第21話 ボルケンの刀
「待ってくれ。俺を置いて行かないでくれー!」
小走りで駆けよるアントン。
「すまねえ、少し寝坊をしちまった!」
「な、2人とも。俺の言ったとおりだろ」
「そうでしたね」
笑顔で答えるアンナにエミリィである。
「皆で何の話だ?」
「なーに、アントンが素材を持ち逃げするかもって話だよ」
「なっ、そんなことする訳無いだろ。商人は信用第一だぜ。それより昨日の素材代だ。全部で金貨5枚と銀貨3枚だった」
「思ったよりもあったのだな」
「兄ちゃん、すまねぇー。高く買い取りてぇーがしばらくはギルドへの卸値で勘弁してくれ。必ず見返りはするから」
「それで構わない。お前に儲けはあったのか?」
「兄ちゃんが思っているより儲けは少ない。正直な話、俺は商用ギルドに信用がない。今は安く買い叩かれているのが現状だ。それでも俺は、【フクロウの剣士】に賭けたんだ。賭けに勝つならどんなことだってやって見せる」
2人が俺の顔を見て笑い始め、俺も笑顔になる。
「なっ、なんで皆笑っているんだよ。そんなに可笑しなこと言ったかい?」
「いえ、アントンさんの考えが、昨日コウさんが言ったとおりでしたので」
「なっ!?俺の考えはお見通しって訳か。兄ちゃん、あんたやっぱり軍師向きだな」
「そんなことより俺達に日当の要求はしないのか?」
「しねぇーよ。俺から見れば好条件だからな。兄ちゃん達も俺のおかげでずいぶん楽しているだろ。お互い様だぜ!」
そんなことを言いながら俺達一行は中級ダンジョンに向かった。
「これから商用ギルドに素材を卸す。それじゃー明日もよろしく―」
ダンジョン入り口で、アントンが足早に立ち去っていく。
「さて、これから修理依頼した刀を受け取りに行くが2人はどうする?」
「えっ!?私は先に宿屋に帰ります…」
「私もいいです…。ボルケンさんの顔怖い…」
「わかった。それではここでな。ボルケンさんの酒買うのを忘れていた」
2人とも人を顔で決めちゃ駄目だぞって言いたいが、まだ17歳だしな。フーを肩に乗せて酒屋リカールに向かった。
※※※※※
「ボルケンさん、すいませーん!」
「誰だ!」
厳つい顔に髭モジャなボルケンがシャツ1枚で現れる。
「お前さんか、刀の修理なら終わっているぞ」
「刀の受け取りと剣のお返しにきました。少ないですがお酒も持参しました」
「おお、そういえば酒って言っていたな」
酒と聞いて笑顔になるボルケンである。
「好みが分からなかったのでこちらで選びました」
ボルケンにウイスキーとウォッカを渡す。
「こいつはありがてぇ。お前さんはドワーフの好みを分かっているな。ここで女が飲むような酒持ってきたら帰れ!と怒鳴るとこだったぜ。ちょっと待っていろ」
そう言ったボルケンは鍛冶場に入っていった。あの2人連れて来なくて正解だったと思い苦笑いをする。すぐにボルケンが戻り、
「修理した刀と脇差だ。試しに抜いて振って見るかい?」
刀と脇差を受け取り、刀を抜いてみる。鏡のように反射する刀身、波紋が何とも鮮やかであった。刀の鑑定は出来ないが、これ博物館で飾っているクラスだぞ。今度師匠に見てもらおう。
続いて抜いた刀で素振りを行うが重くなり1.5キロ程度か。レベルアップのおかげで身体能力が向上しているので苦にならない。
「重くなった感じはしますが問題ありません。凄くいい刀になったような気がします」
「当たり前よ。このボルケン様が修理で打ったんだぜ。そこらの鈍らと比べられても困る。強度もグンっと上がっているぜ」
「ありがとうございます」
「酒も貰ったし、お前さんのこと気にいったぜ。鍛冶のことなら何でも任せな」
「分かりました。また何かあれば来ます」
新しい刀を早く身体に馴染ませないと命に関わる為、振って振り抜いた。
試し斬りがしたい…。朝から3階を散策する俺は、魔物を求めていた。刀の切れ味を試したい、人斬りもこんな症状に襲われていたのか?危ない感覚に何度も襲われながら、フーが気の毒なゴブリンの群れを発見した。
「刀を試したいので少し待って欲しい」
そう言って一人ゴブリンの群れ目掛けて駆け出した。抜刀するや横薙ぎで1体、手首を返し袈裟斬りで1体、左から襲い掛かってきたゴブリンを下段から斬り上げ腹を裂く。瞬く間に3体片付けて思う。刀の切れ味が鋭い、重くなったが前よりも軽く斬れ、厚みもある分強度も上がった。この刀とんでもないぞ。
震えている5体を次々と斬り飛ばす。
「兄ちゃん無茶苦茶だな…ゴブリン8体瞬殺じゃないか」
「刀が格段に良くなった。今なら乱戦でも切り抜けれる」
「…また強くなりました。多分A級並みじゃないの?」
「…ありえるわね」
ヒソヒソ話をするアンナとエミリィであった。
商人アントンを荷物持ちとして3日目、昼食休憩の合間にステータス画面を開くと、
全員レベルが上がっていた。
コウ クリバヤシ(28歳)174㎝ 70㎏ パーティー【フクロウの剣士】
レベル10 HP 150 MP 28 氣力40 職業 上泉流剣士
スキル 修行 剣術5 氣の太刀
装備 ボルケンの刀&脇差 ボア皮の服上下、皮の靴、旅人のマント、鹿皮、リザートマン皮グローブ
アンナ(17歳)158㎝ パーティー【フクロウの剣士】
レベル9 HP 93 MP 80 職業 回復術士
スキル 回復術2 投擲2
エミリィ(17歳)162㎝ パーティー【フクロウの剣士】
レベル9 HP 74 MP 106 職業 魔術士
スキル 火魔術3 魔力&MP10%アップ
フー E級モンスター パーティー【フクロウの剣士】
レベル10 HP 101 MP56 職業 オオフクロウ
スキル 鷲掴み4 爪3 クチバシ3
「皆レベルが上がっているぞ。俺とフーはレベル10到達している!」
「あっ、本当だ。私達も9になっています!」
「私MPが100越えている」
【フクロウの剣士】一行は上機嫌であった。
「2人のレベルが10になるまでこの階で魔物討伐するか?」
「賛成です!」
「俺もそのほうがありがたいぜ。フクロウの兄ちゃん」
「そういえばこの3階フロアにも新しい虫の魔物がいるが、アントン知っているか?」
「この階は、確かキャタピラーと大ミミズのはずだぜ」
「ミミズ…」「嫌い…」
やっぱり虫は女の子には不人気ですね。闘ってどのような特徴の魔物か確認したいが仕方ない、大ミミズは諦めよう。そう心に決めた。
商人アントンとダンジョンに潜り7日目の夕方中級ダンジョン入り口で、
「これから商用ギルドに素材を卸すんでこれで…」
「アントン待ってくれ。おそらくその素材を卸せば明日、俺達は念願のマジックストレージが購入できる」
「そうか、じゃあ俺は今日でお払い箱ってわけか…」
「誰もそうは言っていない。商用ギルドで4階の魔物と素材について調べてくれ。俺達もそろそろ4階フロアに行こうと思っている」
「分かった。調べておくよ。俺も4階フロアについて行っていいんだな」
「問題ない。極小だから荷物を入れたらそんなに入らない。素材はアントンに任せる」
「恩にきるぜ。それじゃー、毎度―」
足早にアントンが立ち去った。
次の朝、金貨を受け取った俺達は、魔道具屋に向っている。
「いよいよマジックストレージ購入ですね」
「これでダンジョン探索がスムーズになるぞ」
「術士の私達にはありがたいアイテムです」
魔道具屋では余所見をせずにマジックストレージを手にする。色々と気になる魔道具があるからだ。財布に余裕が出来たらまた来ます。
「マジックストレージ極小ですね。金貨50枚になります―ありがとうございました」
念願のマジックストレージ極小を手に入れたぞ。皆で一頻り喜んだ後、俺達一行は中級ダンジョンへ向った。
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