【ロケット時空探偵事務所】「秘密のメモ帳~このメモ帳に名前を書くと…~」【前編】
【電光不動産 営業部オフィス】
早川「(M)俺の名前は早川昇。電光不動産の平社員だ。」
原島部長「おい早川。ちょっと来い。」
早川「は、はい。何でしょうか?原島部長。」
原島部長「お前、先月の契約は何件取れた?」
早川「ゼ、ゼロです。」
原島部長「その前は?」
早川「ゼロです。」
原島部長「(息)お前は何のために会社に来ているんだ?」
早川「……」
原島部長「お間に営業は向いてないんじゃないか?そんな不愛想で誰にも好かれない性格じゃ契約が取れないのも仕方ない。いっそ辞めたらどうだ?」
早川「お、俺は……」
社員A「(笑)「おい、笑うなよ」
社員B「だって部長ったらあんなにはっきり言うんだもん。」」
早川「くっ……」
【帰社する早川 夜道】
早川「くそっ。原島部長も他のみんなも言いたい放題言いやがって。俺だって……」
【手帳が振ってくる】
早川「ん?メモ帳?珍しいデザインだな。」
ティオ「あらあらあら~、すみません。それ、わたくしのメモ帳なんです~。」
【白い羽がついた女の子が飛翔して近づいてくる】
早川「な、なんだあんたは?」
ティオ「わたくしは天使のティオ。」
早川「は?て、天使?」
ティオ「はい。そのメモ帳の持ち主です。しかし困りましたわね~。それをあなたは拾ってしまったのですからもうあなたのものという事になってしまうのでしょうか~?」
早川「は?あ、アンタの物なんだったら返すよ。」
ティオ「あら?いいのですか~?」
早川「え?」
ティオ「それは秘密のメモ帳。そのメモ帳に誰かの名前を書くと書かれた本人の秘密が名前の下に浮かび上がってくるのです。」
早川「は?何言って…」
ティオ「それを使えばあなたは会社で馬鹿にされなくて済むのではないでしょうか?」
早川「ど、どうしてそれを?」
ティオ「さあ?どうしてでしょう?」
早川「(M)ほ、本当なのか?この天使が言うことが本当なら…」
早川「おおおお!ほ、本当に文字が浮かび上がってきた!しかも俺の秘密が!?な、なんで?」
【ティオが手帳を覗く】
ティオ「あらあら~これは…」
早川「わあああ!み、見るなよ!で、でも凄い。これがあれば俺は……」
ティオ「ふふふ…」
犬のチクワと猫のナッツに起こされる少年のロケット
チクワ「おーいロケット!起きろ!」
ナッツ「おーきーてー!」
ロケット「なになに?もうちょっと寝させてよ。」
ナッツ「もう10時よ!!」
ロケット「いいじゃん今日は予定ないんだから。」
チクワ「それがそうでもないらしいぞ?ロディさんが呼んでんねん。」
ロケット「え?」
【ロケットとうり二つのクールな少年のロディ】
ロケット「ロディおはよう。」
ロディ「今から出かけるぞ。準備しろ。」
ロケット「ええ?どこに?」
ロディ「電光不動産の社長から依頼の電話があった。今から向かう。」
ロケット「ええ?企業の社長からの依頼?」
ナッツ「これは報酬が期待できるわね!!」
チクワ「銭ゲバ…」
ロケット「オッケー!じゃあ行こう!」
チクワ「あいつ準備とかないんか?」
ナッツ「フッ軽ってやつよ。」
【電光不動産の社屋 廊下】
早川「秘密のメモ帳のおかげで毎日が楽しい。ティオ、お前のおかげで俺の人生は変わったよ。」
ティオ「それは良かったです~。でも早川さん、他の人がいる前で私と話していたら怪しがられますよ~?」
早川「大丈夫だろ。お前の姿が見えるのはこのメモ帳を持っている俺だけなんだろ?どうやってバレるって言うんだ?」
【電光不動産の社長室】
白神社長「よく来てくれたねロディ、ロケットくん。私がこの電光不動産の社長だ。」
ロケット「よろしくお願いします。」
白神社長「さっそくだが依頼したいことはこれだ。」
ロディ「なんですか?これは?」
白神社長「昨日うちの会社に届いた脅迫状だ。」
ロケット「身代金1000万円を用意!?こ、こんなの警察に言いましょうよ!」
白神社長「いや、それができないから君たちを呼んだんだ。」
ロディ「どういうことですか?」
白神社長「犯人は我が社の社員の秘密を掴んでいるんだ。」
チクワ「秘密?」
白神社長「ああ、それも我が社の信用問題にかかわる内容ばかりで外部に漏らすことはできない。だから君たちにお願いしようと思ったんだ。」
ロディ「ふむ……」
ナッツ「その秘密ってどんなものがあるのかウチらは聞いてもいいですか?」
白神社長「……社内恋愛事情、求人情報の不正記述、パワハラ、横領、物件の不正記述、政治家への賄賂、役員幹部らの学歴詐称、下請け会社への圧力……ぐらいかなあ??」
ロケット「ん?」
ナッツ「え?」
チクワ「やっとんなあ。」
ロディ「大したことないみたいなテンションで言わないでください!」
白神社長「頼む!これが社外に漏れると我が社の社員は路頭に迷う!何とかしてくれ!」
ロディ「わかりました。秘密は漏らさないようにしますが不正の是正はちゃんとやってください。ウチの信用問題にも関わる。」
白神社長「も、もちろんだ!」
チクワ「ほんまか?」
白神社長「え?」
ロケット「どうしたのチクワさん?」
チクワ「さっきの秘密の中になんで社長の秘密だけないんや?」
白神社長「そ、それは!」
チクワ「俺の千里眼を前に嘘ついても無駄なんや。知ってんぞ?お前がそこの秘書と不倫関係やってことはなあ!!」
白神社長「ギクゥ!」
ナッツ「サイテー……」
ロディ「社長、それは本当なんですか?」
白神社長「……か、彼女は悪くないんだ!」
ロケット「そういうのいいです!」
【社長室を出るロケット、ロディ、チクワ、ナッツ】
ロケット「こんな不正だらけの会社を救う必要あるの?」
ロディ「社員全員が悪いというわけではないしどんなに信用を失うことをしていても対処は慎重にするべきだ。俺たちはその手助けをすると考えればいい。」
ロケット「なるほどね。」
ナッツ「でもどこから手を付けるの?」
ロディ「まずは社内を調査していこう。」
ロケット「社内?裏切者がいるって事?」
チクワ「あれだけの情報を持ってるってことは内部から情報が漏れた可能性が高いって事や。」
ロケット「なるほど。」
ロディ「よしすぐに準備するぞ。」
【営業部のオフィス 専務の飯島が社員に報告する】
飯島専務「みんな集まってくれ。今日で原島部長が退職することになった。」
男性社員A「え?そんな急に?」
飯島専務「皆驚くことも多いと思うが、今は会社も踏ん張り時だ。気を抜かず頑張ってほしい。」
男性社員A「……」
飯島専務「そこで次の部長の席なんだが、早川君にお願いすることになった。」
男性社員A「はあ??!な、なんで早川なんですか?」
飯島専務「この部署で一番営業の成績がいいのは早川君だからだよ。確かに彼は若いがウチの会社は今後実力を重視していく方針なんだ。年功序列は力ある若者を窮屈にしてしまうからな。君も結果さえ出せばすぐ昇進できる。応援してるぞ。早川君、頼んだよ。」
早川「はい、ありがとうございます。」
ティオ「よかったですわね~、早川さん。」
男性社員A「おい早川!!てめえ今度は何やったんだよ?お前が営業の成績良くなったのはここ数日だけでの話だろ?それより前は一ミリも会社に貢献していなかった!お前、飯島専務に何言ったんだよ?」
ティオ「キャッ、あらあら~」
【秘密のメモ帳に社員Aの名前を書く】
早川「会社にいくら貢献しても、横領はダメでしょ?」
男性社員A「え?……」
早川「しかも3000万円も。上にバレて会社クビになって、返せるんですか?……」
男性社員A「く……」
【にぎわう社員食堂 OLの恰好をしたナッツが二人の女性社員に話しかける】
ナッツ「すみませ~ん。ここいいですか?」
OL1「え?何この子?」
OL2「可愛い~」
ナッツ「人材不足で最近派遣されて来たナッツです。ウチこの会社の事まだよくわからなくて~、色々教えてほしいんです~。」
OL1「いいわよ。何が知りたいの?」
ナッツ「この会社のネット求人情報と実際の待遇が違うんだけど、あれ書いたのって誰~?」
OL1「あーわかる、それみんな思っててさ~!でも誰が書いたかまではわからないなあ。」
OL2「ねえねえ、尻尾触ってもいいですか?」
ナッツ「え~、ちょっとだけですよ?」
【オフィス 女性主任が疲れ息を漏らす】
女性主任「(疲れ息)」
ロディ「主任、お疲れみたいですが。」
女性主任「ああ、ありがとう。大丈夫よ。」
ロディ「今日はもう休んでてください。残りは僕が」
女性主任「あ……何言ってんのよ。今日入ったばかりの新人に頼ってられないわよ。私は大丈夫よ……」
ロディ「頼ってくれ。俺を。」
女性主任「あ…ああ…」
ロディ「その代わり、今晩食事に連れて行ってほしいんです。この会社の事、もっと色々知りたくて。」
女性主任「え、ええ…いいわよ。」
【静かな会議室 秘密で社内恋愛中の社員】
男性社員B「ふう、まだ来てないか。」
OL3「「ばあ!!」
男性社員B「わああ!びっくりした。」
OL3「「もう~おそ~い!10分も前から待ってたんだよ~。」
男性社員B「ごめんっ。」
OL3「「ん~どうしよっかな。じゃあ許したげるっ!」
OL3「「じゃあ許したげるっ!(何回もループ再生される。以降シーン10の終わりまでずっとループ。)」
男性社員B・OL3「ん?」
チクワ「お前らよう恥ずかしげもないことペラペラ言ってくれたな。」
男性社員B・OL3「わああ!!」
男性社員B「なんだ?お前は??!」
チクワ「そんなことどうでもええねん!お前らな不倫すんねやったら社外でやれ!絶対バレるやろ!おいお前らの関係知ってんの他に誰かおるんか?」
男性社員B「い、いえ。言うわけないじゃないですか。」
チクワ「バレとるから言うてんねん。お前らのせいで困るやつがおるんや!俺の千里眼の前では嘘はつけへんねん!」
男性社員B「や、やめてくださいー!」
OL3「「もうーいい加減その録音消してよ!」
チクワ「なんで喋ったんや?絶対バレたらあかんやろ!」
男性社員B「喋ってないですよ!」
OL3「「ねえもう消してってば~!」
ロケット「み、みんな凄いな。僕も頑張らなくちゃ!」
【社員食堂】
ロケット「頼ってください。僕を。あなたの力になりたいんです。」
食堂のおばちゃん「はあ~、もっと強くお願いね。」
ロケット「はい!これでどうですか?」
食堂のおばちゃん「ああ~いいね、そこ、そこ。はあ~、うまいねえアンタ。そうだ!アンタ知ってる?営業部の原島部長、辞めちゃったんだって!」
ロケット「原島部長?」
食堂のおばちゃん「そう!それも急によ?でねそのあとに部長になったのが同じ営業部の早川君って子なのよ!」
ロケット「早川?」
食堂のおばちゃん「そうなのよ!まだ30手前の若い平社員なんだけどね?声もハッキリ出さない目立たない子なのよ。それがいきなり部長よ?」
ロケット「……」
【営業部のオフィス 早川とティオだけがいる】
早川「おい、ティオ!見ろよ!アイドルのほとんどに恋人がいるぞ。これを世間に公表したら世の中狂っちまうんだろうな。」
ティオ「気分がよさそうですわね~。」
早川「ああ、楽しいよ!秘密の口止めを引き換えにすれば他の奴らが取った契約も俺のものになったし、嫌な上司も追い出せた!このメモ帳があれば俺はなんだってできる!大金持ちにだってなれる!!」
【社長室】
白神社長「どうだ?何かわかったか?」
チクワ「俺は社内中の不倫してる奴らに聞き込み調査したんやが、どんなに仲がええ友達にも流石に不倫の話を漏らす奴らはおらんかった。」
ナッツ「ウチも収穫はないわね。求人サイトの不正な記載をした人を誰が知ってるか聞き込みしたんだけどそんなこと誰も興味ないから人事部の人しか分からなかったわ。」
ロディ「いや、二人の調査は無駄じゃなかったぞ。」
白神社長「え?」
ロディ「俺は役員の学歴詐称について調べようと思ってデータベースを洗っていたんだ。そしたら社長にもらった社員の秘密のリストと照らし合わせてあることが分かった。」
白神社長「ほ、本当か?何が分かったんだ?」
ロディ「まず一つはそれなりの役職がある社員の秘密が多く漏れている。電光不動産は従業員が多いが平社員の間でも名の通った部長クラスや役員はリストにほとんど載っている。」
白神社長「た、確かに。」
ロディ「次に年齢だ。秘密が漏れている社員のリストには28歳,29歳の社員が多い。」
ロケット「28,29歳?」
ロディ「そして最後は営業部の社員に集中しているという事だ。」
チクワ「つまりどういうことですか?」
ロディ「チクワとナッツの調査から社内不倫をしている人も求人サイトの管理者もごく一部の人しか知らない事だ。そして想像してみてくれ。自分の周りの人間の秘密がわかるとした時、誰の秘密を知りたい?」
ナッツ「そうね、友達、先輩、有名人とか?」
ロディ「そうだろう。自分の周りの人や同僚、権力がある人なんかもそうだ。権力者の弱みを握れば出世に利用することもできる。つまり裏切者は営業部の28,29歳の誰かだ。」
ロケット「もしかして、早川さん?」
ロディ「ん?どうして早川だと思ったんだ?というか知ってたのか?」
ロケット「食堂のおばちゃんに聞いたんだ。30手前の早川って人が最近営業部の部長になったんだって。前の部長は急に会社を辞めたんだって。もし前の部長が何か弱みを握られて会社を辞めることになったんだとしたら辻褄が合うんだ。」
ロディ「さすがだな。ロケット。」
チクワ「どういうことですか?ロディさん?」
ロディ「営業部の社員で唯一リストに名前がないのが早川昇。こいつが犯人だ。」
【つづく】
当チャンネルで配信しているアニメの台本です。
本編がこちらです。
【アニメep5前編】「秘密のメモ帳~このメモ帳に名前を書くと…~」【前編】【ロケット時空探偵事務所】
https://youtu.be/y4dYDKSrzXA
【アニメep5後編】「秘密のメモ帳~このメモ帳に名前を書くと…~」【後編】【ロケット時空探偵事務所】
https://youtu.be/p2ydz86vYGI