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意思を継ぐ者3

〜コル砂漠〜

「冬なのに暑いー。意味がわからん。」

ぐったりしているネオ。

王都を出発して初日。

ネオは気温差にやられていた。

「昨日は昼間でも8℃やったのに、なんで20℃もあるだよ。」

なるべく龍達の影の下を歩きながら愚痴る。

「しゃーないやん。砂漠ってこんなもんやで?」

グレンは通いなれた砂漠を元気に歩く。

正直言えば龍の背中に乗れるが、グレン1人のため皆んな乗せるわけにもいかず、徒歩で砂漠を突き進む。

それと乗りこなす自信がない。

どのみち、ウドラが引っ張る乗り物か飛竜での移動が砂漠での一番ポピュラーな方法なのだが、ウドラは土煙が酷く、飛竜は目立つので探索には不向きなのだ。

*ウドラ、砂漠トカゲの最大種で四つ足歩行で足の裏に厚い皮膚を持ち、体調3mにもなる黄土色した肌に目がつぶらな生き物である。暑さに強く、殆ど水を必要としないありがたい存在。基本的に体に固定具をつけて荷車を引っ張る。温厚で牽引重量は2tまで。最大速度は時速30km/時。ちなみに飛竜は80km/時。

「ごめんな。こんな暑いのに歩かせて。」

セツナはリヴァを優しく撫でる。

飛ぶと目立つので四つ足で移動をしてもらっていたのだ。

時たま、偵察としてぐるりと空を周回して貰う時以外は地面での移動となっていた。

ヴォルケとリヴァも何処と無しか嬉しそうな足取りで、恐らく俺らと一緒にいるのが嬉しくて仕方ないのだろう。

龍も賢いので、2人が秘密の旅をしている事を理解しており甘えてこないが、久々の再会にウキウキが隠せない足取りで皆んなに影を提供してくれていた。

「龍って結構プライド高いって聞いてたけど、偉い人懐っこいな。」

グレンはヴォルケを撫でる。

グレンは殆ど、聖域で生活しておらず、アルーマで生活をつづけていたため、新しい仲間の飼い主がセツナとトワだとは全く知らなかったのだ。

龍神族と龍の関係は鬼神族にとっての影犬との関係と一緒であり、飼い主がいることは知っているのだが、まさか横にいる竜人とは全く気が付かなかったのだ。

「そうですね!」

グレンの言葉にドキッと冷や汗をかく、セツナ。

ヴォルケとリヴァが王宮に来た瞬間、とうとうグレンに正体がバレたものだと思ったのだが、あれから全く気付く素振りがないグレンをみて本性を伝えきれずに旅が始まってしまったのだ。

聖域に長く生活していれば龍の数が約100頭と少ないので飼い主もセットで名前が知れ渡るのだ。

『くっそー。あん時に素直に伝えとけば良かった。変に警戒して判断ミスったな』

と激しく心の中でセツナは後悔していた。

龍神族とバレたくない自分の心に気がついた瞬間でもあった。

今までの関係が変わってしまうのでは無いかと変に勘繰って正体をバラす恥ずかしさを感じる自分を子供だなと噛み締める。

「リヴァさん、いい子いい子。」

トワはそこまで深く考えずにヴォルケにリヴァといっぱいはしゃぐ。

そこまで仲良しだと正体がバレそうなものなのだが、トワの性格的に人懐っこいオーラ全開の長所を活かして全くの違和感が生じる事無く馴染んでしまった。

「私は、トワちゃんみたいにそんな気安く触れないわ。」

シュティムが日焼け対策のフードを深く被って龍を見上げる。

彼女の感想としては恐れ多い守護龍のイメージであり、威厳溢れる佇まいにおいそれと近づけないでいた。

恐らくこれが、普通の人間の対応で間違えないのだが、トワを見てるとただひたすらに感心してしまう。

「いや、普通はそうですよ。私も緊張感ありますよ。やっぱり。トワ、昔から動物にめっちゃ好かれるし、あぁいう、性格なんで、怖い者知らずのバカです。」

セツナは思わず小さな嘘をまぜて話す。

ここまで事が大きくなり隠す必要は全くないのだが、旅で染みついた習慣から抜けれないでいた。

「この子達の飼い主いないのに大丈夫なん。」

ネオは巨体の龍の影に甘えつつも一定の距離感を保っていた。

正直に言うと怖かったのだ。

鋭い目つきに爪に纏う濃密な真気、正しく災害級の生き物との初対面での旅はかなりハードルが高いものであった。

まだ、飼い主が一緒にいるならまだしも凶暴な龍との旅に安心感が0となっている。

まだグレンの側で出たり入ったりを繰り返す16匹の影犬の方が可愛くもあった。

「それにしても、コル砂漠広いな。こんだけ影犬総動員しても見つからないとは。」

グレンの読みでは一時間もあれば見つかるつもりでいたのだが、流石は魔神なだけあり、気配を綺麗に消されており足取りが掴めないでいた。

それと影が少ないのだ。

枯れた木の影や砂丘の影等使えるエリア狭いのも影響している。

残念な事に既にオアシスの宿舎の幾つかと連絡が付かない事から魔神にやられてしまったとみてまずはそこを目的地として歩みを進める。

結局の所、魔王の可能性も高く、現地に足を運んでみないとわからないのが本当の所であった。

「あのさ、魔神狩り中に魔王に横取りされるの癪だし、先に狩るのありですか?」

シュティムはふとグレンに尋ねる。

復讐からくる提案ではなく、リスクマネジメントを取った提案であった。

「それは、そうだけど。魔王狩りしてる間に魔神を回復させたくないんよな。むしろ、魔王を魔神の餌にされるのが嫌な感じする。」

グレンは自分の経験から来る最悪のパターンを伝えた。

「そっか、そのパターンもあるのか。」

セツナは盲点だった。

完璧に魔王は魔神を狩る側の立場としか考えていなかったのである。

「すでに1週間経ってますしね。」

シュティムはグレンの考えに小さく頭を縦に振る。

そんな会話をしている内に最初のオアシスに着いた。

「んー。だれもいないね。にぃに。」

トワは崩れた宿舎を見つけて悲しそうに口を窄める。

魔気の残滓が殆ど無く薄れていた。

「丁度、1週間前って感じやな。」

ネオが鼻をピクピク動かして魔気を感じ取る。

「そうやな。」

グレンも同じ感覚だった。

コル砂漠にはコリン特製の魔気探知と封魔結果が戦争の名残で至る所に埋められている。

それもあって魔王も魔神も好き勝手に移動が出来ずにいるのだろうが、これ以上犠牲者を生まないためにも早く見つけたかった。

「お姉さん、分かったかも。」

急にシュティムの皮製のリストバンドからコリンの声がした。

「えっ?何?」

シュティムがもう一度聞き返す。

「お姉さん、見つかったわ。魔気探知に引っかかった。しかもかなり激しくね。戦闘かもよ、とりあえず座標送る。」

王宮にいるコリンからのいい知らせだった。

「こっちやわ。」

シュティムが南東を指差すと一気に全速力で全員走り出した。

龍の2体は大きく上体を起こして空へ羽ばたく。

その背中にグレンが跨り、シュティムから座標を聞くと一足先に飛び去る。

他の4人は羽ばたく龍の影に影犬が現れたのでその影犬に跨り少し遅れて後を追う。

もう位置さえわかれば隠密に探す必要が無くなったのだ。

「やばいな。くそっ一足遅かったか。」

グレンは顔が強張る。

移動する事2時間たったのだろうか、遠くからでもわかる程の砂嵐が吹き荒れていた。

魔気と魔気が激しくぶつかり合っていた。

その砂嵐の中をグレンは封印を解除して神気を全身に纏い突っ込む。

「はっ?」

神気を感じ取った砂嵐の中を激しく交わる三つの影が一気に散開する。

龍の全力の羽ばたきで砂嵐を抑える。

3人の姿が現れた。

それは、イラっとした顔の魔王ハキムと仮面を付けた魔族二人組だった。

「一番ダルいパターンやな。」

グレンは直ぐに状況を理解した。

グレンとハキムと仮面2人グループの正三角形をかたどった立ち位置でお互いを睨む。

「それは俺の台詞やわ。俺の牢獄壊して入ってきおって。」

魔王ハキムが殺気をグレンに突き刺す。

良く見ると仮面組はかなりボロボロな服装になっていた。

恐らく、後数時間遅れていたらハキムに狩られていたのであろう。

「そこの仮面組、魔神で間違えないよな?」

グレンは味方が到着するのを待ちながら両者を牽制する。

ハキムの言葉は無視して戦況の把握に全力で取り掛かった。

「・・・」

仮面組は無言で戦闘態勢を崩さない。

ピンチには違いないのだが、チャンスでもあったのだ。

ハキムと鬼神を戦わせて逃げる算段を考えいた。

「ごめん。遅れた。」

ネオが地面に倒れ込む。

10分も立たない内に全員が駆けつけた。

「ネオ、トワ、龍はハキム。私とセツナで、仮面。シュティムは封魔結界石を展開後にハキム側に。」

グレンは矢継ぎ早に指示を出す。

仮面組の魔気の乱れとハキムの魔気の乱れを観察していると、押している側のハキムの方が激しかった。

恐らく、魔神に遊ばれていると考えたグレンはハキム側にネオと規格外の竜人トワちゃんをハキムにぶつける決断をした。

この中で一番危険なのは仮面組だと直感が告げていた。

「はぁ、実につまらん。鬼神の娘よ。我らの邪魔をするのか?」

さっきまで無言を貫いていた仮面の右が白く左が黒い人物が口を開く。

「全くこれだから、面白い。地上に来た回があるでは無いか。極上の贄が集まってくれるなんて。」

右が黒、左が白の仮面が高笑いする。

2人の仮面から濃密な魔気が空間を支配する。

グレンの神気と激しくぶつかる。

バチバチと中和反応が魔気と神気の境界で発生していた。

「何回見ても、お前らの魔気って気持ち悪いな。てか、私より弱いくせにいきるなよ?」

グレンは魔気の練度からみて魔神と確信した。

しかし、やはり弱ってはいた。

ハキムより強いが本来の魔神から遠のいた強さだったのだ。

「はははっ。最高だな。」

ハキムは仮面組の全力を見て冷や汗が溢れた。

このまま戦っていたら狩られていたのは自分だと悟ったのだ。

魔神側が思った以上に力を取り戻していた事実により興奮する。

鬼神が魔神の相手をしてくれる事に感謝した、実に猫人と竜人とオマケの龍と人、格下も格下、勝てる戦闘に間違えは無かった。

前回はグレンが睨みを効かしたいたため、このクソ雑魚の半端者に一撃喰らってしまったが、グレンの神経が魔神にいっているこの場合、余裕しか無かった。

「皆んな、意思を一つに。魔族狩りの時間だ。」

グレンは大声で戦いの号令をかける。

コル砂漠での戦いが始まった瞬間であった。









毎年8月頃にベランダを見ると、いつの間にか空になっていた燕の巣。元気に旅立てたのかと、少し気になる。燕がやってくる時期はベランダを一切使わない。浴室乾燥機をフルに活用して乗り切る。燕の巣を観察したくもなるが、見るとストレスになるだろうから、鳴き声だけ聞いて過ごす毎日。ある日から鳴き声が聞こえなくなり1週間立ったので巣を覗くと空巣になっていた。彼らも旅立ちの時期があるように私にも沢山の旅立ちの時を思い出す。小学校の入学に続いて中学、高校、大学と節目の旅立ちは沢山ドキドキで溢れていた。ちょっぴりの不安を胸に新しい世界に踏み出す経験を大人になると減っている事に気がつく。次回、世界はきっと美しいをお送りします。では、またね。

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