第6話 オオフクロウ
「キエーーーーーイ!!」
猿叫を上げて刀を振るう、コウ クリバヤシ 28歳。本日ビックビートル46匹討伐しもうした。
今日はこのへんにしておくか。帰りの際に商人アントンに素材を納品する。
「ビックビートルの外皮34枚だけど、銀貨1枚と銅貨2枚でいいか?」
「ああ、それでいい」
「毎度―」
ギルドへ向かいルーシー担当の7番窓口へ並ぶ。
「G級魔石46個ですか。コウさん大成長ですね」
「素材は重いので現地の商人に卸しました」
「気にしなくていいですよ。冒険者ギルドよりも商人が高く買い取ってくれるから皆商人に卸していますし。魔石46個で大銅貨9枚と銅貨2枚ですね。現在52個納品しております。それではまた明日―」
続けてドンドン屋に向かい、下着を購入した。
庭で日課の素振りを終え、シャワーを浴びてさっぱり、下着もさっぱりでようやく一息つく。本日を振り返るが、成果のある1日であった。レベルも上がり先行きも明るいし、刀の刃こぼれもない。明日もカブト狩りの一択だな。
「次の方どうぞ」
「ルーシーさん、お早うございます」
「コウさん、本日はどうされますか?」
初心冒険者は薬草を集めるしか依頼はないが、生存報告でギルドに顔を出す。
「本日もルーボの森で魔物を狩ります。薬草依頼は受けません」
「それでは気をつけて討伐お願いします」
「ヒャッハーーー!!」
異常にテンションが上がり、世紀末の荒野をバイクで駆けるモヒカン達のような奇声を上げて、刀を振っているが寝る前賢者モードに入ったら死にたくなりそう。
30匹ほど両断し、きりがいいので大木を背に昼食のパンを食べ始めた。この辺りは大分狩ったから移動しようと考えていると、バサバサっと翼を羽ばたかせる音が背後から聞こえた。
刀を抜いて大木を回ると、矢の刺さった大きなフクロウがいた。フクロウは目を大きく開き俺を威嚇したが既に抵抗する力はないようだ。
可哀想と思った俺は矢を抜き、血の噴き出る矢傷にポーションを流し込むと、傷口がポーションの力で塞がっていく。
「これなら大丈夫そうだな」
呟いた俺を大きなフクロウはじっと見つめていた。
「あの辺りに落ちたはずだ」
他の冒険者パーティーが大声をあげながら駆け寄ってきている。拙いと思い、素材袋内へフクロウを素早く押し込んだ。
「おい、そこのあんた。オオフクロウを見なかったか?」
アイアンカラー、E級冒険者達に声をかけられる。
「はい?フクロウなんて見ていませんよ」
「本当だろうな。隠していたらただじゃ置かないぞ。あいつはオオフクロウで、E級上位の魔物だ。矢が命中している身体ではそう遠くはいっていないはず」
「そうは言っても見てないものは見てないですよ」
「よしお前達、あっちの木周辺を探すぞ」
向こうの木に移動する3人組である。今動くと怪しまれるな、素知らぬ顔でカブト狩りを続けた。
更に5匹倒し、周りを見渡すと奴らの姿が見えない。大分早いが帰ろう。このままギルドに行くのも拙いか…とりあえずドンドン屋で使用したポーションとボアの肉を大銅貨2枚で購入し、宿泊先宿屋リカバーに向かった。
部屋でオオフクロウを取り出すと、
「ホッホー!」
俺の顔に擦り寄ってきた。懐かれたのかな?
「腹は空いてないか?ボアの肉だけど食べるかな?」
呟きながらボアの肉を取り出し、小間切りにするとオオフクロウは肉を啄み始めた。
「食欲があるってことは、多分大丈夫だよな…」
一息ついたので魔石と素材を納品していないのを思い出した。
「いい子で待っていろよ」
あのフクロウどうしよう…分からないことは聞くに限るか…そうしようと納得する。
「G級魔石35個と、ビックビートルの素材35個で合計銅貨175枚です。魔石納品は87個になりました」
「つかぬ事を伺いますが魔物が懐くことはあるのでしょうか?」
「コウさんって調教師でしたっけ?剣士ですよね。調教師以外の人が魔物を調教するのはまずありえません。ごく稀に卵から孵った魔物と共に過ごした人が連れていることがあるくらいです。調教した魔物ですが従魔登録をギルドで出来ますよ」
「従魔登録した魔物とパーティー組むことできますか?」
「登録した魔物はカードの他に従魔の首輪をつけてもらいます。ルボンの街で暴れた時の対策なのですよ」
「親切な説明ありがとうございました」
部屋に戻るとオオフクロウは既に食事を終えて眠っていた。
従魔登録ってまた銀貨取られそうだな。そういえば、氣とか回復する力ありそうだけど…。よし、やってみよう。
氣を集めオオフクロウの傷跡に向かって右手をかざす。きてます、氣が俺の右手にきてます、なんか怪しい気功術士みたいだな。多量の発汗し就寝した。
「そういえばお前に名前をつけてないな」
さすが魔物回復力半端ないな、一晩で回復しましたよ、この子。
「ホッホー。ホッホー」
上機嫌なオオフクロウ。名前か、ホッホー鳴くからホーでもいいし、ヘーでもいいか。
「よし、ホーでどうだ?駄目ならへーだ」
気に入らないのか首を左右に振っている。こいつ、言葉理解しているのか?
「じゃあ、フクロウだからフーでどうだ?」
「ホッホー!」
ご機嫌な様子だ。
「よしお前は、フーだ。オオフクロウのフーだ!」
「ホッホー!」
「朝からうるせーぞ!」
叫び声を上げて隣人が壁をバンバン叩いてきた。なんかすいませーん。
目立たぬよう素材袋にフーを押し込み宿屋からギルドに向かう。
「おはようございます。従魔登録したいのですがどちらの窓口ですか?」
「従魔登録でしたらパーティー申請もありますので、16番窓口ですよ」
従魔が珍しいのか16番窓口に待ち人はいなかった。
「従魔登録したいのですがどうしたらいいですか?」
「まず魔物に従魔の首輪をつけて下さい。その後対象の従魔をここに連れて来てください。くれぐれも皆さんを驚かせないことです。討伐の対象となりますので」
「従魔の首輪はどうすればいいですかね?」
「ここにありますよ。銀貨1枚です」
銀貨1枚取り出した後、素材袋からフーを出す。担当のリーリィはビクっとしたが、
「オオフクロウの従魔で名前はフーですか、E級上位の魔物ですね。首輪をつけますので少し間おとなしくしていて下さいね」
手際よくリーリィが首輪を嵌める。
「はい、フーさん、いい子でしたね。従魔登録とパーティー登録致します。従魔登録料は銀貨一枚です」
巾着袋から大銅貨10枚取り出すが、銅貨50枚もない…。パーティー登録料請求されたら払えないぞ…。
「従魔登録終了です。パーティー登録も行いますのでコウさんのカードをお預かり致します」
「はい、パーティー登録終了です。コウさんはパーティー組むのは初めてでしょうか?」
「はい。何かあるのでしょうか?」
「ギルドの規約を破ると以後パーティーを組めません。詳しくは冒険者の心得を読んで下さいね。倒した魔物の経験値が、パーティーメンバーに分けられます。経験値にはパーティー全員に分けられる最低経験値と戦闘貢献度に応じて変化する貢献経験値がありますので」
「貢献経験値ですが、最も有効なのはどんなことでしょうか?」
「止めがもっとも有効ですよ。前衛が弱らした魔物を後衛の術士や低レベルの人が倒すことで貢献経験値が獲得できます」
「具体的にどれくらいですか?」
「4人パーティーですと最低経験値はおよそ2割程度分けられますよ。人数に多くなればその分少なくなります。貢献経験値は止めを刺した者に2割入りますね」
「はい、コウさんのカードと従魔カードお返しします。それからパーティー名はどうされますか?保留にしておきます?」
「保留でお願いします」
「それでは保留で。ありがとうございました」
その後肩にフーを乗せて7番窓口へ向かうが、ルーシーがフーを興味深く眺めている。好きな子の気を引こうと小細工しているわけじゃないですからね…。
「コウさん、その子オオフクロウですよね?従魔にしちゃったのですか…魔物は自分より強くないと懐かないです」
「そうでしたか、フーといいます。怪我していたところ助けたら懐かれちゃって」
「へぇー、そのパターンでも懐くことがあるのですね。フーちゃん、可愛いですね。今日はどういたしますか?」
「薬草採取無しで。今日もルーボの森で魔物狩り致します」
「わかりました。怪我の無い様気をつけて下さいね」
ギルドからルーボの森へ移動する合間に従魔カードを確認すると、
従魔カード 冒険者ギルド ルボン発行
マスター コウ フー オオフクロウ
ステータスカードを取り出しステータスを見ると、フーも追加されていた。
コウ クリバヤシ(28歳)174㎝ 70㎏
レベル2 HP 70 MP 12 氣力14 職業 剣士
スキル 修行 剣術4
装備 刀(数打ち)、脇差(数打ち)、布の服上下、皮の靴、旅人のマント
フー E級モンスター
レベル1 HP 40 MP22 職業 オオフクロウ
スキル 鷲掴み2 爪2 クチバシ2
フーさん、攻撃スキル3つもあるのですね。それに鷲掴みってあんた梟でしょ。
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