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戦国の片田順  作者: 弥一
戦国の片田順 2
629/645

ビスケー湾

 カトリック連合艦隊がイベリア半島の北西端を過ぎ、ビスケー湾に入る。


艦隊が通過した岬をカボ・フィニステレ(Cabo Finisterre)という。

 Cabo は岬、 Finisterre は『地の果て』という意味になる。


 古代のローマ人が、この岬を地の果てだと思っていたのだろう。


 Cabo はラテン語の caput から来ている。『頭』という意味だ。ここから派生して英語の cap=帽子、capital=首都=頭となる都市、などの単語が生まれた。


 カトリック連合艦隊の後を、『信濃丸』が追跡している。この船は艦隊の位置や針路をオルダニー島に報告し続けている。

 それだけではない。艦隊の隊形も報告していた。


 艦隊は広いビスケー湾に入ると横に広く展開したり、集まったりという運動を数回した。その長さは東西に二十海里かいり(三十六キロメートル)程にもなった。マストの上から見える視程ぎりぎりの距離まで展開しているようだ。

 それも、ただ横一線に並ぶのではない。左右が先行し、中央がへこんでいる。東洋の鶴翼かくよくの陣に似ている。

 その運動も『信濃丸』は報告している。




「この運動をどう思う」オルダニーの『金剛こんごう』艦上の片田が、艦長の金口かなぐち三郎に尋ねた。

 今、片田艦隊の全艦長が集まって作戦会議を行っていた


「おそらく、イギリス海峡に入った後に、この展開を行うのでしょう。そして四方八方からオルダニー島を囲み、一斉に上陸するのではないかと思われます」三郎が応えた。

「なるほど、そうだろうな」片田が同意した。


「だとすれば、どうすればいいと思う」片田がさらに尋ねる。

「展開されると面倒なことになります。魚雷艇の航続距離は三十海里(五十四キロメートル)程しかありませんし、発射点に到達するまでに時間もかかります」これは魚雷艇母艦『瑞鶴ずいかく』の艦長が言った。


 彼らは、魚雷艇のような小型船舶を運用するときのルールをいくつか定めていた。そのなかに『三分の一規則』というものがある。

 魚雷艇の行動範囲を航続距離の三分の一までにする、というものだ。航続距離が三十海里ならば、母艦からの行動範囲は十海里(十八キロメートル)まで、という決まりになる。

 これは往路十海里、復路十海里、予備が十海里、という考え方から決められた。海上では安全が第一だった。


「彼らはブレストに入港して最後の補給を行うでしょう」巡洋艦『加古かこ』艦長の村上雅房まさふさが言った。彼はオルダニーとジェルバ島の定期航路の護衛に従事していたので、このあたりの事情に詳しい。


「ブレストはブルターニュ最大の軍港です。ここで補給し、ブルターニュ海軍の艦艇をともなってくるでしょう。ブレストを過ぎると、あとはサン=マロかシェルブールですが、サン=マロは海賊の巣窟です。彼らが入港することはないでしょう。シェルブールだとオルダニーを通過してしまいます」雅房が説明した。


「やはり、ブレスト沖が戦場になるのか」そういう声が聞こえた。幾つか想定していた戦域のなかで、もっとも有力な案がブレスト沖だった。


 金口三郎が、机の上に広げられた海図にかがみこむ。定規を手にして、信濃丸が報告してきたガレー船艦隊の位置に十字を描く。そして、そこからブレスト港まで定規で直線を引いた。

「現在の天候が続くとして、敵艦隊の平均速度を、多めに見積もって四ノットとしましょう」


 そう言って、ディバイダーを取り上げる。円を描くコンパスに似た器具だが、両方の足が共に針になっている。

 四ノットに相当する幅に足を拡げた。

 その器具を十字点からブレストまで引いた線上を歩かせる。両方の針を交互に海図に刺して歩かせるのだ。


「早くて、四日後にブレスト港に到着しますな」

「では、我々は明後日の朝に出港ということだな」これは、『翔鶴しょうかく』の艦長が言った。

艦隊がブレストに入港する直前に攻撃を開始しよう、ということだ。


「そうなりますな」と『金剛』艦長が言う。


 皆が片田順の方を見る。


「では、明後日の朝五時に出撃とする」片田が言った。


 この作品は、人力で作成しております。


と、唐突に書いてしまいましたが、「生成AI]で文章を作成しているのではない、ということです。


 感想を寄せていただいた方に、「生成AIの設定やチューニングを修正したほうがいいかもしれない」と教えていただきました。

 この読者の方は、本作品を好んでいただいていて、善意から申し出ていただきました。


 作者としては、自分の不備を指摘していただくのは、大変ありがたいのです。

 改良ができるからです。

 ご指摘に従って、文章を整理するなど、今後とも改善に努めていきたいと思っています。


 ただ、本作品の本文は『手書き』で書いております。


「生成AI」は調査と校正には使用していますが、まだ小説作品を作成させるレベルにはなっていません。


 この作品は、イギリスのロックバンド、クイーンの初期のアルバム・クレジット風に言うと、『 ノー・シンセサイザー』です(ねっ、こんなこと生成AIには書けないでしょ。日本語Wikiの記事「クイーン(バンド)」参照)。



 たとえば、調査では、こんなふうに使います。


>憲法(基本法)の概念を説明するラテン語の格言を10個列挙し、ラテン文と日本語文で併記せよ。


などと依頼します。そして、出力された格言が、

・実在する格言か(Google 検索)

・エラスムスの格言集に掲載されているか(格言集から)

・ラテン語文章として正しいか

  >Google翻訳で、英文、日本文に翻訳する。

  >ChatGPT自身にラテン語の品詞分解をさせ、格や動詞活用をチェックさせる

   (ChatGPTは、別の視点から確認させると、自分の過ちに気付くことがある)


などの裏を取ります。


 また、校正については、以下のプロンプトを使用しています。



●文書校正プロンプト

>これから私が書いた小説の一部をアップします。誤字脱字や事実誤認がないかどうか、わかる範囲で校正が必要な部分を箇条書きで指摘してください。

 校正前と校正案を列記してください。


 漢字の後に書かれた()内のひらがな・カタカナは、ふりがなです。

また、この小説は一五〇六年頃を舞台にした歴史改変小説です。

●プロンプト、ここまで。


です。

 今回アップした部分については、以下のような指摘がChatGPTさんから指摘されています。

 一部を紹介します。


4. 「金口三郎が机の上に広げられた海図にかがみこむ。」


軽微ですが 読点が必要。


校正前:金口三郎が机の上に広げられた海図にかがみこむ。

校正案:金口三郎が、机の上に広げられた海図にかがみこむ。


5. 「四ノット」表記は正しいが、1506年段階で“ノット”という表現は歴史改変に基づく設定か?


1506年には「ノット(kn)」という単位はまだ存在しない(17世紀以降)。

ただし歴史改変世界なら全く問題なし。


● 誤りではない(歴史改変設定であるため)


ただし、史実に厳密な読者向けには脚注的に意識しておくと良い。


6. 「四日後にブレストに到着しますな」 → 到達時刻の推算は妥当


平均4ノットでビスケー湾~ブレストまでの距離を歩かせている描写は整合しているので問題なし。


ただし、**4ノットはガレー船としてはかなり速め(追い風・帆走時の速度)**で、

「多めに見積もって」という描写があるため矛盾なし。


 生成AIは、この作品の第一部が終わった後に出てきました。これのおかげで、以後の執筆が格段に楽になったのですが、まだ本文自体は『手書き』で書かなければなりません。


『生成AI』は、とても便利なので、いつか機会があれば、このあたりのことをまとめてみたいと思っています。

 たぶん、本編の完了後ですが。




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― 新着の感想 ―
いつも楽しく読んでいます。AIの使い方も教えてもらえて、二度面白いです。 今後も楽しみにしています。
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