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戦国の片田順  作者: 弥一
戦国の片田順
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騒乱扇動

私の勘違いで、

東軍の、細川常有さんと、細川持久さんが、西軍の軍議に参加していました。

お詫びして訂正いたします。


 京都みやこに入った片田軍は、二条まで北上し、東西に長く布陣した。中心は今の二条城のあたりである。中心奥に多連装噴進砲を横一線に配置し、東西端は騎兵隊で固めている。

 畠山義就よしひろなど、南側から東軍を囲む西軍兵の裏に配置したような形になる。


 片田軍から東西軍に使者が送られた。

 東軍に対しては、以下のようなことが伝えられた。

 この度、思いもかけず左兵衛佐さひょうえのすけを拝命し、内裏だいり守護のやくにつくことになった。ついては細川武蔵守むさしのかみ様と東軍諸兵は内裏様がします室町第より退去されよ。退去後の内裏の守護は片田軍が行う。

 東軍の移動中、および移動後に西軍が東軍に対して攻撃を行った場合、片田軍は戦闘が停止されるよう、両者の前線を攻撃することとする。

 貴方が退去されたあとに、別途東西両軍と片田軍の三者間で和平のための会談を開くことを提案する。

 なお、当軍の武威ぶいを示すために、明日みょうにちうまの刻に船岡山ふなおかやま城を破壊するので、その様子をよく見ておくように勧める。


 西軍に向かった使者は、このようなことを述べた。


 このたびの片田軍上洛の目的は内裏(天皇)様、仙洞せんとう(上皇)様の保護にある。この目的を達するために、片田軍は東西両軍のいくさしずめることを意図する。

 西軍へのお味方のために上洛したのではないことに留意せられたい。

 東軍には、別途室町第からの退去を依頼している。移動した東軍への攻撃を控えられよ。

 移動中及び移動後の東軍に対し、西軍が攻撃を行った場合、片田軍は両軍の前線に対して攻撃を行う旨、当方より東軍にも通達している。

 なお、当方は先に述べた目的と意図を遂行する手段をゆうしている。

 そのことを明らかにするため、明日午の刻に船岡山城を破壊する。

 ついては、その時までに船岡山城を放棄し、周囲三町(約三百六十メートル)から退去することを勧告する。

 貴方より回答が無い場合にも攻撃は行われるが、当方は兵が失われることを望んでいない。勧告に従うことを強く勧める。

 貴方が東軍を攻撃しないと確約した場合、別途東西両軍と片田軍の三者で和平のための会談を開催することを別途提案する。


「なんだ、これは。片田商店は味方じゃなかったのか」山名宗全が畠山義就よしひろに言った。

「うむ。片田が海上を閉塞してくれたおかげで京都での戦いが有利になったのは確かだ。しかし、内裏より左兵衛佐に任命されたので、内裏を守らなければならなくなった。ついては戦を終わらせるために上洛した、と言っているようだ。筋は通っている」義就が言う。

「左兵衛佐って、今時いまどき時代錯誤さくごではないか」

「それは、わしもそう思う」

「戦をやるのなら、京都以外でやれ、ということか」朝倉孝景たかかげが言う。

「それは、わからんが、片田の言っているところからすると、そうともとれるな」


「それと、この船岡山の件はなんだ。片田の軍は南におるではないか。船岡山といえば、わが軍の北にある。明日までの間に、西に大きく回り込む、とでも言うのか」備前びぜん守護の山名教之のりゆきが言った。船岡山城は彼と丹後たんご守護、一色義直よしなおが急ぎ築いたものだった。

「すでに山腹に堀と土塁どるいを回している。そう簡単に破壊できるものではない」一色義直も言った。


「片田軍は、火薬を用いた砲というものを持っておる。遠く離れた所を攻撃する手段だ。わしも一度やられたことがある」畠山義就が言った。

「あれから、随分と経っている。より強力なものを作っているのかもしれない。片田をあなどってはいけない」

 西軍諸将は、半信半疑だった。


 室町御所では、こんな会話があった。

「船岡山、とはまた、片田の陣からは随分と離れた所を指定してきたが、どういうつもりなのであろう」足利義政が言った。

「このあいだの、あの砲のようなものでしょうか」細川勝元が言う。

「いや、それはそうではない」和泉国を失った細川常有つねありが否定した。

「そうだ、あの地獄車ぢごくぐるまが来る」細川持久もちひさが同意する。

「地獄車って、なんじゃ」

「あれを説明するのは難しい。岸和田城もあれにやられた」

火箭かせんのようなものだ。もっと大きいがの」

「彼方から白い煙を吐き出しながら飛んできて、地面に落ちると爆発する」

「爆発だけではなく、油をまき散らして燃える火箭もある。にわかか造りの山砦さんさいなど、ひとたまりも無いわ」二人がかわるがわる説明した。

常有と持久以外には、あれを自分の目で見た者はいない。皆、その恐ろしさに気づいていなかった。




 その夜、九条の隠れ家から藤林友保ともやすが片田の陣に忍んできた。二人は人を遠ざけ、なにやら小声で話していた。

 わずかに会話が漏れてくる。

 忍びの藤林の声は聞き取れないように訓練されていたが、片田の声だけは聞こえた。

「堺の大黒屋惣兵衛さんのところに片田銀で、四万貫ある。それを持って西国に向かえ」

「藤林殿の手下が工作しておいたところに銭を投入する時が来た……」

中途半端ちゅうとはんぱではいけない、いけると思ったら銭を捨てるつもりで渡してくれ」

「大内ならば、筑前の少弐しょうに、周防の大内道頓どうとん、山名のところは新領の美作みまさか備後びんごあたりが不安定だ。細川の備中びっちゅう新見庄にいみしょうも昨年あたりから騒ぎが大きくなっている。……出雲でも一揆が始まっている。松田や三沢などの国人にもたっぷり渡してほしい」


 四万貫というと、一文七十五円としたときに三十億円相当になる莫大な金額である。

 片田は、明石元二郎もとじろうという将校を知っていた。日露戦争中に在欧し、ロシアの反政府勢力に資金提供するなどの諜報ちょうほう扇動せんどう活動を行った軍人であった。

 片田は、これにならったのであろう。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 一、既にある律令、式目は廃止する と宣言しといて、律令に定められた官職貰うのはカッコよく無いな
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