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黒白のヴェンジェンス  作者: ロウボ
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第六話 七番目の楔

本当に申し訳ございません!(土下座)えー約三か月たちましたかね(汗)その代わり満足いく出来になったと思いますので期待して読んでください!!

 王立魔術学園のとある一室で一人の少女と一人の女が対面していた。

 少女の方は長い白髪と青空を思はせる綺麗な瞳を持ち可憐な容姿を持つ少女だ


 女の方は短い濃い赤髪と鮮やかな紅い瞳を持ち先ほどの少女が可憐という印象ならばこちらの女は綺麗という印象を持つだろう。


 赤い髪の女は先ほど目を通していた資料を机に置き目の前の少女へと目線を向ける。


 「なるほど。勢い良く入ってきたと思ったら、いきなり決闘の会場の準備をしろと言われて、少々驚いたが……。事情は理解したよミレニア君」


 「それで会場の準備はしてくれますよね?」


 「そう逸らなくても許可を出すさ。だが少し意外だと思ってね。君はお人好しでよく困っている人を助けていたが、深く踏み込むことはしなかった。どういう心境の変化だい?」


 目の前の少女は決まって自分の立場が変わりそうな選択はしてこなかった。

 だが今回、ミレニア君のしようとしていることは明らかに自分の立場を大きく変える選択だ。

 しかも個人に対してここまで自分を賭けている。

 その選択で自分の人生がある程度決まるかもしれないというのに。


 「いえ、ただそろそろ状況を動かそうかと思いまして」


 「その者に状況を好転させるほどの力があると?」


 「はい。少なくとも私はそう思います」


 ミレニアは迷いなく即断した。

 なるほど彼女にここまで言わせる人物か。興味が湧いてきた。


 「なるほど……それで当然だけど彼は信用できる人物なんだね?」


 「いくつか彼を試したので問題ないかと思います」


 それは……試された方はかわいそうに彼女は確かに優しいがそれと同じくらいにやると決めたら容赦がないからね。


 「具体的には?」


 「主に言うなら借りを理由に高級店をごちそうになったぐらいですかね」


 「それはまた……容赦のない」


 ミレニア君にしては少し手ぬるい気がしたけどまあ誤差だろう。

 赤い髪の女は机の上で腕を組み、その上に顎を置いて、

 

 「それで決闘の内容だけどファニエール君と例の彼との一騎討ちで合っているかい?」


 「ええ、合っています」


 「……分かっていると思うけど、ファニエール君は若干十歳で番外騎士団である近衛騎士団に入団した才媛だ。中途半端な実力じゃ相手にもならないよ?」


 ファニエール・セターニア。セターニア伯爵家の長女。

 若干十歳で近衛騎士団に推薦され入団を果たした才媛。

 その実力は固有魔術と汎用魔術を融合した剣技を巧みに使い、追うことすら困難な程のスピードで敵を圧倒する近衛騎士だ。

 

 赤髪の女は組んでいた腕をほどき背もたれに身を預ける。

 

 「その彼はファニエール君以上の実力を持っていると?」


 ミレニアは「いえ」と不敵な笑みを浮かべて頭を横に振り、


 「実力のほどはまだ確認してい無いので優劣はつけられませんが、魔力量だけなら近衛騎士団の中堅に値します。人材発掘が趣味のサリア学園長もきっと満足しますよ。それに私自身の直感に賭けても良いと思ったので」


 「ほう。君の直感は信用できるからねそういうことなら楽しみにしているよ」

 

 そう言ってサリアと呼ばれた女は口元に笑みを浮かべた。

 実力者の直感はよく当たる。期待してもいいだろう。


 「君には期待しているんだ。くれぐれも失脚しないでくれよ?」


 「学園長こそ見込みがありそうな平民の子を誘拐して牢屋に入れられないようにしてくださいよ?」


 ミレニアの言葉にサリアは肩をすくめて、


 「ひどいなミレニア君。私がそんなことをするとでも?第一するとしても証拠は残さないからバレる心配はないよ」


 そのサリアの信用できない言葉を聞いてミレニアは頬を掻きながら苦笑する。


 「そこはきっぱり否定して欲しかってんですけど……。まあいいです、そうい事ですから後は頼みましたよ。サリア学園長」


 そう言ってミレニアは身を翻して「失礼しました」と言い執務室を後にした。

 

 ……全く要件を終えたらすぐ退出して……相変わらず落ち着きの無い。

 せっかく来たのだからもう少しゆっくりしていけばいいのに。


 サリアはおもむろに立ち上がると窓の外の景色を眺める。


 「精々頑張ると良い。あの時あの瞬間から私達は進む選択肢しかないのだから」


 この学園の最高責任者はそう独り言ちた。



-------------------------------------------------------------



 決闘当日。なんやかんやありつつも俺はミレニアに連れられて学園に来ていた。


 目の前には巨大な学園の校舎が鎮座している。

 その校舎は白と青がうまく調和しており洗練されているという印象を受けた。

 他にもガラスをふんだんに使って太陽光を多く取り込んでいる。


 ミレニアは校舎に入らずに学園の敷地内をずんずんと進んでいく。

 俺は通り過ぎていく校舎を眺めながら、


 「会場はあの校舎の中じゃないんだな」


 俺の声に反応してミレニアは顔だけを少し俺に向けて、


 「うん訓練場を校舎の中に作ると魔術の余波で校舎が壊れちゃう可能性があるからね」


 「へーなるほどな、魔術の訓練で結構壊れたりするのか?」


 「普通の生徒の魔術なら防護結果があるから問題ないんだけど、二等生や一等生の魔術合戦だとどうしても耐えきれなくて……」


 ミレニアはため息交じりにそう嘆息した。

 聞いた感じその二等生と一等生とやらにはあまりいい感情を抱いてなさそうだな。


 あとその何等生とかいうやつらは一体何なんだ?

 

 「疑問はごもっともだけど、ひとまずは訓練場に向かわなきゃ。ノイの疑問は入学した後にちゃんと説明するから安心して」


 俺の怪訝な表情をくみ取ったのかミレニアはそう補足した。

 まあ確かに説明ならあのバカ騎士をぶっ飛ばした後でも遅くはないか……。


 言いたいことを言い終えたのかミレニアは姿勢を戻してスピードはそのままに、ずんずんと進んでいく。

 途中何度か生徒と思はしき人に怪訝な目で見られながらも目的地に向かって進んでいき、先程の校舎と負けずとも劣らない巨大な建物の中にミレニアは入っていく。

 恐らくここが例の会場なんだろう。


 ミレニアは建物の入り口で立ち止まり俺の方に体を向けて、


 「取り敢えず控え室に案内するけど……もう一回言うけど忘れ物とかないよね?」


 ミレニアは俺の恰好を見回してそう問うてきた。

 この質問。宿から出たときにも言われたけど、俺ってそんなにだらしなく見えるのか?

 ちなみに俺の今の恰好は前と同じで茶色のローブとそれに合わせた服装だ。

 前と同じ服装をしてるからそう見られたのか?


 俺は全身をくまなく見直すと、


 「いや、ないけど……ミレニア視点からすると、俺ってだらしなく見えるのか?」


 そう言うとミレニアは慌てたように両手を振る。


 「いやそういうんじゃなくて……だってノイ、持ち物も何も持ってないじゃない」


 今日は決闘するためだけに来たので俺は今何も持ってない状態だ。

 その状態がミレニアにとって気になるんだろう。


 「それはそうだろ?今日は決闘しに来ただけなんだから」


 「でも、普通剣とか杖とかつかうでしょ?」


 心なしか先ほどよりも低い声でミレニアは指摘してきた。

 というかこれ気のせいかもしれないけど呆れられてないか?

 俺だって好きで持ってないわけじゃないんだぞ。


 「使えるなら使ってるさ俺だって、でも何故だか知らないけど俺の場合魔力増幅機能が使えないんだよ」


 そう言うとミレニアは「え!?」と言って驚いて、


 「ノイも使えないんだ、他にそんな人いないと思ってたのに」


 ミレニアは心底意外そうな声で驚いている。

 まあそりゃそうだろうなこんな特殊な例なかなか無いし。

 というか今、俺以外にも似たような奴がいるみたいなこと言ってなかったか?


 そのことについて質問しようとした瞬間、ミレニアはハッとした表情をした後、体の向きを変えて、


 「ここに居てもしょうがないしそろそろ移動しましょう?ここは裏口だけど他の生徒が来ないとは限らないし」


 そう言ってそのままミレニアは歩き出した。

 そして俺もその後をついていく。


 さっきの発言は正直気になるが、どうしても聞きたいという訳じゃないから別にいいか。

 それにミレニアがそのことについて、あまり聞かれたくないような雰囲気を出している気がするし。


 そんなことを考えていると不意にミレニアが扉の前で立ち止まり、


 「一応ここが控え室だけど……魔道剣は使えなくても普通の剣は使えるでしょ?自慢じゃないけど私の騎士は無手じゃ勝てないよ?見た感じノイは拳闘士でもなさそうだし……」


 心配するかのような声でミレニアは問いかけてくる。

 確かに俺は今無手だが、何も考え無しな訳じゃない。


 「大丈夫だ。ちゃんと得物はあるから安心してくれ」


 「そう?武器なんて持ってるようには見えないけど……」


 「そう見えても仕方ないけどな。まあそれは決闘が始まってからのお楽しみってことで」


 そう言って俺は控え室の扉を開けて中に入っていく。

 そこは長方形のような部屋の間取りで壁には十個のロッカーが置いてあり、部屋の真ん中には十人ほどが座れる長机がおいてある。

 部屋の奥にはどこかに通じているだろう通路が顔をのぞかせている。


 俺の目線に気づいたのかミレニアは奥の通路を見やり、


 「あぁ、あそこは決闘場につながってる通路だよ。時間になったら呼ばれると思うから呼ばれたらあそこを通って行ってね」


 「なるほど了解。それでこの後ミレニアはどうするんだ?」


 「ノイの案内も終わったことだし私は観客席で試合を見ることにするわ」


 言い終えるなりミレニアは出口の方に歩いていき出口の前で足を止める。

 そして祈るかのように両手を組み合わせると、


 「エパナスタスィ様の加護があらんことを。それじゃあ健闘を祈っているね、ノイ」


 おどけるかのような仕草で祈った後ミレニアはドアノブに手をかけてそのまま出て行った。

 確かあの仕草はエパナスタスィ教の祈禱のボーズだったはずだ。

 決闘をするだけなのに大げさだとは思うが、悪い気はしないな。


 俺は取り敢えず長机に座ると目を閉じて心を落ち着かせる。

 そして両手で自分の頬を叩き気合を入れる。


 「よし!いっちょ派手に暴れるか!」



--------------------------------------------------



 私は係りの者に呼ばれ決闘場に足を進める。

 目の前には広大な決闘場とその周りを囲い一段上に観客席がある。

 その観客席にはパッと見千人以上の観客が座っている。


 ミレニア様は「かなりの人数を集めてみせる!」と気合を入れていたが本当によくこんなに集めたものだと感心する。

 こんなに生徒が集まる催しなどメルトナ魔術学園武闘祭位のものか。


 私は決闘場の真ん中あたりにまで移動してそこで大きく深呼吸をし、気持ちを落ち着かせる。

 それにしてもミレニア様の考えが分からない。

 なぜあのような怪しい男を側に置こうとするのか。


 ミレニア様が認めた男だきっと優秀なのかもしれない。だがそれを差し引いてもあの男はどうにも怪しい、信用できない、そんな気がする。

 もちろんミレニア様の判断を疑っている訳では無いがミレニア様だって時には間違えることもあるかもしれない。


 私が思考の迷路に囚われていると、目の前から件の男が近づいてくるのに気付いた。

 男は私の目の前まで移動しそこで立ち止まる。

 男の格好は()()と同じ物で特に変わった点は見受けられない。だからこそ分からないことがある。


 「貴様ふざけているのか?」


 「おいおい開口一番ふざけているのかは無いだろ。挨拶ぐらいはしたらどうだ?それともお姫様お付きの騎士は挨拶すらできない礼儀知らずなのか?」


 すかしたような口調と声でこの男は私を挑発する。

 どうやらこの男は私が気に食わないらしい。安心しろ私も貴様が気に食わない


 「減らず口を……ただ単に変態に挨拶をする文化はこの国には無いだけだ。ちゃんと普通の人には礼儀正しく挨拶をしている」


 「な!?だからあれは誤解だって言ってんだろ!お前は一昨日会話した内容すら忘れるバカなのか!」


 「バカなのは貴様だろう!決闘の場に無手で来るなど自ら負けに来てるのか!」


 そう言うと男は一瞬キョトンとした表情をしてその後に納得をしたような表情に早変わりした。


 「ああそのことか。それなら問題ない。わざわざお前に勝ちを譲るなんて絶対にありえないからな」


 「ほう?それはつまり、私如き無手でも勝てると?舐められたものだな」


 実際は何か策でもあるのだろうが。関係ない、こうも煽られては我慢の限界だ。

 何かされる前に速攻で片をつける!


 心の中で作戦を立てていると不意に観客席が騒がしくなっているのに気が付いた。

 この感じはそろそろ決闘が始まるか。


 「はい皆さん静粛に。騒ぐのは構わないけど決闘が始まってからにしてもらえると助かるかな。じゃないと私のちっぽけな声じゃかき消されちゃうからね」


 拡声の魔道具を使ったのだろう。突如訓練場中にサリア学園長の声が響き渡った。

 すると途端に騒がしかった観客席が静かになっていく。


 まさかサリア学園長が出てくるとは……。いやミレニア様直々に決闘のセッティングを頼みに行ったのだ。

 こうなるのも自然の流れか。


 「よし。静かになったね。協力感謝するよ。それでは改めて、今回の決闘の審判はこの私が務める。よろしく頼むよ」


 そのサリア学園長の言葉に観客席の方から困惑の声が漏れ聞こえてくる。

 まあ驚くのも無理のない話か。この私だってかなり驚いている。

 基本的に決闘の審判は教師がするのが通例だ。私が把握した限りではサリア学園長が審判をしたなんてことはなかったはず……。


 「まあ皆疑問に思う気持ちもわかるよ。何せ学園長自らが審判に立つなんて私の代ではまだ前例がないからね」


 困惑の声に応えるかのようにサリア学園長の言葉が続いていく。

 その言葉を聞き逃さないように周りの困惑の声は次第に小さくなっていった。


 「皆も知っているだろうけど、予め通達した通り今回の決闘はそこにいる黒髪の彼の編入試験を兼ねている。そしてその彼は平民だ」


 そのサリア学園長の衝撃の言葉に今度はハッキリと困惑と動揺の声が聞こえてくる。

 

 メルトナ魔術学園はこれまで、貴族の編入は認めているが平民の編入は認めてこなかった。

 それをこの場で何の前触れもなく五百年続いた制度を変えるとサリア学園長は言ったのだ。

 動揺するなと言われても無理な話だろう。とくに貴族特有の偏った思考を持っている人などは反応はより顕著に出ているはずだ。


 「ハイハイ静粛に。驚くのも分かるけどまず私の話を聞いてほしいかな。そういうわけで今回の決闘の結果によっては制度を大きく変えることになるだろう。そういうわけでこの学園にとって大きな転機にもなるだろうこの決闘の審判をすることにしたんだよ」


 なんてことのないような軽い口調でサリア学園長は学園の改革を宣言した。

 この人は分かっているのだろうか?その宣言は学園だけではなく貴族社会にも少なくない影響を及ぼすだろう。

 バカな私でも流石にそれぐらいは分かる。


 「あれ?なんか俺のあずかり知らないところで話が大きくなってね?」


 「黙れ。お前の耳障りな声のせいでサリア学園長の声が聞こえないだろうが」


 「いや俺だけの声でこの大きな声はかき消せないだろ。それともなんだ?あんたの耳は年老いたおばあちゃんみたいに耳が遠いのか?」


 「なんだと貴様?」


 「先にケンカを売ってきたのはあんたの方だぜ?」


 こいつ……決闘が始まる前にハッ倒してやろうか……?

 それとも決闘でこれ以上生意気な口が利けなくなるように矯正させるのも良いな。


 「おや、そこの二人はどうやら私の話を聞くより早く決闘をしたいらしいようだね。まあ、きりもいいしルール説明に移ろうか」


 「貴様のせいで注意されただろうが!」


 「はぁ!?俺のせいかよ!お前が最初に突っかかってきたんだからお前のせいだろ!」


 「二人共早く始めたいのは分かったから、ひとまずはルール説明は聞いていて欲しいかな」


 私があの男と口論をしていたらまた注意されてしまった。

 こんな大衆の面前で注意されてしまっては私の評判が下がる。

 私はミレニア様の騎士だ。これ以上私の評判が下がってしまっては相対的にミレニア様の格が下がってしまう。

 あの男を言い負かせられなかったのは非常に業腹だがあの男との口論はひとまずは自重しておいた方が良いだろう。


 「うん、落ち着いてきたみたいだしルール説明を始めようか。と言っても特殊なルールとかはないからいつも通りなんだけどね。でも念の為に大まかにおさらいしておこうか」


 「まず一つ目は相手を殺さないこと、これは当然だね。二つ目は相手が降参した場合及び魔力障壁が破壊された場合、直ちに戦闘行為をやめること。三つ目は不正行為をしないこと。私の目が光っているうちは絶対に見逃さないからね。もしも不正行為をした場合その時点で負けとする。よし、これでルール説明は大体できたかな」


 サリア学園長が説明したルールは特に変更点は無いようだ。

 私たち学園生にとっては馴染み深い決闘のルールでもあの男にとって初めての決闘だ。

 だからサリア学園長は今更ルールのおさらいなんてことをしたのだろう。


 「それじゃあ今度は勝利条件の説明だな、まず一つ目は魔力障壁の破壊。二つ目は魔力枯渇による魔力切れ。そして三つ目は降参による相手の勝利かな。これで説明すべきことは終わったね。それじゃあさっそくだけど決闘を始めようか。二人共今いる場所から距離を取って魔力障壁を展開してね。合図を出すからそれが出たら決闘の開始だよ」


 サリア学園長の説明を聞き終えて私とあの男はお互いに顔を向きなおす。


 「だってよ。一応言っておくけど女だからといって手加減はしないからな」


 「手加減をしないのはこちらのセリフだ。後でお前の負け犬の遠吠えを聞くのが楽しみだ」


 軽く数秒お互いに睨み合った後サリア学園長に言われるまま私たちはお互いに距離を取る。

 十分に距離をっとたのを確認した後私は魔力障壁を張る準備に入った。


 心臓から体全体に魔力の薄い膜を張るようなイメージで魔力障壁を順調に張っていく。

 魔力障壁は通常、流し込んだ魔力量に応じて強度が決まる。私の魔力の十分の一を流し込めば強度は大丈夫だろう。

 もしも魔力障壁が傷ついてもその瞬間に魔力を流し込めばすぐに修復される。まあ、あまり流し込むすぎると攻撃に使う分の魔力が無くなってしまうから気を付けないといけないが、攻撃なんて当たらなければ修復する必要もない。


 「うん、二人共準備はできたようだね」


 私たちの準備が確認できたサリア学園長は「コホン」と言い、


 「私が決闘初め!と言うから、それが決闘開始の合図とするよ。それではファニエール・セターニア対ノイの決闘を始める。」


 私は決闘開始直後にすぐ動けるように、ゆっくりと体全体に、魔力障壁と別種の魔力を練っていく。

 決闘開始前に魔術を発動するのはルール違反になるが魔力を練る程度なら咎められない。

 

 観客も二人の真剣な空気に充てられたのか静観しており、会場全体が濃密な気配を放っている。


 「では、決闘……初め!」


 サリア学園長の開始の合図の直後、私はあの男に向かって勢いよく走り出す、と同時に固有魔術を発動する。

 私の固有魔術『(accele)(ration)』は、自分自身と私が触れている物体の速度を無制限に倍加できる能力だ。一見強そうに見える能力だが、当然デメリットもある。


 まず一つ目は際限なく自分を加速させるとそのスピードに体がついていけなくなり、壊れてしまうこと。多少は自己強化の魔術で体を頑強にしたところで、際限なく上がるスピードに当然ついていけるわけがない。

 そして二つ目は、私が触れた物体を加速させても私が手を離した瞬間加速の効果が無くなることだ。

 例えば私が石を拾って敵に投げつけたとしても、敵に着弾するまで際限なく加速する訳では無い。確かに初速だけ加速はするが時間が経つにつれどんどんとスピードは落ちていく。それでも充分に脅威にはなるが。


 手始めに『加速』で私と剣を二倍加しあの男の距離を縮める。私の速度に虚を突かれたのか、あの男は動く様子が見受けられない。なら、まずは一撃叩き込んで奴の魔力障壁の硬さを測る……!


 私の渾身の一撃は弧を描くように奴の無防備な体に吸い込まれる。次の瞬間、私の騎士剣に固い物と接触した感触が伝わってくる。一瞬魔力障壁と接触したかと思ったが、目の前の光景を見てすぐに違うと判断した。何故なら私の騎士剣は魔力障壁では無く、奴が握っている氷の剣が受け止めていたからだ。


 「あっぶねぇ……。いきなり走り出したと思ったら、なんだよお前のその速度。危うく受け止め損ねるとこだったぜ」


 奴は心底戦慄した顔で平然と私の騎士剣を氷の剣で受け止めている。

 奴の反撃が来る前に急いで私はバックステップをして奴との距離を取った。


 ――何故だ?なぜ私の剣は奴の剣によって防がれている……?あの瞬間確かに奴は剣など持っていなかった。だが現実として私の剣は奴の本来あるはずのない剣で防がれている。そもそもとしてあの氷剣は一体何なのだ?何故あの瞬間いきなりとして現れた?


 いや……現れたのではなく、もしかしてあの一瞬で作った……?

 

 「……なるほど、ふん。魔術剣などつくづく私を舐めてくれる」


 「は?舐めるって何がだよ?」


 私の言葉に奴は怪訝な顔をして応えた。何がだは、私の方が聞きたい。


 「分かっていない様だから教えてやろう。魔術剣は流し込む魔力量によって強度が決まる。だから相手の攻撃に耐えられるように多大な魔力を流し込む羽目になる。だが魔術剣に魔力を流し込みすぎると魔力障壁や攻撃に使う分の魔力を大量に使う。だから今お前がしたことは自殺行為ということだ。まあ、魔術剣の構築の速さだけは褒めてやるがな」


 ましてやこの決闘の勝利条件は、魔力障壁を破るか魔力切れで魔力障壁が消滅するかだ。だからこの決闘に勝利するには、いかに自分の魔力を消耗させずに相手の魔力障壁を攻撃するかだ。


 「あぁ~それな。師匠にも言われたわ。だけど俺は魔術剣(これ)が一番性に合うだよ。ていうかお前、敵に助言するなんてずいぶんと優しいんだな」


 奴はニヤニヤした顔とふざけた声で私をからかってきた。

 ……なるほどよっぽど死にたいらしいな。だがここで挑発に乗るのは相手の思う壺だ。だから少し冷静になれ私。


 私は気持ちを落ち着かせるために深呼吸をし、ゆっくりと低い姿勢で騎士剣を構える。

 そしてその様子を見ていた奴も同時に氷剣を構えた。お互いに剣を構え、お互いに相手の隙を探り合い……。


 そして私達は同時に走り出した。


 風を味方につけたかのような速度で、私は奴との距離を一瞬にして縮める。

 今度は油断していなかったこともあり、奴は一瞬にして距離を詰めた私に瞬時に反応して、氷剣を振り下ろした。

 私はその氷剣を受け止めるために騎士剣を振り上げる。


 「ハァァ!」


 「フッ!」


 次の瞬間お互いの剣はぶつかり合い、私は下に、奴は上に大きく弾かれた。

 そしてお互いに大きな隙が生まれる。先ほどの衝撃で動けないのか奴は隙だらけの私に追撃する気配を見せない。

 私も例にもれず動けないが、奴の衝撃は上の方向で私は下だ。ならば私の方が奴よりもわずかながら速く追撃を打ち込めるはずだ。


 だが、ここで馬鹿正直に正面から追撃を見舞っても恐らく防がれるだろう。ならば奴の意表を突くしかない。

 私は衝撃から解放されてすぐに『(accele)(ration)』の出力を二倍化から二.五倍化に変更する。

 そしてその勢いのまま奴のすぐ隣を駆け抜け、奴の後ろに回り込む。

 私の予想外の行動に驚いたのか、奴は小さく「うおっ!」と声を漏らした。


 だが、そのまま奴に追撃を放とうとしても『(accele)(ration)』の勢いが邪魔で、すぐには追撃には移れない。

 だから私はその問題を強引な方法で解決する。


 『(accele)(ration)』の勢いのまま私は騎士剣を持っていない左手を前方に突き出し、その掌から汎用中級魔術『スコール』を使い突風を生み出す。そしてその瞬間突風が吹き荒れ、私の慣性は前方から奴のいる後方へと変わる。


 そのままの向きでは攻撃ができないから、半ば無理やりに向きを後方へと変える……と同時に慣性を使い、騎士剣を奴の無防備な背中に右斜めから振り下ろす。

 

 (これは入った……!)


 「ハァァッ!」


 だが私の剣は前を向きながら、後ろに差し込まれた奴の氷剣によって受け止められる。

 そして奴は時計回りに体を回転させて私の攻撃を完全に受け流した。

 

 「なッ!?」


 受け流された!?受け止められるだけならまだいい納得できる。だが完全に不意を突きながら、完全に受け流されるなどありえない。

 

 (この男は後頭部に第三の目でも持っているのか!?)


 内心で悪態を付きながらも、次の行動に移るため私は思考を巡らせる。

 まず今の私の状態は奴に完全に受け流されたことで態勢が崩れている。もし何も対策を取らなかった場合、私は思いっきり地面に衝突するだろう。別に地面に衝突するだけなら、魔力障壁のおかげで実害は無きに等しい。


 だが私が地面に衝突している間、奴の前で大きな隙を晒すことになる。そうなれば致命的ではないにしろ強烈な一撃をもらうことになる。

 ミレニア様の前でそんな無様を晒すことなど断じて容認できるわけがない……!


 私は受け身を取るために自分に掛かっている『(accele)(ration)』の効果を切る。

 当然『(accele)(ration)』の効果を切ったところで勢いそのものは無くなるはずがない。だから私はその勢いを利用して転がるように受け身を取る。だが、やはりと言うべきか転がるだけでは勢いは止まる気配を見せない。


 (――ッく!やはり転がるだけじゃ勢いは消せないか。……なら!)


 地面にぶつかって体が跳ねた瞬間、地面と体の間に空間が生まれる。私はその空間に無理やり騎士剣を差し込み、地面に向かって剣を突き刺して勢いを殺そうとする。


 奴との距離がかなり離れた段階でようやく勢いが止まる。

 勢いを止めるため仕方なかったとはいえかなり離された……。

 この場合色々と考えることが多いから結果的に助かるが。


 それにしても奴は何故自分から攻めようとしない?現に今も私の挙動を窺うばかりで自分から攻めようという意志を感じられない。私と対峙したほとんどの人は最初は攻めの姿勢だったが高速で動く私に反応しきれず次第に受け身の姿勢になっていった。

 

 奴も恐らくはその類いなのだろうが、先程私は大きな隙を晒した。それなのに追撃する素振りすら見せないのは明らかに異常だろう。

 

 動こうとしないのかはたまた動けないのか……。いや、そんなことを考えていてもしょうがない。奴はあそこから動かない。そういう想定でやるしかないんだから。


 だがどうする?私の渾身の一撃は難なく受け流され相手は今もなお油断なくこちらを見据えている。また同じように『(accele)(ration)』を使用して攻めたところで結果は変わらないだろう。


 「ならアレをするか……?」


 このまま手をこまねいていてもどんどんとジリ貧になっていくだけだろう。それならここで多少強引でもアレを使うしかない。先ほど見せた超反応は気になるがそれを気にしてばかりいると足元をすくわれかねない。それに私はミレニア様の騎士として決して無様を見せるわけにはいかないのだから。


 「正直お前のことを見くびっていた。だが先ほどの打ち合いで確信した。貴様は強い。だから本気で行かせてもらう……!」


 「へぇー。それは全くもって光栄なことだな」


 相変わらずの減らず口だがその反面奴の表情は真剣そのものだ。

 私はその場からゆっくりと立ち上がると、静かに魔力を練り上げる。

 そしてその練り上げた魔力を騎士剣に纏わせ、二つの魔術を同時に発動させる。


 一つは固有魔術、そしてもう一つは汎用中級魔術『ウォーターエッジ』

 本来は水の刃を作り敵に向けて発射し切りつける魔術だが今は剣に纏わせる。

 そしてその纏わせた水刃を『(accele)(ration)』の力で加速させ、その刀身に渦が巻くように走らせる。


 これが私が編み出した()()……。

 

 「融合魔術『旋渦(せんか)水刃』」


 奴は私の魔技を見てわずかだが顔を強張らせる。


 「なるほど、確かに本気だな……」


 「この『旋渦(せんか)水刃』は触れたものを瞬時に粉々にするほどの圧倒的な切れ味を誇っている。お前のその余裕の態度も今この時だけだ。――いくぞ!」


 私は騎士剣を構え、奴に向かって走り出す。

 『旋渦(せんか)水刃』を発動している状態だと私は『(accele)(ration)』を自分自身に対して使えない。

 正確に言えば『旋渦(せんか)水刃』を維持するのに集中しすぎて余裕がない、というのが正しいが。


 だから今の私は自己強化の魔術だけの速度で駆け抜ける。

 固有魔術を使ってはいないとはいえ自己強化の魔術だけでそれなりの速度だ。

 すぐに奴の下に迫ると剣を振り下ろす。


 次の瞬間私の剣は奴の氷剣によって受け止められる。だが前回とは違い『(accele)(ration)』を使っていないため、前回のような大きな衝撃が起こらず鍔迫り合いになる。


 私も奴も負けじと自分の剣を押し通す為に力を込める。


 「ハァァァァァァァ!」


 「ウォォォォォォォ!」


 そして互いの力は拮抗し――奴の氷剣は断ち切られ剣身は高々と舞った。

 私はその勢いそのままに奴を切りつける。


 「ガッ!?」


 奴は私の一撃を受けて小さく呻く。私はすかさず追撃をみまおうとしたが、奴はすぐさまに氷剣を生み出し、私の剣戟を防ぐと大きく跳躍してすかさず私との距離を取る。

 魔力障壁があるため怪我はしていないが、魔力障壁にはかなりのダメージが入ったはずだ。


 切った感じかなりの魔力を込めたようだが奴の魔力も無尽蔵にあるわけではない。このまま攻め続ければいずれ破壊できるだろう。


 私は騎士剣を持ち上げ、剣先を奴に突きつける。


 「ようやく一撃を当てたぞ――ノイ」


 「へぇ……。名前を呼んだってことは少しは認めてくれたと受け取ってもいいんだな?」


 「実力はな。人間性は認めていない」


 「褒められてると思ったら急に貶されたんだけど。落差が激しいなオイ」


 奴は相も変わらず飄々とした態度を貫いている。だが先程と比べると心なしか余裕がなさそうに見受けられた。まぁそれも……


 「次第に取り繕うことも出来なくなるだろうがな」


 「中々言うじゃねぇか……。だけどそれで負けたら最高にダサいぞ」


 「その心配ならいらないな。何故なら負けるつもりなど毛頭ないから……な!」


 私は足に思いっきり力を入れ、地を蹴る。そして奴の胴体を狙って騎士剣を切り上げる。

 奴の氷剣も私の剣を迎撃する為に振り下ろされる。


 三度、互いの剣はぶつかり合う。そして再び奴の氷剣は砕け散り、四度目の攻撃で私の剣は奴の体を捉える。

 

 「ぐッッ!」


 だが、私の剣が奴の体を捉えると同時に奴は先程氷剣を握っていた反対の手で再度氷剣を生み出し、私の体を切りつける。


 「ぐはッッ!?」


 こいつ、自らも切られる覚悟で攻撃してきたのか!?

 ……いいだろう。お前が退かないというのなら私も退かん……!


 壊して切って切られる、壊して切って切られる、壊して切って切られる、それを私達は数十回も繰り返す。

 この戦いを例えるならばまさに泥沼と言っても過言でもないくらいに状況は膠着した。

 そして何十秒か経った時、奴は大きく後ろに跳躍して私との距離を取った。


 「ほぅ……。てっきりこのまま勝敗が付くものだと思っていたが……。怖気でも着いたか?」


 「別にそんなんじゃねぇよ。ただそろそろ丁度いいかと思っただけだ」


 「……丁度いい?」


 「――ああ、いい加減状況を動かそうと思ってな」


 そう奴は言うと自分の持っている氷剣を地面に突き立てる。すると自分と奴の周りから数十本の氷柱が出現する。そしてあまりの冷気なのか戦場全体に濃霧が立ち込めた。


 「な!?」


 なんなんだこの状況は?奴は何が狙いでこの状況を引き起こした?そもそも奴はどこに消えた?

 濃霧のせいで視界が遮られる。これでは奴がどこにいるのかを確認できない。


 「もしやこの濃霧を使った奇襲が奴の狙いなのか?」


 だとしたら甘く見られたものだ。この程度でやられるほど私はやわではない。


 『我は天に誓願する』


 私は奴がどこから来るのか注意深く周りを警戒していると、どこからともなく奴の声が聞こえてきた。

 その声の出どころを探ろうとしたが先程出現した数十本の氷柱のせいで声が反響しうまく探れない。


 ――何だ?奇襲を仕掛けてくると思っていたが来ないのか?それとさっきの言葉の真意あれは一体……。

 まさか……詠唱魔術?なるほど……。詠唱魔術を使おうというのならこの状況も納得できる。

 詠唱魔術は通常の魔術と違い、詠唱を挟むことによって絶大な効力を発揮する魔術のことを指す。

 その代わり集中して詠唱しなければならず、その間に無防備になるという大きな欠点を抱えているが。


 『大空を裂き、大地を蹂躙し、大海を沈める、大いなる災禍の力を我が許に』


 私がそんなことを考えていると詠唱を続ける声が聞こえてきた。

 奴が仕掛けてくるのならそれをここで迎え撃てばいい、だが私は奴の詠唱を何としてでも止めないといけない気がする。でなければ決定的な敗北に繋がる気がして……。なんともあやふやな表現だが自分自身の直感はあまりバカにできないとミレニア様に言われたことがあった。


 だから私は全力を挙げて奴の詠唱を阻止するため自分自身の魔力をゆっくりとだが確かに上げていく。

 今から発動しようとしている魔術は詠唱魔術ほどではないにしろかなりの集中が必要になる。


 ゆっくりと……ゆっくりと……自分の中で魔力を練り上げ、魔術という形でこの世に顕現させる。


 ……汎用上級魔術「吹き荒れろ『テンペスト』!」


 魔術を発動した次の瞬間、自分を中心に暴風が吹き荒れ、濃霧も氷柱も邪魔なもの全て風の刃によって切り刻まれる。


 そして開けた視界に奴の姿が――映らなかった。


 「……は?」


 奴はどこに消えた?自分の姿を消す魔術でも使ったのか?いやありえない奴は先程まで詠唱をしていたはずだ。そんな余裕は無いはず……。

 いや違う、奴は……。


 「上か!」


 そう言うと同時に私は上を仰ぎ見る。今度こそ私の目に、落下して来る奴の様子が映った。


 『我が解放すは七番目の楔、其の名は――カマエル――!』


 奴を中心に凄まじい魔力の奔流が吹き荒れる。

 私は魔力を見れる魔眼を持っていない。だがそんな私でも感じ取れる巨大な魔力の塊……。


 「化け物め……」


 あり得ないものを見ている気分だが早く立ち直らなければ今もなお落下しながら迫ってくる奴の攻撃をもろに浴びることになる。

 先程の衝撃から私は立ち直り、奴注意深く観察していると奴は落下しながらも大の大人程もある巨大な大剣を作り出した。

 

 まさか落下の勢いと大剣の重量を利用して仕掛けてくるつもりか……!

 このままではアレを受け止めるなど到底不可能。――なら。


 「『(accele)(ration)』五倍化!!」


 一度魔技を解除し、代わりに固有魔術を発動させて全身と騎士剣を五倍化させる。


 奴が質量で推すというのならこちらは速度で推すのみ……!!


 「いくぞ!!ファニエール!」


 「来い!!」


 奴の気合を込めた叫びに私も全く同じものをもってして応える。

 そして両者の距離はみるみる縮まり互いの剣がこれまでに無いほどの甲高い音でぶつかり合った。


 その瞬間体全体に凄まじい負荷がかかる。剣を支えるために筋肉は断裂し、足は地面に沈み今すぐにでも内側から破裂しそうだ。痛みもひどく軽く眩暈がしてくる。


 ――それがどうした。この程度のことであの日あの瞬間から真にミレニア様の一の騎士になると誓った決意が揺らぐことは無い!!


 「「

 二人の絶叫は会場全体を揺らし、そして――互いに弾け飛んだ。


 私はせいぜい四メートル程だが、奴は空中に居たのが災いしてかなりの距離吹き飛んでいる。

 奴の吹き飛ばされていく様を見ていると不意に後ろからザクっという音が耳に入ってきた。

 その音の正体を確かめるために後ろを振り向くとさっきまで奴が握っていた氷の大剣が刺さっていた。


 恐らく先程の凄まじい衝撃で手から離れたのだろう。……それにしても先程の攻防で砕け散っていないとは奴はどれ程の魔力をこの大剣に込めた?奴も流石に残りの魔力量は心許ないはず……。

 ――いや、今はそんなことを考えている場合ではない。目の前のことに集中しなくては。

 振り向いていた視点を元に戻しそして、気付いた。


 ――なんだ、アレは?

 

 自慢ではないが私は人を見る目があると自負している。そのうえで言おう……アレはなんだ?

 先程までとは明らかに違う。纏う気配が、存在感が、在り方が、違いすぎる。


 外見的特徴だけで言えばさほど変わっていない。強いて言うならば前髪が人房白くなっている程度か。

 だが、そんな些細な変化を塗り潰すほどに今の奴は異質だ。


 まるで底の無い深淵、全てを塗り潰す圧倒的特異点、全世界のそこだけぽっかり開いた穴のような錯覚を覚える。


 今の奴を例えるならば……お伽話に出てくる――悪魔――のようだ。

 

 

 

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