炎の夢3
「ネオを先に竜の里まで案内してくれる?ネオ、少し寄り道したいから、先に竜の里に行っててくれないか?」
セツナはネオの話を軽く流してナツとフユにお願いをする。
セツナの影に影犬が可愛く尻尾を振って手紙を運んできてくれていた。
それに目を通したセツナは計画を少し変えた。
「いきなり、何よ?ワシも一緒に行きたい!」
ネオは少し不機嫌になる。
「いや、音速で飛びたいから多分ネオ死ぬよ?」
セツナは乗れる自信があるなら来いよと強気の姿勢に出る。
「あっ。。なんでも無い。美人姉妹についていきます。案内してお姉様達。」
リヴァとヴォルケの再会で見たスピードを目の前にして二度と乗りたいと思わなかったのだ。
「あのー。。どちらに?」
ナツがセツナに尋ねる。
「グラナダ・アルト鉱山。赤龍マグン叔父様に会いに行くわ。ちょっと欲しい物が出来たんよ。トワー。マグンじぃの家行くで!!じゃあ、また竜の里で!」
セツナはグラナダ、最大の鉱山に行く必要があったのだ。
トワに大きく叫ぶと同時にリヴァに跨るセツナ。
さよならの言葉を残して一瞬で姿を消す。
激しい竜巻きを置き土産にして2人は寄り道をする。
〜アルト鉱山〜
「じぃじ。来たよ。」
トワは飛んできた勢いそのままに火口へと突っ込む。
「ドスン。」
大きく一回山が揺れた。
地響きの中で、叫び声がこだまする。
「姪っ子ー。。元気してたか?」
飛び込みでやってきたトワを大きな巨体で受け止めるマグン叔父様。
身長はグレンよりも大きく体格もずんぐりむっくりの髭もじゃ叔父様がそこにはいた。
トワが赤ちゃんに見える程の巨体は弾丸で飛んできた姪っ子を受け止めて抱きしめる。
「トワ、マグン叔父様は6万歳で腰がバキバキだからさ。無理さすなよ。」
セツナは遅れてゆっくりと火口から広い空間へと降り立つ。
リヴァとヴォルケは火口付近の切り立った崖に爪を立てて座っていた。
龍が捕まりやすい様に火口付近は削られていたのだ。
「何年ぶりだい?いつから地上にいたの?」
マグン叔父様は嬉しそうに質問責めが続く。
「つい最近ですよ!叔父様。」
セツナは手を差し出して握手をする。
「そうか、そうか。お前らもとうとう、武者修行の時期なのか。」
マグン叔父様は目をうるうるさせてトワを下に降ろす。
「叔父様、ごめんなさい。遊びに来たわけじゃないんだ。」
セツナはいきなり本題を切り出す。
「何?違うのか?」
少ししょんぼりする叔父様。
「実はマグタイトとキプロスの涙が欲しくてさ。」
セツナはあまり聞きなれない物体を叔父様にお願いをする。
「また、偉い珍しいモノが欲しいんだな。」
セツナのいきなりのお願いに目を丸くする叔父様。
「実は、粉砕の鬼姫グレンからお願いをされちゃってね。どうしても欲しいんだ。」
セツナは事情をざっくりと叔父様に話す。
「なるほどなぁ、境界を強化するために欲しいわけか。確かにマグタイトはあるが、今キプロスの涙は無いんだよ。」
叔父様は少し困った顔になる。
マグタイトはここアルト鉱山で採れるので幾つかストックはしていたのだが、キプロスの涙は持って無かったのだ。
*マグタイト、火山から採れる希少な鉱物。半永久的に高温を発熱する危険な鉱物。
*キプロスの涙、キプロス結晶内で数万年時代をかけて濾過された無色透明な水。神和性が高く、神の雫とも言われている。
「マジかぁ。叔父様すら持ってないのか。」
セツナは少し唇を窄める。
「いやぁ、10年前に20L程あった涙、全部酒にしちゃった。」
叔父様は舌を出して、奥の棚に飾っている樽を指差す。
「うぉぉぉ。一滴すら無いの?」
セツナは奥にある芳醇な香りのする樽を睨みつける。
「うん。。だって普段使い道ないじゃん。」
叔父様は少し恥ずかしくなったのか指と指でツンツンと合わせる。
「確かに使わないけどさ。」
セツナは絶句する。
神族はポーションを使わない。
しかも、キプロスの涙の一般的な使い道はポーションなのだ。
さらに残念なのが、キプロスで作ったポーションは、人族には副作用が強すぎて使えない。
神族は、ポーションで治すより神術の方が有効的かつ効率的なのだ。
結果として誰も集めておらず、今回の出来事が無ければこの先も使い道がない希少なただの水でしか無かったのだ。
「まぁ、そうだよな。使わないもんな。」
セツナは酒樽を見つめて涙が溢れた。
「にぃに、酒樽の中身で代用は出来ないの?」
トワは樽を持ち上げる。
「無理だわ。揮発しやすいから使えない。マグタイトで雫を沸騰させる事で出来る蒸気に神気を馴染ませて空間に膜を作るんだよ。そうしたら境界の裂けた裂け目の補修に使えたんだ。」
セツナは、使い道を説明する。
高いアルコールだとマグタイトの高温に反応して燃焼してしまうのだ。
「くそっ。せめて果実ドリンクにしてくれたら使えたのに。」
セツナは肩をおとす。
「そんなもん、ワシが飲むわけないだろ。」
叔父様はお酒が大好きなのだ。
ガハハハっと大きな笑い声が響く。
「なぁ、せっかく来たんだ。飲んでいくか?キプロス酒、美味いぞ?」
マグンじぃは嬉しそうに樽を開ける。
神族は、子供でも酒は飲める。
理由は、酔っ払っても浄化出来るので、あまり歳は気にしないのだが、はっきり言って子供の口には合わない。
「いや、私は飲まないよ?グランじぃ。」
「はいはい、私は飲んでみたい!!火の香りがするんだもん!!」
「さすが、我が姪っ子!火山で蒸留して寝かしたこの火を感じるとはセンスがある!!さぁ、飲め!!」
マグンは樽を一つ丸々、トワに渡す。
「ダメです!トワ。」
セツナは樽ごと凍らして飲めないようにする。
「もぅ、話を逸らさないで、おじさん。キプロスの涙って何処にあるの?」
続けてマグン叔父様を叱る。
「セツナ、遠いぞ?オルガ山脈のオッタム洞窟。」
マグンはキプロス結晶がある場所を答える。
「んっ?オルガなの?」
トワは目を丸くする。
聞き覚えのある場所だったのだ。
「なんと、二度手間。」
セツナは両手を広げて顔を隠す。
あまりにも、理不尽な答えだったのだ。




