて一言も聞いてないぜ。あるなら言ってくれよな。ライデルマッチョと同じ位の威力だよ、これ。」
今度は、目がチカチカして全身がピリピリする。
そっから先の道のりは辛かった。
神気が使えれば、何とも無い罠ばかりなのだが、どうしても法術だけで対応するには面倒な罠ばかりだったのだ。
「はぁ、幻覚や迷いの術だったら一瞬で来れたのに、全部物理的な罠ばっかりで嫌なるわ。」
セツナは、キプロス鉱石がある最深部まで来た頃には、全身がボロボロになっていた。
「何も、無理して全部、1人で罠消化しやくても。」
フユがセツナを心配する。
「そうですよ。セツナ様。たまには私達も前に行きますよ。」
ナツもセツナを心配する。
「いや、大丈夫よ。久々、いい勉強になったし。多分これ、最初の封印以外はただのマッサージ施設だわ。」
セツナは罠のフルコースを終えて悟る。
電気ビリビリ足裏マッサージ、キプロス鉱で出来たハンマーによる肩叩き、ゴロゴロ岩石による背中の押しマッサージ、そうこれら全て筋肉の凝りが酷くて悩んでいるマグン大叔父様特性のマッサージコースだったのだ。
「あぁ、マグンじぃ、普段どれだけ肩凝り酷いんだか、あのハンマーは肩がもがれるかと思ったし、球体の岩に関しては棘まであるのは狂気よ。」
施術を終えたセツナの感想としては、癒されるどころか死のマッサージそのものだった。
「それにしても、綺麗な鉱石ですね。黄金色の鉱石がキラキラと灯りに照らされて光る。」
洞窟の開けた場所に出るとその広場一面がキプロス鉱石だったのだ。
天井も地面も壁も全てキプロス鉱石で出来ており、神秘的な風景が広がっている。
「これがキプロスの雫なんですね。」
鉱石から染み出した雫がポタポタと天井や壁から染み出して地面一面が水で満たされていた。
「よし。回収しますか?セツナ様。」
ナツの一言を聞いて、そそくさと回収作業を始める3人。
「たかが、水のためにこんなに苦労するとは。」
セツナら疲れ切った目をして持ってきた皮袋にひたすら水を詰めては法術の空間転移で自宅の部屋に投げ込んでいく。
大量に持ってきた皮袋を全て使い果たすと、深さ1.3m程の水面に飛び込んで神気を爆発される。
「あぁー。生き返る。ナツもフユも少し泳いでから帰ろうよ。」
セツナは、キプロスの溜まり水全てをポーションに精製する事で、みるみる、ぼろぼろだった身体が癒されていく。
「いや、私達は大丈夫ですよ。」
遠慮する2人。
「そうなの?冷たくて気持ちいいのに。」
水面に浮かんで天井を眺めるセツナ。
『ドクン』
急に目が熱くなり、身体の血液が激しく煮えたぎる。
天井にはキプロス鉱石を加工した石碑が掘られておりそれを、認識した瞬間にセツナに激痛が走る。
〜流星が降り注ぐ氷の大地〜
「セツナ坊や。久しぶり。」
白いフードを被り、綺麗な茜色をしたランタンを右手にぶら下げた裸足の女性が目の前に立っていた。
「フリズ大叔母様?」
セツナは驚く。
キプロス鉱石の風景に負けない位の神秘的な世界が視界に広がっていたのだ。
「元気してる?ほら、座りな。」
ランタンを地面に落とすと、机と椅子に変化する。
「えっ?まぁ、元気にしてます。それより、おばさま、こんなに頻繁に力を使って大丈夫なんですか?」
セツナはこの世界が何なのか理解していたのだ。
「いいのよ。多分、私、もうすぐ死ぬからさ。」
白いフードを外してとんがった耳に綺麗なコバルトブルーと白髪が混ざった髪色で、にっこりと微笑むフリズおばさまがいたのだ。
「そんなに、不安定なのですか?境界が。」
フリズおばさまに問う。
「かなりね。今は、なんとか安定さしているけど、外部から干渉があまりに強いのよ。」
指を鳴らしてクリルの茶葉で入れたあったかいお茶を差し出す。
「どれ位持ちそうですか?」
セツナは、思わずフリズ大叔母の限界を訪ねる。
「うーん、5年位かも。」
本人は至って冷静に伝える。
「たった五年ですか!」
焦りが隠せないセツナ。
この世界に来るのはこれで4回目となる。
最初の1回目と2回目は正直はっきりと覚えてはいないが、うっすらと記憶には存在している。
ただ去年、聖域をはじめて飛び出す前日にお会いした3回目は鮮明に覚えいた。
何故ならその時に、白のフードの女性が誰か知る事になったのだ。
今、目の前にいるフリズ大叔母様が、白いフードの女性の正体であると。
「私は、それほど焦りは無いから安心してよ。セツナ坊や。使い方は全て教えた貴方がいるから、私は今、全力で世界の均衡を保てているのよ。」
美味しそうにお茶を飲むフリズおばさま。
「おばさまは、良いかも知れませんが、私が全然大丈夫じゃないんですよ。まだまだ、知りたい事沢山あるのに。五年の月日は短いですよ。」
トワの夢にも現れて、間隔を開けずにセツナにも会いにきたフリズ大叔母の体への負担をかけてまで伝えたかった事実にただひたすらに漠然とする。
正直、こんな真実は知りたく無かったのだ。
「そんなに私が心配?ならさ、誰か境界を壊したい犯人がいるのは間違えないのよ。セツナ、そっちの世界でなんとか犯人見つけて貰えないかしら。」
フリズ大叔母は、ショボンと落ち込んでるセツナにお願いをする。
「あっ。多分それなら犯人わかってます。」
おばさまを虐める犯人に心当たりがセツナにはあったのだ。
「流石、セツナ坊や。優秀だね!で、誰なの?」
フリズ大叔母、自身もこの悪さをする犯人にイラついており、さっさと解決したかったのだ。
だから、無理してでも、現実世界に干渉を繰り返していたのだ。
「えーっと。666です。」
セツナは端的に伝える。
フリズ大叔母様と666の因縁があり、深い関係なので、おばさまの反応が怖かったが、素直に答えた。
「んっ?もう一度言って?聞き間違えかも。」
フリズ大叔母様の眉間にシワがよる。
「6、6、6です!おばさま。」
セツナは、おばさまから溢れる殺気に言葉が詰まる。
「あいつなの?最悪やな。どうりで強力なわけだ。」
チッ、と上品な雰囲気に似合わない舌打ちをフリズはする。
「あのー。多分、私が抱えてるトラブルと、フリズおばの抱えてる問題は共通してそうな、その様な気がしてまして、えっと、その、不機嫌そうな顔を少し和やかなになりませんか?私が殺されそうです。」
セツナは、フリズ大叔母の濃厚な殺気と鬼の様な形相に、気を使いながらこれ以上刺激を与えない、地雷を踏むことを避ける話し方になる。




