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戦国の片田順  作者: 弥一
戦国の片田順
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第二次筒井城の戦い

少し前の事になる。

 犬丸が水越みずこし峠で金剛山を通過する経路を見つけた時、堺の片田順に向けて片田村への援軍を要請している。率いる将は小山朝基あさもとさんだ。

 その時に堺が送り出したのは、銃歩兵三千名と砲兵五百名であった。北畠軍が消滅した今となっては多すぎる派兵である。

 砲を登らせるには、水越峠は険しすぎた。そこで砲兵は、砲なしで移動して来て、片田村で新しい砲を補充した。


 石英丸達は、この兵を使って大和平野の箸尾はしお筒井つついを排除し、亀の瀬運河の交通を確保しようとしていた。


「火薬と小銃弾、榴弾は豊富に在庫があるが、迫撃砲弾や多連装砲の焼夷弾などは在庫がほとんど無い」村長代理の石英丸せきえいまるが言った。

「箸尾城は規模が小さい、臼砲による投石攻撃で十分だろう。だが、筒井城は広い。迫撃砲の焼夷弾を優先してもらえないだろうか」小山朝基が言う。

「油が不足しているのです。亀の瀬運河が閉鎖されたので、木津きづ川経由でわずかしか入って来ません」

「堺でも、尼崎でも京都に持ち込めない油が余っているというのに、大和では油が無いのか」朝基さんが言う。


「伊勢の北畠教具のりとも様に頼んでみたらどうだろう」茸丸たけまるが言う。

「伊勢でも油は余っているだろうな。東から多くの商品が伊勢の港に着いているはずだから」

「伊勢は敗戦からの立て直しに銭がいくらあっても足りないだろうから、余っているものを高く買うといえば、話に乗ってくるかもしれない」

「輸送費も高くつくだろう」

「筒井城と亀の瀬運河を抜くだけの量でいいんだろう。運河が使えるようになれば、堺からいくらでも運べる」

「それはそうだな」

「では、私はその間に箸尾城を落とすことにしよう」朝基さんが言った。


 百間(約百八十メートル)四方程度の箸尾城は、臼砲による大量の投石に耐えられず、三日で落城した。箸尾氏一族と兵は、朝基が開けておいた北側から筒井城に落ち延びた。


 朝基さんが十市とおち遠清とおきよを陣に招く。筒井城付近には越智おち家栄いえひでが布陣しているので、顔つなぎが必要だった。


 朝基さんの軍が北上し、大和川を渡って筒井城の西側に到着する。


「十市、ひさしぶりだな。西軍に着くことにしたのか」越智家栄が言った。両者とも興福寺の国民こくみんであり面識がある。


「片田の庇護者であるからな。それに田舎市にも関心があるが、西軍についたわけではない。ここにきているのも私の兵ではなく、片田の兵だ」

「そうか、そういえば、そうだな」家栄が笑う。

「紹介する、片田村の小山朝基殿だ。片田軍の副将をしておるという」

 二人が挨拶を交わす。

「で、片田軍は和泉いずみ国で派手にやっているそうだが、どんな戦いをするのだ。今回も砲を持ってきたのか」越智家栄が遠慮なく尋ねる。

 朝基さんは話をらした。




 小山朝基さんの軍が筒井城の西、越智家栄の軍が南を担当することにした。城の東は佐保川だった。筒井軍の退路として北側を空けた。

 朝基が筒井城からの矢が届かないところに矢倉を一つ建てさせて、自ら登った。

 大きな城だった。

 南北が二百二十間(四百メートル)、東西が二百八十間(五百メートル)程の長方形の城であった。その周囲に堀が掘られている。内部にも堀がめぐらされており、内曲輪くるわと外曲輪を分けていた。

 矢倉から見ると、内部には家臣の屋敷だけではなく、集落、市場などもあるようであった。

「中に民も住んでいるのか、攻めにくい城であるな」朝基さんが言った。

 筒井城は十二年前、畠山義就よしひろに一日で落城させられた。その後相当城普請しろぶしんを重ねたようだった。


 今の東軍の状況では、大和国の筒井まで援軍をよこすことは難しい。それは筒井方も知っているであろう。しかし集落を丸ごと囲んだ大きな城であるから兵糧の蓄えも多いであろう。佐保川に近いので、少し井戸を掘れば飲料水も幾らでも得られる。

 加えて、今城を捨てて京都に走ったところで東軍の劣勢は明らかである。筒井は容易なことでは城を捨てることはないだろう。


「さて、どうしたものか」朝基さんは考え込んだ。


 良い方法が思いつかない。考えあぐねて矢倉の上から周囲を見回す。

 あたりは一面の稲穂の海原であった。こうべを垂らした稲が収穫を待っている。


 そうだ、この方法ならば、城が落ちるだろう。朝基さんが、片田村の石英丸に宛てて書を送った。

榴弾りゅうだんで良いので、軽迫弾を大量に送ってほしい。加えて、砲身を四倍にした軽迫撃砲を作って届けて欲しい。砲身が長い分、推進薬は少し減らしてもらいたい」

 軽迫撃砲の砲身は一尺(三十センチメートル)程である。その四倍というと一.二メートルの長さの砲身ということであった。

すなわち、砲身の長さが重迫撃砲並みの軽迫撃砲を作って送ってほしいということだ。


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