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戦国の片田順  作者: 弥一
戦国の片田順
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義就、都落ち

康正二年(一四五六年)十市城の戦い(これは史実ではない)。

康正三年(一四五七年)山城木津侵攻

長禄二年(一四五八年)石清水八幡宮の神人討伐。

 これまで畠山義就よしひろは三度続けて、足利義政のめいであると詐称して、他国を攻めていた。

 義政にしてみれば、いい迷惑である。彼は、義就が言う座の廃止を支持している。寺社は課税しにくいからだ。寺社は僧兵、衆徒、国人などの実力組織を持っていて、課税を強化しようとすると実力を行使してくる。従って寺社が儲けても、幕府の懐は潤わない。そういう意味で、義政は座の廃止を支持している。

 支持はしているが、影ながら、と言ったはずだ。それを、いきなりわしを矢面に立たせるとはなにごとだ。

 いま、義政の目の前にいるのは石清水の使者である。場所は昨年十一月に改築がなった、花の御所である。使者の背後には、寝殿造り様の池泉庭園が広がっている。

 義政も源氏物語を好んでいた。庭園は光源氏の六条院春の町を模している。

使者は二点を義政に要求していた。

 ひとつは、淀川を登るすべての荏胡麻油運上船を石清水の管理下に置くこと。もうひとつは、石清水配下以外の商人が荏胡麻油を販売することを禁止することである。

 そんなことできるわけない、と義政は思う。

「これが認めていただけぬ、ということであれば、やはり義就の言っていることは本当である、と考えなければなりません」

 また、無理なことを言う。

 しかし、義政は、その場がしのげればいい、と考える男であった。

「わかった、そのように下知する。しかし幕府がそれを強制させることはできぬ。罰則をもうけることもできない」

 なにを言っているかよくわからないが、石清水の使者は納得したらしく、引き揚げていった。石清水の神人たちの考える世間も、案外狭いのかもしれない。

 あるいは将軍が言ったという事実さえあれば、現場では私的制裁で解決できると思っているのかもしれない。


 義政は義就のことを見限ろうとは思わなかったが、すこし懲らしめなければいけない、と考えた。これはそのとおりであろう。義就はやりすぎている。しかし義政の選んだ方法は間違っていた。その方法は、禍根を残すものであった。すなわち、義就と畠山の家督を争っていた弥三郎派を復権させたのである。弥三郎派と言っても、弥三郎自身は前年に亡くなっており、弥三郎派の中心は、その弟の政長まさながであった。


 長禄四年九月、足利義政は義就に対し、政長に畠山の家督を譲るように命じる。大名の家督に対する人事権は将軍にあったからだ。加えて天皇の綸旨を得て、義就は朝敵となった。義就は、政長らと野戦を戦うが敗北し、年末には嶽山城だけやまじょうに籠城することとなった。

 嶽山城は、ふうが堰を作った石川の上流にある。




 片田、石之垣太夫いしのがきだゆう、ふうたちはあわてた。彼らの運河工事はどうなるのか。

 まず太夫が嶽山城の義就の所に行った。義就が言うには、今いそがしいので相手が出来ん。金もない、とのことだった。それはそうであろうが、運河工事はどうしましょう、と尋ねると、そちらの好きにしてよい、といわれたと太夫が言う。

 河内平野には、政長軍、細川軍、筒井などの大和国民衆の軍などがやってきていた。

 片田は十市播磨守に頼り、筒井から畠山政長とたどり、面会を許された。片田が、彼らのやっている工事の説明をした。

「次郎(義就)のやつめ、そんなことをやっていたのか。高屋城の件といい、好き放題やりおって」政長が言った。

「しかし、これは便利なもののようじゃ、工事を続けることは許す」しかし金はない、と付け加えた。

片田はかしこまって、退出した。義就による工事区間の土地整理は終わっていたので、当面は片田の金で工事を続けることにした。


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