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Delighting World 創伝 Brave Hearts  作者: ゼル
第一幕
4/8

第一幕ーⅡ 橙色の竜人


―――




困っている時は人に尋ねて助けてもらうのが良いそうです。


でも、時々断られてしまうこともあるようです

そんな時は、どうしたらいいのでしょう。


私なら、他の人に尋ねると思います―――





―――





病に罹った大切な友を災害で失い、至らなかった自分の経験と知識、力を身につけて最高の魔王になることを決意した魔族と竜人の血を持つ青年、デーガ。


彼は冒険者となり立派に成長して戻ってくることを誓って、お供のアルーラと共に旅に出る。



やってきた冒険者たちの町、セントラルにてデーガとアルーラは早速熟練の冒険者、タイラーとリーアルと知り合い、冒険者ギルドのことや、このセントラルで過ごす上での豆知識や注意点など、さまざまのことを教えてもらった。

この出会いはデーガとアルーラにとってはとても大きなものとなり、冒険者同士の繋がりを感じるのだった。


そして2人はいざ、ギルドへと足を運ぶのだった。







これは、既に起こってしまった過去の物語・・・

変えようのない過去のハジマリを描く、創伝の物語だ。


----------------------


一幕 第2話


~緋色の竜人~


----------------------



セントラルは冒険者たちが集まる街。


ここを拠点として冒険者家業を行っている者が大半だ。

故にこの街は広く、端から端まで直線で歩いても30分以上はかかるほどである。


ここにあるものの大元は全てギルドが管理しているが、ギルド1つでこれだけの町全てを管理するのは難しいため、下請けとしていくつかの団体に振り分けて管理をしているのだという。


ギルド自体も、冒険者の思想に則りあまり厳しい規則は設けていないようで基本的には“契約を守らないことと、悪いことをしなければ自由にしていい”という思想のようだ。

デーガとアルーラもここで住処を借りてそこを拠点にすることになるだろう。


「デーガ様、こちらがギルドのようです。」

「ここかぁ。なんつーか…酒場にしか見えねぇけど…」


ギルドの前まで辿り着いたデーガとアルーラ。

ギルドは3階建てのかなり大きな建物だ。ぐるりと外観を回るだけでもそれなりの時間がかかりそうだ。

基本的には1階が受付や依頼の掲示板が張り出されており、2階では飲食スペースが解放されており、冒険を始める前の作戦会議で使われたり、冒険を終えた後の打ち上げなどで夜は大盛り上がりのようだ。3階は関係者以外は立ち入りできない従業員用のスペースと備品置き場になっているようだ。


従業員は約200人ほどがおり、24時間体制でローテーションをしているらしい。


だが、基本的に表に出て仕事をしている者はその中の3割程度であり、残りの7割は裏方だったり、表に出ている者たちの代理役だったりするようで、人を多めに雇うことで無理の無い運営体制を取れるようにしているらしい。

そもそもこの世界の冒険者人口はおおよそ1500人を超えているようで、それだけの冒険者を管理するのだから、従業員は多い方が良いのかもしれない。



「と、いうことなのですが、おわかりいただけましたか?デーガ様。」


「あー…まぁ、なんとなく。」

ここまでのことを全てタイラーとリーアル、それだけでなく他の冒険者たちからも聞き込みをしただけでなく、カフェの店員さんにまで情報を念入りに在るめていたアルーラはギルドに向かいながら詳しい詳細をデーガに説明していた。


デーガはあまりに一度に多くの情報をアルーラに教えてもらった為、とりあえず必要そうな情報だけ頭に入れて、それ以外は聞き流すことにした。


(全く、ホント生真面目だなぁコイツは…)

デーガはそう思いながらも、口には出さず…


「ま、色々調べてくれてサンキューな。」

と、礼を言う。

アルーラはそれを聞いても平静と「いえ、当然でございます。」と言うが…


(…ヨシ、デーガ様のお役に立てている。よくやったぞ私…!)

と、自分を内心褒めて気持ちを高めている。

それが身体の動きに現れており身体をゆらゆらと無表情ながらも揺らすアルーラを見てデーガは(まぁいいか)と呆れることはせず、アルーラの行いに感謝することにした。



「うし、じゃぁ早速ギルドに登録だ。」

「畏まりました。」


扉を率先して開けるアルーラ。


ギィと音を立てて扉を開けるとカランカランと来客を知らせるベルが鳴る。


「らっしゃい!」

「いらっしゃいませぇ」

「いらっしゃい!」


受付の人間の男性1名と女性2名が音に反応して声を出す。


「へぇ…ここがギルドかぁ。」

ギルドの中には大勢の冒険者たちが情報交換をしたり、受付で依頼を受けたり、終わった依頼に対する報酬を貰っていたりと、賑わっていた。

2階でも昼から酒を飲んでいる者から作戦会議をしている者、中には物品の取引をしている者たちまでさまざまであった。



「おーい、兄ちゃんたち!こっちだこっち!」


「ん?」


受付の男性がデーガとアルーラに声をかける。

その声に導かれて受付に行くデーガとアルーラ。


「ん…高い…」

受付の高さが高く、アルーラはなんとかカウンターに乗り出そうとする。

それに気が付いた従業員が高台を用意してくれ、アルーラは不本意ながらそこに立つ。


「あんたたち見ない顔だな。新人だろ。冒険者登録か?」

「あぁ、にしても凄いな…一目で分かったのかよ。」

「入り口から入って辺りをキョロキョロしてたらそりゃ分かるって。それに、一応冒険者たちの顔は大体覚えてる。どいつもこいつも個性が強い奴らばっかりだ。」

男性はデーガとアルーラを見つめ…


「魔族と魚人。あんたたちはなかなか珍しい。余計に分かっちまうよ。」

「へへ、そうか。さっきカフェで会ったやつらもそうだけど…マジでこの街は種族とか気にしないんだな。」

デーガとアルーラはどちらも少数民族だ。

特にかつて世界を混沌に陥れた魔族と、それに忠実で会った魚人の評判は最悪だった。


だが、勇者が消えた後の、現魔王ラドウと改心したカタストロフの善行は順調に世界に知られており、魔族と魚人の評判は徐々に良い方向へ向かっているようだ。



「そうだな、あんた…別の血も交じってるな?」

「そこまで分かんのかよ…」

「伊達に長い間ギルドマスターやってねぇよ。」

男性はふふんと誇らしげにする。


「ギルドマスターだって?あんたが?」

「おう。俺はこのギルドを仕切ってる“エアルド”!こっちが受付嬢の“マリー”と“リリー”だ。二人は姉妹なんだ。」


「あたしが姉のマリー!よろしく!」

「私が妹のリリーです。よろしくねぇ。」


ギルドマスターのエアルドは褐色肌の大柄の人間。

マリーは金髪のショートヘアー。ボーイッシュな性格のようだ。

そしてリリーはおしとやかな雰囲気の金髪のロングヘア―。


「俺はデーガ。こいつはアルーラだ!」

「デーガ様の忠実なる僕。アルーラと申す。」

「だっ!それやめろっての!!」

「事実ですから。」

「事実じゃねぇっての!!」



アルーラの自己紹介をなんとか訂正しながらデーガもなんとか自己紹介をする。


「ッハハ!なんだそりゃ!面白いなお前ら!」

「ワリィなコイツ変に真面目なんだよ。」


「小さいナイトさんなのねぇ。可愛いわ。」

「ムッ、小さいは余計だ。」

「あらあら、ごめんなさいねぇ。」

リリーの言葉にアルーラは反論する。


「ま、心意気は本物みたいだし、そういうことにしとこう!」

マリーはマリーでアルーラのことを評価しているようだ。


「さて、ここに来たってことは冒険者になりに来たんだろ?」

自己紹介を一通り終えたデーガたち。エアルドが話を元に戻し、冒険者登録用の契約書をデーガたちに見せる。


「この書類にサインをすれば晴れてお前たちも冒険者だ。まぁその前に規約を読んでもらうがな。」

デーガとアルーラにそれぞれ規約の書かれた容姿がリリーから渡される。


「基本的には規約さえ守っていれば何をしても良いんだ、まぁそんな難しいことは書いてはいない。」

デーガは普通に読んではいるが、アルーラはやはり一文一文を真剣に読んでる。


「なるほど…いくつか質問よろしいか。」

「お、おう。良いぜ。」

アルーラはエアルドに規約についての質問を始める。


「…あー、なぁマリー。多分長くなるからよ。少しギルドを見て回っても良いか?」

「あ、あぁ…構わないぜ。」

「うし、エアルドさん。ワリィ。」

「お、おう…」

デーガは事前にエアルドに謝罪しておき、ギルドを見て回ることにした。


「エアルド殿。まずは――――」


「あらあら~…」

「あ、あたしは別の仕事しとくよ。」

「私もそうしようかしらぁ~」


「あっ、おいお前らッ!」


そそくさと別の仕事を始めるマリーとリリー。

「頑張って、ギルドマスターさん。」

「お、おー…」(規約について質問してくるやつなんてほとんどいねぇからなぁ…そんな難しい事は書いてないはずなんだがなぁ…)





「まずはこの第一項のこの部分なのだが――――」



これは長くなりそうだ。

そう思ったエアルドであった。


----------------------



ギルドの掲示板を見るデーガ。

長方形で横幅3m、縦幅1.5mほどの大きな掲示板には多くの依頼書が張り付けてある。


それはカテゴリー別に分かれてあり、討伐依頼、収集依頼、探索依頼。その他・・・

綺麗に四等分されたなか、多くの冒険者たちが受ける依頼書を探している。


「…なるほどな…へぇ…難易度も書かれてるのか。親切なこって。ん?ランク…?ランクってなんだ?」

デーガは依頼書に書かれていたランクが気になった。

デーガが見た依頼書にはランクBと記載されている。


(何か位があるのか)

デーガは先ほどタイラーとリーアルに貰ったギルドカードを見た。


すると2人のカードの左上にランクと思われるアルファベットが記載されていた。2人の記載はCと書かれている。

(なるほど、新米はどこからか分からねぇが、依頼を多くこなせばランクアップする…みたいな仕組みなんだろうな…しっかし…依頼のカテゴリーにも結構数の差があるな…)


依頼書は4つのカテゴリーに分けられているが、最も多いのは討伐のカテゴリーだった。

主に魔物や害獣の討伐から虫の駆除などもここに含まれている。


そして、この中でも魔物は強い力を持っているものもいるため、高ランクの冒険者でも手を焼いていたりも珍しくないらしい。


「…ふ~ん…まぁ、魔物も生物の本能に従って生きてるからなァ…」(オヤジやカタストロフの権能はあくまで制御。本能を覆すことは生態に影響を与えるから良くない…的なこと言ってたな。)

魔物を統括できるラドウとカタストロフ。しかし、あくまでも魔物には魔物の生き方を尊重するようにしているため、時折生物たちがその影響を受けてしまうのは仕方のないことだ。

それに、その世界は弱肉強食。魔物とて、討伐されることもあれば、逆に魔物に返り討ちにされて死んでしまう冒険者もいる。


あくまで自然の一部として生きているに過ぎないのだ。




あとで依頼については詳しくアルーラが教えてくれるだろう。

そう思ったデーガは二階に上がる。


二階は飲食スペース。多くの冒険者たちが飲み食いをしている。

食事を提供するギルドの従業員たちは毎日忙しそうだ。


「へぇ…ここもかなり広い。」

興味深々で中の様子を見るデーガ。


「ここで仲間と酒を交わすのも面白そうだぜ。」

いつか、そんな時が来るかもしれない。デーガはワクワクしてつい笑みが零れる。

「さて…アルーラは……まーだ話してる。エアルドさんが何か気の毒になってきちまうなぁ…」


二階から受付の様子を確認するが、アルーラはまだエアルドを質問攻めしている。

それほど聞きたいことがあるようには思えないのだが、アルーラは真面目過ぎる。


ハァとため息をつくデーガだが…


「…すまない、少し聞きたいんだが…」

「んあ?」


デーガに声をかける者。デーガが声の方を向くと、そこにはデーガよりも背の高い大きい竜人が立っていた。

橙色とうしょくの鱗をしており、身長2m弱のデーガよりも20㎝程大きい。

顔にはいくつか傷があり、目つきも鋭い。だが、見た目は怖そうでも悪い人では無さそうだ。



「うおっ、でかっ。」

「…」

「あぁ、すまねぇ!つい。」

気に障ったかもとすぐに謝るデーガだが、竜人は「いや、当然の反応だし構わない。」と言う。

「えーと、悪者じゃなさそうだな。」

「…そう、見えるか?」

「いやいや、なんとなく分かるぜ。」


魔族であるデーガは人の負の感情に敏感だ。

かつての魔族は人々の負の心を至高として生きていたと言われている。その名残か、デーガは少し敏感なようだ。


「そうか…なら良かった。」

「で、えーと、俺に何の用だ?」

デーガは竜人に尋ねる。


「ウム…あの魚人は君の連れか?」

「あー…あぁ。そうだけど。」

“そうです”と言いたくはなかった。この後言われることはなんとなく分かっていたからだ。


「俺はギルドマスターに提出しなければならぬものがあるんだ。しかし…君の連れはいつまでも話が終わらないので困っているのだ。」

竜人はその紙をデーガに見せる。

それは、新人の登録書類だった。


「あんたも新人なのか。」

「ん、あぁ。君もそうなのだろう?」

「あぁ。アイツ話が長いからさ。終わるまで待ってたんだけど…あんたが困ってんならちょっとさっさと終わるように言っとくよ。」

「すまないな。」


デーガは橙色の竜人と一緒に受付に戻る。



―――


「で、あるからつまり―――」


「おい、アルーラ。」


「ム、どうかしましたかデーガ様?」


「どうかしましたかじゃねぇよ。いつまで質問してんだよ…」

デーガはやれやれとアルーラに伝える。

「ん?あぁグラド。書類描き終わったみてぇだな。」


「あぁ、これで登録完了で良いのだろう?」

「おう、ちょっと待ってな。」(た、助かったー…)


エアルドは内心アルーラから少し解放されてホッとしつつ、新規登録の手続きを始めた。



「デーガ様、もう少しで終わりますが故、もうしばらくお待ちいただけますか。」

「お待ちいただけますかじゃねぇっての。うげっ…なんだよそのメモだらけの紙…」

アルーラの書いていたメモには紙いっぱいに書かれたおぞましい量のメモ。


「デーガ様、このギルドの規約はとても興味深い。これでも結構端折りながら質問しているのですが…」

アルーラは嬉しそうに話すが…


「ったく…」

デーガは呆れて物も言えなかった。


「ええと、グラドだっけか。悪かったなうちの連れが。」

デーガはアルーラの代わりに竜人に謝罪する。


「あぁ…その何だか俺もすまない。君の連れの楽しそうな顔を見ると遮ってしまったことに申し訳なさを感じる。」

竜人グラドは申し訳なさそうにしている。


「良いって。全面的にコイツが悪い。」

「デーガ様、どういうことでしょうか。」

「後ろで人待たせてたの。」

「なんと、それは失礼した。」

アルーラはグラドに頭を下げて謝った。


「あ、いや…構わない。一応出すものは出せたのでな…」

素直過ぎるアルーラにも戸惑うグラド。


「待たせてすまないなグラド。これがお前のギルドカードだ。複製はあっちの複製機で出来るからな。新しい仲間や知り合いが出来たら交換すると良い。で、スタートはDランクから。依頼の達成履歴はギルドライブラに保管されるんでな。確認はあっちのライブラ確認用端末を使ってくれ。ランクアップの条件が達成できりゃ昇格依頼を受けられるからな。まぁあとは規約を読んでくれ。」

「あぁ、分かった。ありがとう。」

「頑張れよ!」


グラドはザッとした説明を聞き、ギルドカードを受け取った。


「さて、邪魔をしてしまってすまなかった。もう俺の用事は終わったが…列が出来ているようなので早く終えた方が良いと思う。」

グラドはそう言い、依頼掲示板の方へと歩いて行ってしまった。


「…よしアルーラ、もう質問は良いだろ。エアルドさん悪かったな。」

「あ、あぁ。っと、お前らのギルドカードも渡しておくぜ。一応基本的な説明はアルーラにしてあるからよ。詳しくはそっちから聞いてくれ。」

「あぁ、分かった。ありがとな。」

デーガはアルーラの分と2人分のギルドカードを受け取った。


「デーガ様、もう少し聞きたいことが。」

「いいから。後ろつっかえてんの。」

デーガはアルーラをつまんで列から外れた。


「ワリィ、エアルドさん!分かんないことあったらまた聞くからよ!」

「お、おう!ワリィな!頑張れよ!」

デーガはアルーラの質問攻めを打ち切って一端2階にあがることにした。

そして、自由スペースのあいている机を選んで座る。


----------------------



「デーガ様、ではまだ不十分なところもありますが説明しましょう。」

「あー…ざっくりでいいぞざっくりで。俺も後で規約は読んどくからよ…」


また話が長くなりそうだと思ったデーガはとりあえず簡単な話だけ聞くことにしたのだった…


―――



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