第4話 冒険者デビュー
この異世界謎が多すぎる。生きている剣聖上泉信綱…どう考えても500歳は超えているはず…。異世界に簡単に行き来出来るコノハナサクヤヒメの侍女カエデさんもそうだが…。悩んでも仕方ない、とにかくまずは街に行こう。
ルーデン王国 ルボンの街はカエデさんの情報だと20万人程度の街でダンジョンが2つあるとのこと。街の外壁は高く10m以上あるな、周りをキョロキョロ見ながら歩いていると街の入り口で門衛に呼び止められた。
「そこの男。身分証はあるか?何用でルボンに来たのだ」
「身分証はありません。冒険者になろうとルボンの街へ参りました」
「本来なら身元確認できないものは追い返すのだが今回だけだぞ。すぐに冒険者ギルドに行って冒険者登録とカードを発行してもらうのだ。ギルドはここからまっすぐ100mほど歩いたら看板が見えるはずだ」
「ありがとうございます。助かりました」
ルボンの街並みは中世ヨーロッパの街並みとよく似ていた。決定的な違いは清潔なこと、あの時代はゴミやら排泄物をそのへんに捨てていたらしいが、この街はゴミや排泄物は見当たらない。
右手側に冒険者ギルドと書かれた大きな看板が見え、ギルドと思われる建物を発見した。ギルドは大きく5階建て、扉を開けてギルドに入ると、受付、個別の面談窓口、待合席、銀行のフロアのようだ。受付の若い女性に声をかけた。
「すいません。冒険者になろうとしている者ですが、どこで冒険者登録ができるのでしょうか?」
「初めての方ですね。冒険者登録ですと1番の窓口です。今の時間帯なら空いていますのですぐに登録できますよ」
名札にソフィアと書かれた若い女性は笑顔で答えた。
「1番ですね、ありがとうございます」
1番窓口にて冒険者登録がしたい旨を伝えると個別テーブルに通され、
「はじめまして、私は冒険者登録を担当しております、サーシャと申します。この度は冒険者登録ありがとうございます。ここでは冒険者カードを発行するためにこちらの水晶をのぞきこんで下さい」
「この水晶ですね。わかりました」
サーシャは水晶をのぞく俺を見てなにやら呪文を唱えている。
「いいですよ。コウ クリバヤシさん。この水晶に魔術をかけると対象者を鑑定できるのです」
「おお、便利な水晶ですね」
「コウさん。冒険者登録と冒険者カードの発行で銀貨1枚頂きます」
「銀貨一枚ですね。はいどうぞ」
銀貨を渡すとウッドカラーのカードを渡された。カードには、
冒険者カード 冒険者ギルド ルボン発行
コウ クリバヤシ 28歳 剣士
と記載されていた。あの短時間で鑑定と発行は凄い。身分証もゲット出来た。
「初心冒険者のコウさんに冒険者の心得をお渡し致しますのでよく読んで下さい。それとポーション1本ですね」
サーシャから冒険者の心得と書かれた薄い説明書とポーションを受け取るが、やはりあるかポーション…。
「あと、月初めにある初心者研修を受けないといつまで経っても初心冒険者ですよ。研修費用ですが、大銅貨5枚必要ですので忘れないで下さい」
「月初めですね、わかりました」
「それではコウさんの登録はこれにて終了です。冒険者への依頼や討伐に関しては2-15番窓口ですのでそちらで確認してください」
2-15番窓口へ向かうが昼前は空いていて、どの窓口も並んでいるが三人程度。待ち時間もすぐだろうと思い、人の少ない6番窓口へ向かう。
「おっさん、どきな」
突然背後から2人の少年が割り込んだ。
「早いもの勝ちなんだよ」
このクソガキと思ったがここで喧嘩するのも大人気ない。仕方なく隣の7番窓口へ向かう。
「次の方どうぞ。ええと、コウ クリバヤシさんですか。はじめましてですよね。私はルーシーと申します」
「ええ、はじめまして、コウと申します」
ルーシーは見た感じ20歳前後、大きな目と黒髪ショートカットが良く似合っている。
「ウッドカラーの初心冒険者には討伐依頼はできません。また初心冒険者ですとダンジョンにも入れないのでご了承下さい。初心冒険者の依頼は、薬草採取ですね」
「どれくらい薬草を集めればいいですか?」
「薬草10束で大銅貨3枚です。薬草ですが、この薬草を集めてください」
ルーシーが絵を取り出し薬草を説明してくれるが、ヨモギに似てわかりやすい。
「薬草ですが取りすぎても1束銅貨3枚で買取りますので何束でもいいですよ。」
「薬草どこに多く生えていますか?」
「どこでも生えていますが、お勧めはルボンの南にあるルーボの森ですね。魔物も出現しますが、ホーンラビットやおおねずみ、ビックビートルと弱く初心冒険者に人気です。但し森の深域に近づくほど魔物の危険度はあがりますので注意してください。賑わっていますのですぐわかりますよ」
「南のルーボの森ですね」
「それとコウさん、解体用のナイフお持ちでしょうか?あと素材袋もありますか?」
「いえ持っていません」
「ギルド隣にドンドン屋って名前のお店がありますのでそこで解体用のナイフ購入していたほうが便利です。退治した魔物には素材や魔石があるので回収するのに解体用ナイフを使うのですよ。袋はその魔石や素材を入れるのに持っておくと便利です」
「親切な説明ありがとうございます」
ギルドを出てドンドン屋に向かう。
「解体用ナイフと素材袋ですね。あと水筒とお昼のパンはどうですか?合計で銀貨1枚です。ありがとうございました」
俺の所持金銀貨1枚である…。
金がない。そもそも銀貨3枚で身支度整えるのは無理である。幸い剣聖から刀と脇差を貰いそれを腰に差しているが、防具を整えていないし、銀貨1枚では今後の活動にも支障がでよう。早急に金を稼がねば、焦りを感じルボンの街南にあるルーボの森へ向かう。
歩きながら先ほどの冒険者の心得を読む。冒険者カードだが、
初心冒険者はG級で、ウッドカラー
F級冒険者は、ストーンカラー
E級冒険者は、アイアンカラー
D級冒険者は、ブロンズカラー
C級冒険者は、シルバーカラー
B級冒険者は、ゴールドカラー
A級冒険者は、プラチナカラー
S級冒険者は、ブラックカラー
ダンジョンは二人以上のパーティーならF級、一人ならE級冒険者でないと入れないと書かれている。
うーん、とりあえず初心冒険者を抜け出す事が先決だな。初心者を抜けるには、初心者研修を終えて依頼を30回こなすか、魔石を300個ギルドに納めること、と書かれていた。
依頼は1日1回で続けても30日かかるか。モンスターを狩って素材と魔石集めに専念がベターだな。
ルボンの街から一時間ほど歩いて、「あそこか」と呟いた。
冒険者も多い上に商人達の馬車やリヤカーが何台もいる。先ほどのクソガキ2名も発見、あの二人以外に女の子が二人で四名のリア充パーティーか…正直羨ましい。
さて薬草集めに魔物狩り始めるぞ。コウ クリバヤシはこれより伝説の冒険者となるのだ!
日本の会社勤務とはお別れでござる!はははっと、寂しさから嘯く。
ともあれ薬草集めと魔物狩りをしないと金が無い。あ、薬草みっけ、ここにもある。10束集めるのはこのペースなら3時間もかからないかな。大銅貨3枚だから時給1000円程度か。そんなことを思っていると、カサカサっと音がする。
ついに魔物とご対面、少し緊張していたが、角のあるウサギことホーンラビットが俺を見て一目散に逃げ出した。それにしても動きが速い…。まさに脱兎のごとくであった。
「あの速さと臆病さ、一人で狩るのは難しそうだな…」
薬草を探しながら周囲警戒を続けると、カサカサと茂みから音がする。
静かに刀を抜いて中腰でゆっくりと茂みに近づくと、いた!
どうやらおおねずみのようだ。
目標を定め素早く突く、ドシュ!!確かな手ごたえを感じた。
解体用ナイフでおおねずみをさばこうとするが、魔石がどこにあるのかわからない。
後で商人に教えてもらうかと、素材袋におおねずみを押し込む。二時間ほど集めたが薬草集めは根気のいる作業である。その間ホーンラビットに4回遭遇したが、3匹に逃げられた。おおねずみは2匹退治で計3匹、うーん、活路が見出せない。
ホーンラビットにしろ、おおねずみにしろ、遭遇するのは運任せだからな。悩んでも仕方ない、数は少ないが商人に魔物を売る際に色々聞いてみよう。そう思うと、商人の馬車に向かって移動した。
「ホーンラビット1匹におおねずみ3匹だね」
「魔石を取っていないですけど、どこにあるのでしょうか?」
「ホーンラビットの素材はこの角だよ。ナイフで角の付け根をえぐるように取るのがコツかな。魔石は大抵の魔物は心臓の位置にあるよ」
「ここですか」
角の付け根えぐるようにくり抜いた。
「そうそう。おおねずみの素材は皮なんだけどこいつはお勧めしねえ。こいつ肉が柔らかいので皮を剥ぐときに肉を傷めてしまう。素材ごと買い取るからそれで許してくれよ」
「そうですか、それなら素材ごと買取りでお願いします」
「ホーンラビットが1匹銅貨5枚、おおねずみが3匹銅貨18枚で合計23枚だ。魔石はこっちで取っておいたよ」
「ちなみに魔石ですけどいくらですかね?」
「ホーンラビットもおおねずみもG級魔物だから1つにつき銅貨2枚だよ。素材の角も確か2枚だったね。新人冒険者はここで朝から日が暮れるまで狩っているよ」
「親切な説明ありがとうございました」
銅貨23枚とG級魔石4つと角1つ、商人の話だと銅貨33枚にしかならない。薬草をノルマまであと少しだが集めても大銅貨3枚である。初心冒険者あまり稼げないなあ、とりあえず薬草をもう少し集めよう。
2時間ほど頑張ったが、薬草12束とおおねずみ2匹追加しただけであった。魔石を取り出したおおねずみを先の商人に引き渡して銅貨12枚もらう。
冒険者ギルドに戻り、本日の依頼である薬草と魔石をルーシーさんに渡す。
「それでは薬草12束とG級魔石6つ、角1つで大銅貨5枚です。魔石6つ納品カードに表示されますよ。ありがとうございました。ではまた明日―」
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