表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦国の片田順  作者: 弥一
戦国の片田順 2
560/611

座標系

『かぞえ』が白い紙を一枚取り出して、そこに縦横に直線を引く。右と上に矢印を書き加え、それぞれ、xとyと書いた。デカルト座標である。

「『かぞえ』師匠ししょう、これは何ですか」

「これは、xy座標というものよ」

「なんに使うのでありますか」

「これから教える、ありとあらゆるものに使います。しっかり使い方を覚えてください」

「わかりました、師匠マエストロ白髯はくぜんのレオナルド・ダ・ヴィンチが言った。


 彼は銀丸ギンマルから、日本に『かぞえ』という飛行機師匠マエストロが住んでいるということを聞き、はるばる商船に乗って日本にやって来た。ビザも何もない時代なので、本人が決意すれば来ることができる。

 そして、淡路島の『かぞえ』の家に居候いそうろうして、『かぞえ』の教えを受けていた。

『かぞえ』五十四歳、レオナルド五十三歳だった。


 レオナルドは、訪日を決意した時から、日本語を学んでいる。


「この、xy座標を使うと、幾何だけでは解けなかった問題が解けるようになります」

「なるほど」

「この座標を実際の平面や立体に見立てると、飛行機の位置、移動などを記述することができるのです」

「それで、飛行機の運動を学ぶために、これが必要になるのですね」

「そうです。先は少し長いですが」


『かぞえ』がレオナルドと話してみると、彼の数学の知識は幾何学が中心だった。それと算術、初歩的な代数学だった。これは彼の手稿コーデックスを見ると想像できる。


 なので、まず座標系、それからベクトルと『行列』、微積分びせきぶん。そこまで行けば、運動方程式を教えることが出来る。力学をマスターすれば、やっと航空力学に入ることができる。


「このx軸とy軸が交わっているところを原点げんてんといいます。オーと名前を付けることにします。両方の軸には、このように目盛りをつけることにします」

「『かぞえ』師匠も、我々の文字を使うんですね」

「そうね、なんで、こういう文字を使うのかは、知らないわ。それより、この原点Oを中心にして、半径3の円を描くことにします」

「はい」

「そして、x軸上の目盛り5のところにピーという点を打つことにします。P点は(5,0)と書くこともできます。x軸が5,y軸が0のところにありますからね。これを成分表示といいます」

「わかります」

「で、このP点から円に接線を引きます」

「幾何学の問題ということですね」

「そうです。で、この接線と円が接する、接点キューの位置を求めなさい。これが問題です」

「幾何学っぽくないですね。すぐに分かるのはPQの長さが4だということですが、位置となると、はて。やはり成分表示するのですか」

「そうです」

「さっぱり、わかりませんな」

「わからなくともいいのです。いままでのあなたのやり方とまったく異なるのですから。では、私が解いて見せましょう」

「お願いします」


挿絵(By みてみん)


「まず、原点Oを中心とした円上の全ての点は、『三平方の定理』が成立しますから、こうなります」


x^2 + y^2 = 3^2 (1)


x^2 は『xの二乗』である。


「いま、仮に接点を(X,Y)と仮に置くとします。このようなやり方を変数といいます」

「変な数字ですか」

「決まっていない数字、ぐらいの意味かしら。そうすると、接点はこうなりますね」


Xx + Yy =9 (2)


「本当はXX+YY=9なのですが、片側だけ小文字にしておきます。『接線の点型式』と呼んでいます」

「つぎに、直線は y = ax + b と書くことができます。xを指定すれば、必ずyが決定されるということです。a を『傾き』、 b を『y切片』と言います。ほら、xがゼロの時、y軸上にあるでしょ。だからy切片」


「円も直線も数式で表現できる、ということですな。これは、すごい」

「そうよ、すごいことなのよ」

「この接線はPを通っているので(5,0)という数字の組を入れることが出来ます」


0 = a5 +b ⇒ a= -b/5


「なので、直線の式はこうなりますね」


y = -b/5x + b


「なるほど、でもbはどうしましょう」

「bのことは、一旦置いておきましょう。それよりも、さっきの(2)式にもどりましょう」

「この式は、もともとは円上の点を満たす条件から出て来た式です」

「右が9ですからね」

「でも、接点ですから、直線の条件も満たすことになります」

「そういうことですか」

「なので、この式のx,yに(5,0)を入れても、式は成立することになります」


X5 + Y0 = 9


「ほら、X が 9/5になりました。(1)式にいれて計算するとYは12/5になります」

「答えは、(9/5, 12/5)です」


「う~む。そういうことですか。なんかたぶらかされたみたいです」レオナルド、よく『誑かされる』なんて言葉、知っていたな。どこで覚えたんだ。


「これが、幾何学の問題を代数で解く、ということですか」

「そうです。数学には色々な分野がありますが、うまく応用すると、相互に活用できるという、もっとも解りやすい例になります」『かぞえ』が言った。

「なんか、わかったような、わからないような、ですが。すごいことのようですね」

「私も子供の頃、座標系の意味に気付いた時にはドキドキしましたよ」そういって『かぞえ』が笑った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
来ちゃったかぁ(^_^;) そしてやっぱり"飛ぶ"よい"作る"ほうなんですね
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ