第五話 想定外の乱入者
はいまた一ヶ月ほど待たせてしまって申し訳ございませんでした!(土下座)
ミレニアに自分の目的を言うとミレニアから軽く息を吞む音がした。
まぁ分からなくもない、いきなり敵討ちが目的って言われたらそんな反応にもなる。
「……貴方の復讐への想いは、王族の願いを断るほどに強いの?」
「ミレニアがどう思うのかは知らないけどなんでそんな悲痛そうな顔してんだよ」
その顔はまるで自分から溢れ出した想いを必死に声に出さないよう押しとどめているそんなような顔だった。
「別に復讐がダメっていう訳じゃないけど今の貴方は何というか復讐に囚われてる気がして……」
ミレニアは俺が不機嫌だと勘違いしたのか少し早口でまくし立てた。
さすがにそんなことで怒るほど狭量ではないつもりだ。
「確かに俺は復讐に囚われてるっちゃ囚われてるのかもな」
そうだ俺は未だにあの地獄のようなあの日に囚われている。
だけど俺は別にそれでもいいと思っている。
それに今更別の生き方をしろなんて言われても到底無理な話だ。
俺は復讐以外の生き方なんて知らないし求めてすらいない。
ただあの男さえ殺せれば、それで……。
「ここには仇の情報を求めてきただけでそれが済めばすぐに出ていく予定だ。ミレニアには恩があるし感謝もしている。だけどこればっかりは譲れねぇんだ」
「仇の情報を探してるってことは、まだ有力な情報を持ってないっていうことなんだよね?」
「あ、ああそうだけど、それがどうした?」
「なら私、あなたの力になれるかもしれない」
そう言われた瞬間、俺は思はずミレニアの両肩を掴んだ。
「本当か!?あの男について何か情報を持ってるのか」
「ちょ、ちょっとノイ、落ち着いて。そんな頭揺らさないでよ。視界がぐらぐらするー」
言われて自分が俺は冷静さを欠いていたことを自覚した。
この三年間奴の情報がまるっきり見つからなくて自分でも気づかないうちに焦っていたようだ。
「悪かった、今離れ……」
ッ殺気!!
反射的に俺はその場から飛び退った。
次の瞬間俺が元いた場所に水弾が勢い良く通り過ぎていき空へと消えていった。
あの勢いならもし当たっていた場合最悪死んでいた。
誰だ、いったいどこから?
この方向は階段の方か?
狙いは俺か?
いや順当に考えるなら王族であるミレニアの暗殺?
だが殺気は俺だけに向けられていたと思う。
その証拠にミレニアは攻撃されていないようだし。
「誰だ隠れていないで出てこい!」
これで出てくれれば助かるんだが……相手はどうする?
すると階段の方からミレニアと同じ制服を着た青髪の少女が現れた。
目つきは鋭くその堂々とした佇まいから只者でないことが伺えた。
そしてその鋭い目つきから俺を射殺さんと俺だけに殺気を飛ばしている。
まさか堂々と現れるとは。
敵は自分の姿を隠すつもりは無い?
「あんた何者だ?どうして俺を襲った?」
「それはお前がミレニア様に獣が如き顔で襲い掛かったからだろうが」
はぁ?俺がミレニアに襲い掛かった?
確かにミレニアの両肩を掴んで揺らしていたが別に襲うつもりなんて……。
待てよ?はたから見れば男が鬼気迫った表情で美少女の両肩を掴んで揺らしているところを見れば男が美少女を襲っていると勘違いされるのでは……?
そうと認識した俺は謎の少女に向かって慌てて弁明する。
「ちょっと待ってくれ誤解だ!別にミレニアを襲おうとしたわけじゃない!」
「黙れ。現にお前はその穢らわしい両手でミレニア様に触れ発情して襲おうとしただろうが。それに言うに事欠いてミレニア様を呼び捨てにするだと?貴様、楽に死ねると思うなよ」
「だから襲おうとしたことが誤解なんだって!あと俺は発情なんてしてねぇ!」
こいつ俺のことを、発情した獣みたく言いやがった。
心外すぎる。
「嘘をつくな!ミレニア様にあんな品性が欠落した顔を向けておいて自分が発情していないだと?嘘が透けて見えるぞ!」
誰が品性が欠落した顔だよ!
誤解したにせよ、そこまで言われるいわれは無いわ!
それにしてもこの少女、ミレニアに敬意を表してるからひょっとしてミレニアの関係者か?
もしそうならはやくその暴走女を止めてほしい。
「なぁミレニアこの人知り合いか?」
「え?あ、うん彼女はファニエール、私付きの護衛騎士よ」
「なら誤解を解いてくれないか?お前の騎士、今にも襲い掛かってきそうなんだが」
そう言ってるそばからファニエールは騎士剣を構えてその剣先を俺に向けている。
そのファニエールの顔は先ほどよりも怒気の孕んだ顔で俺を睨みつけていた。
なにもした覚えがないのに殺気よりも怒ってるんだけど!?
「貴様ぁ!!三度もミレニア様を呼び捨てにするとは誤解も何も関係なく今すぐにでも殺してやる!!」
「待て待て落ち着け!悪かった!今度からミレニア様と呼ぶからその剣をしまってくれ!」
「え~。私堅苦しいの嫌いだから呼び捨てにしてって言ったじゃない」
「これ以上混乱するようなこと言わないでくれます!?あとお前そんなこと言ってないからな!?]
「呼び捨てでも飽き足らずお前呼びなどと……。たとえミレニア様が許しても私が許さん……!」
「私堅苦しいのは嫌いだけどお前呼びも嫌かな。ちゃんとミレニアって名前で呼んでよ!」
「お前ら一回本当に落ち着けぇー-!」
もうだめだこれ現状が混沌すぎる。
どう収拾すりゃいいんだこれ……。
その後このバカ二人を落ち着かせるのに十分かかった。
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「ハァハァ、これで、誤解だと分かってくれたか?」
「ハァハァ、分かった。誤解は認めよう。だがお前はミレニア様の尊きお体に触れた罪があるのも事実」
「コラ!そんなこと言っちゃダメじゃないこれからこの人は長い付き合いにもなるんだし」
「そうそう。これから長い付き合いになる……ん?」
ちょっと待て、何を言ってるんだこの頭お花畑女は……?
どういう頭してたらそんな話になるんだ?
「……!どういうことですか!ミレニア様!」
「そうだ!長い付き合いになるってどういうことだよ!」
「ノイにはさっき言ったけど、私貴方の力になれるかもしれないって言ったじゃない?」
「あ、ああ。それがどうした」
「それでその力になる方法なんだけど、私の通っている学園で主席卒業するとね、可能な限りでだけど王族がなんでも一つ願いを叶えてくれるの」
その言葉に俺は軽く瞠目する。
それはそうだろう王族が願いを叶えてくれるなら、それは実質国が願いを叶えてくれるのと同じことだ。
例えば自分が大臣職になりたいと言ったなら、それを国が最大限バックアップをして大臣にしてくれるということだ。
だが、いくら主席卒業がすごいからといって、たかが学生である子供に王族がそんな大盤振る舞いするか?
「だけどね?この話には落とし穴があって、さっき可能な限り叶えるって言ったけどそれってつまり叶える願いを私たちが選べるってことなんだよね」
「は?それじゃあ願う意味なんて無いんじゃ?」
「ううん、願う意味ならちゃんとあるよ。去年の主席卒業生なんだけどね。彼は財務大臣になりたいって願って、それで今は財務省で大臣見習いとして働いてるんだ。まぁ、大臣見習いの子はあと三人ぐらいいるんだけど……」
なるほど、つまり今すぐ叶えられない願いは最も願いに近い道筋を用意してあとは自力で叶えろ、ということか。
「それって願いを叶えたっていうのか?」
思わず口から素直な疑問が零れ落ちる。
それを聞いたミレニアは苦笑いを浮かべ「ははは……。それを言われると耳が痛い話だね」と自嘲した。
「でもね、ぽっと出の学生がいきなり大臣になるとやっぱり反発が生まれるし、それに実質毎年大臣職を交代できることになるから引継ぎとかいろいろ大変なのよ」
「ま、そりゃそうだろうけど……。で、たとえ願いを叶えられるんだとしても最低でも三年はかかるんだろ?俺はそんなに待てる自信が無いぞ」
「だけど今有力な情報持ってないんでしょ?だったら主席卒業して有力な情報網を持っていた方が良いよ?それにその三年間私の情報網もかすから」
「それはありがたいけど。それって結局最終的に変わらなくないか」
「あのね、私の情報網とこの国の情報網とじゃ話にもならないよ」
「そうなのか?」
てっきり王族の情報網って言ってたから変わらないものと思ってた。
「それはそうだよ、私個人とこの国とじゃ規模が違いすぎるもの。それでノイは私の話受けてくれる気になった?」
……正直まだ迷っている。
ミレニアの言う通り俺は奴の情報をこの四年間ほとんど得ていない。
それにミレニアの提案はかなり魅力的だ。
今まで奴の情報を得るためにあちこち回っていたが国の情報網を使えれば広く深く奴の情報を探れるだろう。
だけど師匠は王族と、いや貴族だったけか……?とあまり関わらない方が良いと言っていた。
その意味は……まぁ面倒ごとに巻き込まれる可能性があるからなんだろう。
まさに今の俺みたいに。
まぁそんなことは置いといて、ミレニアの話を受けるかどうかに戻るんだが……、本当にどうするか。
普通に考えるなら受けた方が良い話なんだろうけど、三年も拘束されるのはちょっと……とは思う。
だがそれ以上にこのまま一人で情報収取をしていてもあまり意味がないと心の奥底では思っていたので、ミレニアの提案は渡りに船とも言える。
はぁ~、悩んでいてもしょうがないなこれは。
どのみち個人の限界は感じていたし丁度いい。
もうなるようになれ。
「いいぞ。その話受けても。こっちとしても国が支援してくれるならありがたいしな」
ミレニアの提案を受けた旨を伝えたその瞬間にミレニアの顔が喜色いっぱいに染まり見るからに喜んでるのが見て取れた。
こいつさっきまでポーカーフェイス完璧だったのに、こういうふとしたところで素っぽいのを見せるのは反則だろ……。
信用されているような気がしてむず痒しくなる。
「本当!?ノイが断らなくてくれて私嬉しいな!」
よほど嬉しかったのか、心底安心したような顔と声音で喜んでいる。
はぁ、だからそういう顔をされるとどういう反応をすればいいか分からなくて困ってしまう。
「なっ、本気ですかミレニア様!?こんな素性も知れない変態をミレニア様が通われている学園に入れるというのですか!」
ファニエールは焦ったように声を荒げてミレニアに問いただした。
余程俺を学園に入れたくないらしい。
まぁ確かに素性も知れないやつをお姫様の側に置きたくないだろうな。
変態は余計だが。
「本気よ。ノイはジーネルン辺境伯と繋がりがあるし、ノイ事態の実力もあるから他派閥への牽制にもなるわ。と言ってもそれじゃあ貴方は納得しないだろうし、この際だからノイと決闘をして勝った方の要望を聞くということにしましょう」
どうやってこのバカ騎士を説得しようか考えていたら今度はバカ姫がバカなことを言い出した。
本当にどういう思考回路してたらそんな発想になるんだ……。
「おい待て待て、なんでいきなりそんな話になるんだよ!?」
「だってこのままだとファニが納得しないだろうし、この子こう見えて結構単純だから決闘して負かしたら完全にとは言わないけどいくらか納得してくれるかなって」
おーいそこの騎士、単純って言われてるけどいいんですかー?
あっだめだこりゃ顔色一つ変えてねぇ。
というか心なしか満足げな顔してるぞ、お前はいいのかそれで……。
まぁそんなことは置いといてまずは目の前の問題を片付けるか。
「だとしても急に決闘とか言われてもな」
「あー確かに少し急だったかも、ごめんね。だけどファニと闘うことは今言った理由以上に価値があると思うよ?」
「どういうことだ?」
「ノイの実力を学園長先生と学園に通っている貴族の子供に見せつけることよ」
ミレニアは平然と俺に大勢の前で手札を見せろとのたまいやがった。
再三言うけどこの王女様はバカなのかな?
「いやそれのどこに価値があるんだよ。不利益しかないんだが?」
「確かに普通なら損しかないんだけどね。ところでノイは学園の編入制度について知ってる?」
「いや、知らないが?」
なんだ?急に話が変わったな。
学園の編入制度なんて王都に来たばかりの俺が知っているわけがない。
なんせ来て早々厄介ごとに巻き込まれたから情報収集をしている暇なんてなかったからな。
それに俺は世間知らずって前に師匠に言われたし。
「知らないなら教えるけど。本来平民は編入の資格はないんだけど実力が学園にというか学園長だけど、に認められると特例として特別編入学が認められるんだ」
なるほどだから俺に大勢の前で決闘をしろって言ったのか。
それで学園長に実力を認めさせろって言うことか。
いや、待てよ?だったら何も大勢の前で実力を見せなくてもいいのでは?
「なるほど実力を見せるのに意味があるのは分かった。だったら学園長だけに実力を見せればいいんじゃないのか?」
そう言うとミレニアは「確かにそうだね」と一回うなずき、
「だけど大勢の人にノイの実力を見せないと入学した後に毎日決闘を申し込まれるよ?」
「なんだそりゃ、学園の人間はそんなに血の気が多いのか?」
俺のイメージだと、貴族も通ってるんだからもっと優雅な連中だと思ってたんだが、意外とそうでもないのか?
「まぁ確かに他のところと比べると比較的好戦的だけど、ノイの場合は平民だし何年かぶりの編入学だから貴族の子供とかが生意気だって言う可能性があるんだよね。それに単純にノイの実力が気になって決闘を申し込む人がいるかもだけど」
ミレニアは少し申し訳なさそうな顔をして俺の質問を返した。
大方自分は王族なのに反発を抑えられないことを申し訳なく思っているんだろう。
別にミレニアが悪いわけじゃないんだから気にしなくてもいいと思うんだけどな。
それを言ったところでミレニアは多分気にするんだろうけどな。
ミレニアにであってまだ間もないがなんだか少しこいつのことがわかってきたような気がする。
自惚れかもしれないけど。
「あーなるほどな。まぁ気持ちは分からなくも無いが……。それで、その貴族の子供連中にも実力を見せて黙らせろってことか。なるほど分かりやすい」
俺は言いながらこれまでの情報をまとめる。
つまり俺は学園の連中にあのバカ騎士と戦って学園長と貴族の子供に実力を見せつけて、認めさせろってことか。
正直気乗りはしないが目的のためならしょうがない。
いっちょ派手に暴れてやるか!
「事情は大体わかった。いいぜそいつとの決闘受けて立つ!」
決闘を受ける旨を伝えた瞬間ミレニアは笑顔を浮かべて、
「よかったノイが受けてくれて。それで決闘の日時だけどおよそ二日後の予定ね。詳細は改めて明日説明するけど、ノイは今晩泊まる宿とか決めてあるの?」
今晩泊まる宿か……。いつもなら先に下見をして決めておくんだが、今日は王都について早々ミレニアの相手をしたから決めてないんだよな……。
「いや、特に決まってないが」
「それじゃあオススメの宿、紹介してあげよっか?ノイが泊まる宿が分かれば使者を送れるし」
ミレニアのオススメの宿か……。
正直いって今からこの広大な王都の中からよさそうな宿を探そうと思ったらかなり骨が折れるし、かなり助かる提案だ。
ただ懸念すべきことが一つある。
「その宿って……結構高い?」
ミレニアは自分の顎に手をつけて「う~ん」と唸ると、
「高い方なんじゃないかな。でもあんまり気にしなくていいよ。私が代わりに払うから」
は!?どういう風の吹き回しだ?
あんなに高い店を奢らせたのに自分から奢るなんて。
ミレニアの真意を探るためミレニアを注意深く見てみるがよくわからないなこれ。
「それは助かるけどいいのかよ?今金持ってないんだろ?」
「ああ、お金のことなら気にしなくてもいいよ。私名義で後で払っておくから」
「そういうことならありがたく奢られてもらうけどさ……」
う~ん真意は分からない、分からないがま、何とかなるだろ。
俺は早々に考えるのをやめた。
「それじゃあ宿の場所を紙に書いて渡すから、この後は一人で行ってくれない?お金の事なら今から渡す紙に私の魔力で王家の紋章を刻印するから、それをお金の代わりにしてね」
そう言ってミレニアは鞄から紙とペンを取り出して何かを書き始めた。
そして何かを書き終えると紙に魔力を込め始めた。
「色々聞きたいことがあるけどひとまずは置いといて、渡した後はミレニアはどうするんだよ」
魔力を込め終わったのかさっきまで魔力を込めていた紙を折り畳んで俺に差し出す。
俺はそれを受け取りポケットの中にに紙を入れる。
ミレニアは俺が紙をしまったのを確認した後口を開いた。
「とりあえず私とファニは一度学園に戻って色々と根回しをしないと」
「根回し?」
「ええ、私一人じゃ会場のセッティングなんてできないもの。それじゃあ渡すものも渡したし私たちは行くね。また二日後に会いましょ?」
笑顔で軽く手を振った後ミレニアは階段のほうに歩いていきそのまま下へ降りて行った。
一方ファニエールの方はというと「なっ!お待ちください。ミレニア様!」と言い慌てて後を追いかけていく。
そしてなぜだか一瞬止まると顔を振り向かせて鋭く睨んだ後今度こそミレニアの後を追って下へ降りて行った。
二人が完全にいなくなったのを確認したあと俺は細くため息をつく。
俺は落下防止用の柵まで近づきそれに手を置いて眼下に広がる街を眺めながらこれまでのことを思い出していた。
「なんか王都について早々いろいろなことに巻き込まれすぎてるな俺」
今までも結構な面倒ごとに巻き込まれたがここまで厄介だと思ったのは初めてだ。
はぁ、今更後悔していても仕方ないとりあえず宿に行ってみるか。
そして俺もこの時計塔を後にした。
という訳で次回いよいよ戦闘パートです!
やっとかよ……。(自問自答)