アリとアリクイの戦い
ここは南米の草原、点々と蟻塚が建っています。
蟻塚の中は、どうでしょう。
「ワッセ、ワッセ、餌運べ。」
働きアリ達が、餌を巣の奥へ運んでいます。
「母さん、今日は、ミミズを狩ってきたよ。」
「我が子供達、無事におかえりなさい。」
女王アリが働きアリ達を労う。
「今日ね、狩りの最中に、西の木の傍の蟻塚が、アリクイに襲われてたんだ。」
「まあ、貴方達は、見られなかった!?」
「うん、アリクイは、蟻塚に夢中だったから。」
「そう…、引っ越しするべきかしら…。」
女王アリは、アリクイの動向を、観察してもらいながら、引っ越し先の検討をする。
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その頃、アリクイは、木の下で休んでいた。
「食った食った、アリはやっぱウメーな。」
ジュルッと、舌舐りをしながら、思い出す。
「あの慌て様は、良かった良かった。」
先程の光景を思い出していると、段々お腹が空いてきました。
「次の蟻塚はと…。」
アリクイはムクッと起きると、周りを見渡します。
「あれは、昨日壊した蟻塚だし、次は東側だな…。」
アリクイは、東を向くと、3つの蟻塚を見つけました。
「あれが近いな。」
アリクイは、蟻塚目掛けて走ります。
ドドドドッ!
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その頃アリ達は。
「母さん、アリクイが近づいてくるよ!」
「あらあら、どうしましょうどうしましょう…!」
女王アリはアタフタします。
「まっ、まだ2つ蟻塚があるから、大丈夫…。」
「そっ、そうなのね…、じゃあ、皆避難しましょう!」
女王アリの掛け声で、一斉に引っ越しの準備を始めた。
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1つ目の蟻塚へ来たアリクイは、早速穴に舌を入れます。
ベローン…。
「あれれ、アリがくっつかないぞぉー!」
アリクイは、次に蟻塚の側面を壊しだした。
ガリガリ、ガリガリ。
すると、奥に隠れていたアリ達が、一斉に飛び出した。
「うぉー、出た出た!」
ペロペロ、ゴクン、ペロペロ、ゴクン。
アリクイはどんどんアリを食べていく。
「この、卵が美味いんだよな。」
ペロペロ、ゴクン、ペロペロ、ゴクン。
アリクイは、蟻塚を破壊しつくし、アリ達を食べていく。
「おっ、大っきいの発見!」
アリクイは、女王アリを食べ、全て食べたが、まだお腹は満たされなかった。
「まだ、食べ足りない…。」
アリクイは、次の蟻塚へ向かった。
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「母さん、アリクイが、隣の蟻塚に来るよ!」
働きアリ達は、ブルブル震えだします。
「我が子達、アリクイを撃退しましょう。」
「母さん、どうやって撃退するの!?」
「それは、叔母さんと決めてくるわね。」
女王アリは、叔母を連れ、部屋を移動した。
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「女王、一体どうするつもりだ?」
「私、アリクイに食われようと思うの。」
「!!」
叔母達は、驚いた。
「それはダメだ、何を言っているんだ!」
「私は、口の中で、暴れようと思うの。」
「ダメだ、ダメだ!」
叔母達が首を横に振る。
「それなら、私が囮になろう。」
「姉さん、私も。」
叔母達が次々と名乗りを上げる。
「姉様に妹達まで…。」
「女王は、女王らしく、皆を守るのだぞ。」
「はい…。」
女王アリは、ポロポロと涙を流した。
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アリクイは2つ目の蟻塚にやって来た。
「アリよ、沢山出てこい!」
アリクイは、いきなり蟻塚を壊し出した。
ザクザク、ザクザク!
しかし、その蟻塚は蛻の殻でした。
「なんだ…、残念、食べられた跡か…。」
アリクイは地団駄を踏み悔しがった。
「食べたなら壊しとけよ!」
アリクイはプンプンしながら、3つ目の蟻塚へ向かうのだった。
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3つ目の蟻塚では、撃退の準備が整っていた。
「女王よ、巣は頼んだぞ。」
女王アリは頷き。
「姉妹達、頼みます。」
女王アリは、涙目になりながら、姉妹達100匹を見送った。
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蟻塚の入口付近では、叔母達が待ち構えている。
「さぁ、姪達を守るわよ!」
叔母達は気合を入れたその時。
ベローン!
「来たわ!」
アリクイが舌を挿し込むと、叔母達は舌にくっついた。
ニュルニュルニュル。
一瞬で20匹がアリクイに食べられた。
「ここには、アリが居るみたいだな。」
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アリクイの口の中では。
「皆、アリの顎の力をみせてやるわよ。」
食べられた叔母達は、散らばり、あちこちを挟みまくった。
ベローン!
「また、食べられてくるわよ!」
ニュルニュルニュル
次に40匹が来た。
「皆、頑張って!」
ベローン!
ニュルニュルニュル!
最後に40匹が来た。
「挟んで挟んで挟みまくるのよ。」
ギュッ!ギュッ!
「痛たたた!」
ガジガジ!
「口が痛い!」
アリクイは、100匹のアリに口中を挟まれ、転がり回る。
何匹かは、口の外に出ると、鼻の中に入り、鼻毛を引っ張る。
ハックション、ハックション!
「鼻も痛い!」
更に何匹かは、目まで上がり、目に入っていく。
「コラッ、目に入るな!」
アリクイは、瞬きをしますが、アリ達は、やめません。
「これはたまらん!」
アリクイは飛び跳ねると、蟻塚から、逃げて行きました。
「ヤッター!」
アリクイから落ち助かった20匹程の叔母達は、勝鬨を上げ、蟻塚へ帰ります。
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蟻塚では、女王アリ達が、巣の奥でアリクイが去るのを待っています。
「帰って来たぞ!」
入り口から声が近づいてきます。
「叔母さん達だ!」
姪達が駆け寄ります。
「犠牲は沢山出たが、アリクイは撃退したぞ。」
女王アリの元へ駆け寄り姉妹達が言います。
「良かった、良かった。」
女王アリは、涙を流して喜びました。
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日が暮れて、アリ達は、祝勝会を開きました。
「祝蜜だ、飲め飲め!」
アリ達は、して夜が明けるまで宴を開き、また、蜜集めの日々に戻りました。
◇おしまい◇