表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦国の片田順  作者: 弥一
戦国の片田順
58/634

村の自治

たくさん誤字報告ありがとうございます。

あまりの誤字の多さにへこたれそうです。


特に455●●●様、るびの範囲を指定する縦棒を教えてくださり、

ありがとうございます。こんな機能があったのですね。


 片田順は、片田村にいる。石英丸せきえいまる達に来てほしいと頼まれたのだった。

「石英丸が悪いんじゃないよ、忙しすぎるんだ。石英丸は、よく飢饉の間を乗り切ったと思うよ」茸丸たけまるが言った。

「そうだよ、もう一人では無理なんだよ」犬丸も言う。

「そういってくれると、助かる」石英丸が言った。

 石英丸達はなんとか飢饉を乗り切ったが、様々なことを後回しにしてきたつけが表面化していた。

 食堂など、いくつかの建物は雨漏りがするようになっていた。道はわだちが深くなり、通行が不便になっていた。いたるところ雑草が生え放題だった。

「では、石英丸の仕事を手分けするしかないな」片田が言う。

「そうね、石英丸のやっていることを表にしてみましょう」『いと』が言って、筆をとる。


「けっこう、あるわね」いとが言う。

 かれらは、石英丸の仕事を分類した。財務、医療、教育、交通、保安、給食等々である。

「このなかで、一番きついのは、なに」『あや』が言った。

「きついの、か。体力的にはそれほどでもないけど、金の問題が一番気をつかうかな」

「じゃあ、それ、私がやるわ」あやが立候補した。

「お、えらいなぁ」鍛冶丸かじまるが言う。

「なにいってるの、財布の紐握っているのが、いちばん強いのよ」あやが答えた。

「みんな、あやが財務担当でいいかな」石英丸がみんなの意見を聞く。異論はなかった。

「だったら、わたしが教育担当をやろうかな」いとが言う。

「いとは、子供に教えるの上手だからな」これも異論がなかった。

「医療に関しては、法華寺から来た茜丸がいいだろう」片田が言う。茜丸を知らない者が多かったが、ふうが、茜丸なら大丈夫だといったので、片田が本人に打診することにした。

「ふうは土木交通だろうな」

「それは、ふうしかいないな」これもすんなりと決まった。

 産業分野では、茸丸が継続してシイタケ製造を担当する。眼鏡に代わって売れ筋になりつつある硫安は鍛冶丸が兼務する。鍛冶丸は眼鏡や硫安が好きというわけではないが、それらを作る機械が好きだった。

 村民食堂の経営は、『きび』という娘がいいだろう、と石英丸が推薦した。

「きびは経営が出来ると思う、飢饉のあいだの食堂の業務を助けてもらっていた」

 石英丸が言うんであれば大丈夫だろうということになった。


「それぞれは、石英丸から、自分の担当の部分のやり方を教えてもらうんだ。そしてそれを書き留めておくことが大事だ」片田が言った。彼らが書き留めたものが、この村の法律の基になっていくことを片田は理解していた。

「やり方を変えたり、新しいことを始めるときには、石英丸に相談することだ。とくに重要なことを決める時には、みんなで集まって相談して決めるように」

「それと保安については、難しい。しばらく石英丸が続けてくれないか」

 石英丸はこれまで自検断じけんだんを進めていた。十市遠清とおちとおきよはそれを認めていた。自検断とは、村の中で起こった問題について、領主に頼らず、村内で判断して解決するというものだ。片田も、いずれ村が警察権、自衛権をもたなければならないと思っていたが、まだどのようにしたらいいのか決めかねていた。


「だいたいきまったな」自分が仕切ったかのように犬丸が言って、皿の煎餅せんべいをかじった。

 この煎餅は、飢饉の二年間片田村の主食だった雑穀せんべいではない。米の餅を薄く延ばし、火であぶって固く焼き、醤油を付けたものだ。彼らは菓子として食べているが、野戦食や保存食にもなる。今年の秋、米が豊作だったので、大量に作っていた。

 片田は、この煎餅を嶽山城だけやまじょうで籠城する畠山義就よしひろに売っていた。義就からは、いいものを作ってくれたという感状とともに、大量の注文が来た。もっと安くしろ、とも言ってきた。

 煎餅のようなものは、昔からあった。塩を混ぜて兵糧とすることもしていたと思われる。片田達の煎餅は、醤油をつけることにより香ばしくなっているところが新しかった。重量が軽いのも輸送に便利だった。

 片田村で大量に製造し、樽に詰めて、越智家栄いえひでに送った。家栄は、自領から和泉山脈を越えて義就に送っていた。


「だいたい決まったな、じゃないわよ、犬丸。あんた何するのよ」ふうが言った。

「え、俺」

「そうよ、もう十七になったんでしょ」

「え、ええと、ええと、何しましょう」犬丸が石英丸の方を向く。

「そうだなぁ。残った仕事で、手のかかるものといえば、自警団かな。あれは時間を取られる」石英丸が言う。

「じゃあ、犬丸、それをやりなさいよ」ふう、あやが言う。

「自警団かぁ。まあいいか。それやるよ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ