意思を継ぐ者1
猫の王子物語で夜更かしをした皆んなが朝を迎えます。セツナとトワはネオの過去を知り、どう感じたのだろうか。いよいよ、物語は動き始めます。
〜王宮にやってきて二日目〜
「ふわぁー。おわよ。」
「皆さん、おはよう御座います。」
「んーっ。おはようやで!」
「チビども、おはようさん。」
「おはよう御座います。皆様方。」
それぞれが寝ぼけた顔で食堂に集まる。
1人、ぽつりと先に机に座っている、くしゃくしゃの茶色い髪色にすす汚れた白衣を着て、昨日の晩御飯を食べている青年がいた。
「あっ。おはよ。」
コリンも疲れ切った眠そうな顔で挨拶する。
「忘れてたー。ごめん。」
シュティムはネオに軽くお願いをしていたが、最終的には自分でもっていくつもりだった、コリンへ届ける晩御飯をすっかり忘れていた。
「兄貴、すまん。」
ネオも姉貴からお願いされてた話を思い出して謝る。
「ふわぁー。んっ?何の話?」
徹夜していたのだろうか、凄く眠そうな目で返事する。
「お姉ちゃん、晩御飯届けるつもりやったんよ。」
シュティムが説明する。
「飯時に下に行かなかった俺が悪いし、気にしとらんよ。じゃあ、おやすみ。」
コリンがとぼとぼと自分の部屋に帰っていく。
「確かにそれはそう!あっ、待ってさ。今日の予定は?」
シュティムはその返事に納得した。
「昼から、論文書く。そしてまた寝る。以上」
コリンはそう伝えてから、上へと姿を消した。
「おやすみ。さて、皆様方のご予定は?」
シュティムはコリンを見送る。
「俺は、昼から5階いってみたいな。」
セツナはシュティムにお願いをする。
「わたしは、グレンねぇと稽古!」
トワはグレンと目を合わせる。
「わしもトワと一緒かな。」
ネオは朝のミルクを飲みながら答える。
「という、訳らしいから。私も稽古やな。」
グレンは笑いながら、弟子達からのお願いを嬉しく快諾する。
「あっ!了解。セツナさん、じゃあ昼から一緒に5階行きましょう!部屋の案内もしたいですから。御三方は、広場好きに使って下さいな。ついでに、近衛騎士達にも稽古して下さると嬉しいです。」
シュティムは皆んなの返答を聞いて予定を纏めた。
〜王宮の5階〜
「入るよ!コリン。」
扉をノックするシュティム。
「どうぞ!」
コリンが内開きの扉を開いて招きいれる。
「すげぇー。」
そこはまるで、図書館といっても過言ではない数の書物が壁一面に詰まっていた。
セツナは見た事ない数々の書籍に心が躍る。
「えーっと。」
コリンは少し言葉につまる。
「セツナです。はじめまして。」
セツナは右手を差し出す。
「はじめまして、コリンです。ごめんね。部屋散らかっててさ。セツナは本好きなの?」
大きな机が4つもあり、全ての机の上に無造作に広げられた書物から図面に世界地図まで、奥の二つ机に数々の備品が転がっており正しくラボその物だった。
「少しじゃないです。本当に好きなんです。」
本棚をじっくりと眺めるセツナ。
「私は全く興味ないんだけどね。弟とは一つ違いだけど、性格も趣味も全く違うからびっくりよ。」
シュティムは見慣れた光景なのだろう、一切興味が無さそうな顔で見渡す。
「それを言ったら、僕らも一緒ですよ。」
セツナは5階の窓から広場を見下ろして、激しく土煙が上がる場所を見てで笑いながら答える。
「確かに。。」
シュティムも大笑いして一緒になって窓から眺める。
「セツナ君は何歳なの?」
コリンが尋ねる。
「15才ですよ!」
セツナはニコリと答える。
「めっちゃ大人よね。雰囲気がさ。しかも中々の雰囲気が柔らかいんよね。」
シュティムはお姉ちゃん目線でセツナを褒める。
「そうですか?」
「そうよ!あんたもそう思わない?」
「うんうん。ネオの15才と比べてたら更に感じる。」
コリンも2人の笑顔が写りながら頷く。
「あのー。話が変わるんですが、今これは何を研究してるんですか?」
セツナは興味深々で机に山積みにされた紙の山について尋ねる。
「あっ!これ?魔気と神気の融合、神魔属性が可能かどうかの研究をしてるんだ。魔気をなんとか中和して消すだけじゃなくて活用出来ないのか。そんな無謀な研究をしてる。」
コリンは遠くを見る様に書き殴った論文に触れる。
「もしかして、ネオのためですか?」
セツナはある事に気がつく。
「うん。そうだよ。本人には内緒だけどね。」
コリンは年下のセツナの鋭い質問に驚きが隠せなかった。
ネオは恐らくこのままでは、獣神になれない事をグレンから聞いたコリンはネオが持つ半分の神気と半分の憎しみが魔気に変わった時にそのまま魔気に飲まれて魔族へと変わる弟の姿を見たくなかった。
亡くなる直前に父親から託された思いを家族を守る為に出来る事は何か探していたある日、思いついたのだ。
ネオの心に神気と魔気が生まれた時に融合する事は出来ないのかと。
それこそが、
『天下神魔磁力構成理論』
全く異なる性質の物に磁力を作用させて、溶かし込むのでは無く引き付けて一つにする理論となっている。
全く実用化にはまだまだ程遠く研究を始めたばかりの赤ちゃん理論であった。
コリンにとってこれは父親の意思を継ぎ、家族をそして国を守るための究極の法術構築理論の完成系なのである。
「凄いですね。」
コリンからざっくりとした理論の概要を聞いてセツナは鳥肌が止まらなかった。
神族の間でも魔力を神力と融和させようと長い事研究されている。
しかし、融和すると神力と魔力は中性化反応により、純粋な真気としてその性質が変わってしまうのだ。
「正直、まだまだ駆け出し理論で検証段階。それでも不可能を可能にする。法術は俺の全てなんだ。俺はね、理論が組み合わさり新しい次元へと一つの発見で世界が変わる、そう言う法術が好きなんですよ。苦しい時間の方が遥かに長いですけどね。」
コリンの気持ちが入った言葉が溢れる。
「俺も好きです!法術は人間が編み出した芸術だと思ってます。」
セツナも言葉に熱が入る。
山積みの書類から幾つかの紙を抜き取り読み耽る。
『神気と魔気を構築して力を生み出す式は、神気は神術、魔気は魔術を通して神力と魔力が生み出される。力をもつ事により実世界に変化を与えるエネルギーが生まれる。この時に生み出された力は互いに反発しあう。この反発力に注目する事にした。真気は魔術にも神術にも法術にも活用出来る。この点から、人間の持つ真気を活用して少ない力であったとしても反発を引力に書き換えてしまう事は可能なのではないだろうか。ある測定データによると神力:魔力:真力の力学的比率は1:1:0.0001と算出されている。この式から神力と魔力は対となるエネルギーであると導ける。この対となり反発する原理を解明すれば、小さな力である真気をクッションに用いた引力として組み替めないだろうか。ここにコリンは『天下神魔磁力理論』の構築に向けた理論の検証を始める。』
何度も掻き消した後がある紙に努力の証があった。
「これ、本当に面白いですね。神力と魔力が反発する力のベクトルを真気を間に挟んで引力に変換してしまえば二つの力はくっつきますもんね。」
セツナは次々とコリンの論文を読み漁る。
「セツナも中々、変わってるな。こんな目がチカチカする文章に興味持つとは。2人とも正しくオタクやな。」
シュティムからしたらコリンもセツナも同じ部類の人間に見えた。
「シュティムさんこれは、革新的ですよ。神気と真気は反発しません。魔気も真気とは反発しないんです。但し神気と魔気だけだと反発する。そこに真気をクッションとして間に挟んで、魔気と神気を引きつける力を真気に持たせる事で異なる性質の物がくっつくんですよ!接着してしまうと反発が生まれるし、溶かし込むと中和反応が起きる。だけど真気が磁石となって二つの力を引きつけ続ければそれはもう一つの力ですよね!わかりますか?この画期的な発想!難しい所は真気は弱く簡単に神気や魔気に負けてどっちかの属性にすぐ変わってしまうので、難しいですが、これが可能になれば、歴史が変わります!」
セツナの熱弁が止まらなくなっていた。
「ごめん。全くわからん。意味がわからん。」
目がポツンとシュティムがなっている。
「セツナ、生まれて初めてかも、話が通じる子に出会えたの。一緒にやらないか?」
コリンはセツナの両手を強く握る。
「コリンさん、勿論です!」
セツナもコリンの握手に全力で応える。
「もっと簡単に説明するなら、神力をS極、魔力をS極とみなして、真力がN極としての役割を果たせばくっつきますね。神力も魔力も。」
セツナは色々な可能性が頭の中を駆け巡る。
「最初からそう言ってや。やっと理解した。コリンもセツナも説明が下手。」
シュティムも弟がずっと熱く語っていた中身を生まれてはじめて理解した瞬間だった。
「いつも、分かり易く、論理的に話してる筈なんだけど。。」
姉の言葉にコリンは少し悄気る。
ドスン、といきなりデカい地鳴りが起きる。
〜嘆きの庭にて〜
「よし!じゃあ体術やるか、お前ら。」
グレンは運動着に着替えて中庭で2人と向かい合う。
「お願いします!」
トワは軽く挨拶すると全力で拳に真気を纏わせて右ストレートを繰り出す。
それを片手で軽く受け流すグレン。
衝撃波が広がり砂埃が舞う。
「トワちゃん、痛いわ。これ、単に気を拳に溜めただけでこの威力なの?結界張らないと不味そうやな。」
グレンが思わず受けた手をプラプラさせて痛みを和らげる。
一瞬で中庭に法術で結界を張る。
『堅牢、キューブ、緩和、吸収』
発動、一番シンプルな結界が展開された。
「すごっ。わたしの強気な一撃なのに。」
トワは目を何回もパチクリする。
「よし、ほら2人同時に来なよ!」
クイクイッと片手を前に突き出してグレンは2人を挑発する。
その挑発を見た2人は右にトワと左にネオとわけれて挟み撃ちにしてグレンに襲いかかる。
拳と拳がぶつかり痛そうなバチコンっと音を立てて中庭に響きわたる。
グレンは最初に立った位置から動く事なく2人の攻撃を避ける。
それに気がついた2人は足も狙うががっちり足への攻撃だけガードして上半身への攻撃は綺麗に躱す。
「ほらほら、もっと2人の息を合わせないと。これだとバラバラよ?」
ネオとトワに鋭い一撃をカウンターとお見舞いする。
「イテッ。」
2人揃って後方に飛ばされて結界にぶつかる。
「まだまだやね。ほら、次。」
先程と同じ様に片手を突き出して2人を煽る。
「くやしいなっ。」
トワは結界を足場にして強く踏み込む。
『縮地』
グレンとの距離を一瞬で詰める。
『瞬歩』
ネオもトワの縮地に反応して詰め寄る。
お互いの気を感じて流れるようにグレンと拳を交える。
「そうそう、呼吸するように味方の気を感じて、殺意はフェンスで使いな。本命は虚をつく。」
グレンもじわじわと汗をかいてきた。
この短時間で、2人が恐ろしく息を合わせてくるのだ。
トワとネオは息が切れ始める。
「ダメよ!辛くても手を緩めたら。」
躊躇いなくグレンの一撃がまた2人を壁へと押し除ける。
「敵は、こっちがバテたら一瞬で刈り取ってくるよ、命を。」
グレンは具体的に分かり易く、体術を2人に叩き込む。
結界の外には近衛騎士が昼の訓練で集まり始めていた。
「流石、王子。また強くなりましたね。」
近衛騎士1。
「もう1人いる幼い尻尾付きの赤髪の女の子は誰?」
近衛騎士2。
「お客様らしいよ。王子の。」
近衛騎士3。
「なんか、不思議な感覚やね。ここまで強くなるとさ。泣き虫だった王子がここまで成長する姿見ちゃうとさ。」
近衛騎士4。
「お客様なんや。また、今日もしごきやな。泣けてくる。」
近衛騎士2。
「俺ら昔を知ってるから余計に感動するよな。」
近衛騎士1。
「ほら、準備するでお前ら。」
近衛騎士隊長。
結界の外で集まり始めた騎士達が談笑する。
重たそうな鎧を装備しながら、王子の話で盛り上がる。
この騎士達の佇まいからして風格があり、翡翠色をした統一感のある服装は、連帯感を与えていた。
コーネル王国が誇る近衛騎士は三部隊あり、その一部隊、『鉄壁の盾』のメンバー達であった。
チームカラーは緑色を色鮮やかにした翡翠が彼らのシンボルである。
「さぁ、行くか。地獄に。グレン様、結界解除頼みます!」
隊長は大声で呼び掛ける。
そこにはさっきまで談笑していた男達の姿は無かった。
皆、甲冑を被ると猛牛の様に闘志をむき出しにした姿で立っている。
彼らも前国王の意思を受け継いだ猛者達なのだ。
ともに戦場を駆け抜けていた、彼らには強い団結力と誓いがあった。
『我らは最強の盾。この命尽きるまで盾としていきる。』
2年前のあの日に誓いを立てたのだ。
二度あの惨劇を繰り返してはならないと固く誓い合った。
翡翠色には平和への祈りを込めて、コーネル王国の最後の砦であろうと心に誓った頼もしい仲間達である。
「あっ、お待たせ。今日はここまでやな。2人とも、今の感覚忘れるなよ!」
グレンは結界を解いて騎士達を中庭に入れる。
その後、全員は同じ様な生活を王宮で過ごした。
セツナはコリンと5階に引き篭もり、トワとネオはグレンに教えを乞う毎日を過ごした。
〜1週間後〜
いつもの様に中庭で稽古をしていたグレンの影に黒犬が現れた。
お手紙を携えて帰ってきたのだ。
グレンはすぐさま練習を切り上げて、食堂に集まる様に呼び掛ける。
グレンの手には赤い手紙、それは緊急の知らせであった。
一晩考えて、一気に書いてみました。窓を開けてビックリ、外は暑いですね。買い物出かける服装を薄くして出掛けました。もぅ、夏だって感じしませんか?私だけかな?笑。さて、無名の作品をここまで読んで下さってる皆様本当にありがとうございます♪やっぱり読者がいるって嬉しいですね。次回、梅雨入りなんて怖くないをお送りします。どうしても更新は土日に固まります、まったり更新にお付き合いの程宜しくお願い致します。では、またね!




