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戦国の片田順  作者: 弥一
戦国の片田順 2
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ヴァスコ・ダ・ガマ

 一四九七年七月八日、ヴァスコ・ダ・ガマの四隻の艦隊がリスボンを出港する。


 四隻は、以下の通り。

・サン・ガブリエル キャラック船 一〇〇~一二〇トン 旗艦。ガマ座乗。

・サン・ラファエル サン・ガブリエルと同型艦。

・ペリオ キャラベル船 排水量はキャラックの半分程度。 偵察用。

・貨物船 キャラック船 食料輸送船。後に解体。


・それにバルトロメウ・ディアスの乗った随伴船がヴェルデ岬まで同行する。


 二つ不思議なことがある。


 なぜ、キャラック二隻を中心とした艦隊編成なのか。

 コロンプスは、ちいさなキャラベルを好んだ。ディアスの喜望峰探検もキャラベルだった。これについては、インドまでの長い航海には、キャラベルのような小さな船では無理だと判断されたのだといわれている。

 ほかならぬ、ディアス自身が、サン・ガブリエル、サン・ラファエルの建造を指揮した。


 なぜ、バルトロメウ・ディアス(バーソロミュー・ディアス)が指揮官ではなかったのか。彼の生年は不明だが、まだ四十代であったと思われる。ガマの新造艦の様子を確認するため、ヴェルデ岬まで航海に随伴ずいはんしているので、健康に問題もなかったはずだ。


インドまで行く艦隊の司令官は、外交官でもなければならなかった。

 ディアスは三代続く冒険航海者の家系だったが、ディアスには外交の才能がない、そうポルトガル王が判断したのかもしれない。

 それにしても、それまで無名であったガマが選ばれた。それには何かの理由があったのだろう。




 ガマの艦隊はカナリア諸島付近で、濃霧におおわれ、霧が晴れた時には、お互いの姿を見失っていた。

 このようなときには、カーボベルデ諸島に集合することになっている。


 彼らの航海の、もっとも信頼できる資料は、サン・ラファエル号に乗っていた航海日誌係の記録だ。彼の名前は知られていない。


 一週間後、サン・ラファエルがカーボベルデの島を水平線に発見する。一時間後に同島に向かうペリオ号と物資輸送船があらわれた。三隻が集合したときに、風が止む。そして彼らは四日間もなぎの中でただよった。

 七月二十六日の朝、風が戻ってきた。そして、彼らの前方にサン・ガブリエル号を発見する。風はまだサン・ガブリエルまでは届いていないようだ。

 五隻が集合し、ラッパを鳴らし、大砲を発射して再会を祝う。


 カーボベルデ諸島で最大の島、サンティアゴ島の砂浜に錨を下ろし、水や薪を補給する。現在の同島のプライアの港があるあたりだ。


「南に船が見えます」サン・ラファエルの主檣メイン・マスト上の見張りが甲板に向けて叫ぶ。

「どこの船か、わかるか」甲板から士官が叫び返す。どこの国の船かわかるか、と言う意味だ。このあたりを航行しているならば、ポルトガルの船でなければならない。スペイン船は、カナリア諸島以北か、あるいはもっと西にいなければならない。

「それが、いままで見たことがないような船です。それに」

「それに、なんだ」

「どうも、火災を起こしているようです、船の上に黒い煙が出ています」

「なんだと、火災だと? 救助の必要があるが、今は風が悪い。注意して監視を続けろ」士官がそう言って、艦長に報告しにいった。南風だった。


「それにしても、火災をおこしているわりには、平然と進んでいくんだよな」見張りが独り言をつぶやく。


 彼らの停泊する砂浜の十一キロメートル西に、日本の港があった。石炭集積所で、工作船『明石』の母港でもあった。


 黒煙を吐く船は、翌日も見られた。その日は、三隻だった。どうも、火事ではないようだ。


 ガマ達が集合して、相談する。

「西になにがあるのか、調べてみる必要があるのではないか」偵察用キャラベル船、ペリオの艦長が言った。

「我々の任務は、インド航路の発見だ。寄り道をしている余裕はない」ガマが言う。

「では、ヴェルデ岬まで、随伴した帰路に私が調べてみようと思うが、どうだろう」ディアスが言った。

「それがいいだろう」ガマが言う。

「それにしても、どの船も黒煙を吐いている、というのはどういうことだ」

「さぁ、わからんな。なので、調べてみなければならない」と、ディアス。




 五隻が次の停泊地、ヴェルデ岬を目指して出港する。四隻はそこから南下し、ディアスの船だけがカーボベルデに戻ろうとしたが、ディアスにとっては幸運なことに、強いスコールに巻き込まれ、主下桁メインヤードと帆が破損する。彼はそのままリスボンに戻った。



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