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第5話 カブト狩り

高級な宿屋から安宿と吟味しながら歩く俺こと住居不定、コウ クリバヤシ28歳、彼女無し。哀愁漂っているだろうな。


宿屋リカバー 冒険者大歓迎 個室 シャワートイレつき1泊2食大銅貨6枚と書かれた看板が目に入った。建物も綺麗だし、ここに決めたと扉を開く。


「いらっしゃい。1名様ですか?」


でっぷり超えた女将さんが愛想よく問いかけてきた。中は思ったよりも明るいし電気のような照明設備も整っている。


「こちらに名前を記入して下さい。部屋は3階の302号室です。食事はここの1階ホールが食堂になっていますのでそこでお願いします。夜は9時まで営業、朝は6時からやっていますので」


金を支払い部屋に向かうが雰囲気のいい宿屋だ。あと個室がよければ延長だな、個室は掃除も行き届いた8畳程度の部屋であった。荷物を降ろし木刀を持って宿屋の庭に向かい日課の素振りを行う。


今日は目まぐるしい一日であった。異世界転移に修行の間で剣聖上泉信綱と出会いと稽古、素振りは師匠に教わった点を考慮して振る。


素振りを終え夕食、シャワーを浴びて無精髭を剃るが、ここで替えの下着が無いことに気付いてしまった。仕方が無い、ここは心を殺し連投だ。シャワーを浴びた後、忘れぬうちにと受付に向かい女将さんへ延長したい旨を告げる。


部屋に戻った俺は、今日の経験を生かし明日を生き抜くために考える。ある日【ヒューマンファクター】という本を叔父から読めと紹介された。


人間は機械ではなくミスをする、ミスを防ぐには…この考え方を徹底して教えられた。失敗しない為に何をするか、何が悪かったかを考える。そして【リスクアセスメント(危険予知)】を行う。


ナメクジの俺にぴったりのこの思考は型に嵌った。この思考は冒険者でも応用が利くだろうか?今の俺は人より刀を振るのが優れているだけだ。うーん、明日以降に賭けるしかないな。


現在所持金銅貨65枚しかない。下着も購入しないといつまでも連投は辛いので中継ぎが必要だ。今日感じたが薬草採取はけっこうつらい。薬草採取とホーンラビットとおおねずみを一日狩っても10匹程度、おそらく銀貨1枚程度が限界だろう。


魔石300個どうにかしないと初心冒険者から昇級できない。うーん、他の冒険者を探すか?アラサーで初心冒険者なんて、俺が10代冒険者なら嫌だぞ。となるとパーティーメンバー探しは保留だ。


ナイフを購入して投擲でホーンラビットをやっつけるか?投擲用ナイフを購入する資金が無い。解体用ナイフを投擲に使う手段はどうだ?問題は1撃で倒せずにそのまま逃げられること。投擲技術も無いし、投擲も難しいなあ。


そうだ!薬草採取にばかり気をとられて、ホーンラビットとおおねずみばかり追いかけていたが、ビックビートルやゴブリンも多いはずじゃないのか。ビックビートルは名前の通り大型カブト虫の魔物であろう。ゴブリンあたりは既に上位種のソルジャーも倒した俺には脅威も感じない。よし明日はカブト狩りにゴブリン狩りじゃー!と、明日の目標を決定する。寝る前に氣を出しつくした後、大量の発汗とともに意識を失った。


朝食時に初心冒険者は7時前にギルドにいたほうがいいと女将さんから教えられた。7時過ぎには中級冒険者達が集まってギルド内の混雑を避ける為とか、女将さん情報ありがとうございます。


混雑時新人冒険者は相手されないでしょうね、昨日みたいに普通に割込みとかされそうだし。宿屋リカバーからギルドまで徒歩5分、通勤時間の短さは非常にありがたい。満員電車でもみくちゃにされた後の会社業務は骨が折れたことを思い出し苦笑いを浮かべた。


ギルドはウッドカラーカードの初心冒険者とストーンカラーのF級冒険者で既に賑わい、ルーシーのいる7番窓口の行列に並んだ。


「次の方どうぞ」

「お早うございます。コウさんでしたね」

「お早うございます。ルーシーさん」


名前覚えてもらってありがとうございます。可愛いので昨日からあえてルーシーの7番窓口に行くと決めた、コウ クリバヤシ 28歳。


「今日はどうされますか?昨日と同じ薬草採取でしょうか?」

「薬草採取ですが今日は遠慮します。ビックビートルって何処にいますかね?」

「ビックビートルは樹液が出る木に張りついていますよ。ただ冒険者の皆さん、この魔物を討伐対象にしていません」


「G級モンスターですよね?なんか理由があるのでしょうか?」

「外皮が固く仕留めるのが難しい魔物です。それに足に棘が多数あり、引っかかれると大怪我を負うことがあります。素材の外皮も安く銅貨3枚ですので倒しやすいホーンラビットやおおねずみと比べるとリスクが大きいのでしょうね」

「ちなみにどれくらいの大きさでしょうか?」

「ビックビートルって言っても40cm前後で1キロに満たない魔物ですよ」



予想どおりか、さあ今日はカブト狩りじゃー!樹液が出る木ならブナやサナギ、クヌギに似た木を探せばいいか。ここで失敗したら明日からせっせと薬草採取するしかない。


あえて背水の陣を引いて自分を追い込む、ウジウジナメクジな性格の自分とはおさらばでござる。ルーボの森へ移動し早速樹液が出そうな木を探す。昨日とは異なり木々を観察していると、いた。ビックビートルだ!


虫は一度攻撃を仕掛けてから逃走する傾向が強い。虫の魔物も似た傾向にあるなら煽るとビックビートルは攻撃態勢に入りこちらに向かってくるはず。刀を抜いて距離を保ち、小石をビックビートルへ投げた。


煽られたビックビートルは、羽を広げて木から飛び立つと俺を目掛けて角を突っ立って向かってくる。なかなかの速度であるが刀を振り上げ振り下ろす。


ザシュ!両断されたカブト虫はボトリと音をたてて地に落ちた。ビックビートルから魔石を取り出し、刀に刃こぼれがないか確認する。


「外皮だが硬さは竹並みだが石や鉄ほど硬くない」


次の獲物と、木々を見るといる!小石を投げつけ、飛んでくるビックビートルを両断!カブト狩りは成功だと確信する。よし後はカブト虫を探して狩り続けるのみ。企みが上手くいき悪そうにほくそ笑んだ。


素材袋が重くなったので、昨日の若い商人のところに向かう。若い商人はアントンと名乗ったので俺もコウと名乗った。


「ビックビートルを狩っただって。状態を見せてもらえるかな」

「全部両断しているじゃないか。コウさんあんた大した腕だね。新人冒険者が狩ると外皮も内臓も滅茶苦茶になる」

「そうなのか、向かってくるからホーンラビットより倒しやすいぞ」

「こいつはこの足の棘が危険なんだ。こいつは、ここにナイフを押し立ててグルリと円を回すように内臓をとるのがコツよ。コウさんあんたもやってみてはどうだい」


アントンに勧められて解体用のナイフでビックビートルの内臓を取り除く。


「うまいな。もうコツをつかんだね」

「指導者が優秀だからな」

「全部引き取りでいいかい。銅貨36枚だけど」

「構わない」

「ほい、大銅貨3枚と銅貨6枚だよ。毎度―」


水筒からグビっと水を飲み一息ついたので再びカブト狩り場に向かった。


「チェストー!!」


薩摩示現流の猿叫を上げてカブトを両断、35匹を狩った後、不思議と力が湧いてくる。慌ててステータスカードを見ると、


コウ クリバヤシ(28歳)174㎝ 70㎏

レベル2 HP 70 MP 12  氣力12 職業 剣士

スキル 修行 剣術4

装備 刀(数打ち)、脇差(数打ち)、木刀、布の服上下、皮の靴、旅人のマント


 レベルアップで思わずガッツポーズする。HPとMPが上昇を確認し、魔物を狩れば強くなれる。いっそうと強く思い、カブト狩りにも力が入るのであった。



読者のみなさまへ



今回はお読みいただきありがとうございます!



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