第13話 暴れん坊 コウ
ダンジョンに向かう途中、ステータス画面を確認するとアンナとエミリィが追加されていた。
コウ クリバヤシ(28歳)174㎝ 70㎏ パーティー【フクロウの剣士】
レベル4 HP 90 MP 16 氣力30 職業 上泉流剣士
スキル 修行 剣術5 氣の太刀
装備 刀(数打ち)、脇差(数打ち)、ボア皮の服上下、皮の靴、旅人のマント、鹿皮、リザートマン皮グローブ
アンナ(17歳)158㎝ パーティー【フクロウの剣士】
レベル3 HP 50 MP 40 職業 回復術士
スキル 回復術2 投擲1
エミリィ(17歳)162㎝ パーティー【フクロウの剣士】
レベル3 HP 40 MP 60 職業 魔術士
スキル 火魔術2 魔力&MP10%アップ
フー E級モンスター パーティー【フクロウの剣士】
レベル4 HP 54 MP34 職業 オオフクロウ
スキル 鷲掴み3 爪3 クチバシ2
「コウさん、さっきから何を見ているの?」
「皆のステータス、二人ともファイアーボールとヒールの消費MPは?」
「両方とも2消費します」
「火球は30回、回復は20回が限界か。MP尽きそうなら教えてくれ。探索を打ち切る」
ルボンの中級ダンジョンは、ルボンの街中に在りギルドからも近い。ダンジョンは街の経済を支える大事な役割を担っているのだ。入り口にギルドの職員がいるのですぐに分かった。
「全員F級冒険者を確認しました。それではお気をつけて―」
「すんなり通してもらえたな」
「毎日何百人の冒険者が行き来しています。条件さえ満たせばよいのでしょう」
薄暗い階段を下り、扉を開けるとそこはルーボの森によく似た森であった。
「わあー、凄いです。ダンジョンが森だなんて!」
「森とは驚いたが…ルーボの森と似ているのは気のせいか?」
「ダンジョンには周辺の特性を生かした創りが多いそうです。ルーボの森に似ているのもそのせいでしょう」
「なるほど。では地下2Fを目指して散策とマッピングだな。このフロアで出る魔物は?」
「ホーンラビットにおおねずみ、ビックビートルにスライムですね」
おお、スライム。ちょっと感動する。
素材が汚水処理に使われるので高値で引き取ってくれるらしい。となれば酸性の体質だろうな、剣や刀は錆びるわけか。木の枝を切り落とし、適当な長さに調整した。
「コウさん、いきなりどうしたのでしょうか?」
「スライムだがおそらく酸性だと推測する。刀が錆びると嫌なので、この棒で攻撃する」
「へー、用心深いですね」
「臆病で心配性なだけだ」
マッピングしながら散策をしていると、木の棒を使う機会が訪れる。二匹のスライムが木の上からボヨンっと、落ちてきた。
「一体は俺に任せてくれ。残りはエミリィの魔術が聞くか試してくれるか?」
「了解。ファイアーボール!」
火球がスライムを包み瞬く間に魔石と素材に変化した。
ボヨンと体当たりをするが遅く避け、木の棒で一太刀入れて両断した。両断した二つの奇妙な体を観察し続けると、片方の身体がゆっくり動きだした。再度一太刀入れて更に小さくする。2度ほど繰り返すと素材と魔石に変化した。
「スライムは液体の為、打撃では分裂する。魔術で液体を蒸発させるか、小分けに刻んでしまえばいい。魔石がある液体が動き出すのですぐ分かる」
「全く気付かなかったわ。よく見ていますね」
素材を回収し更に散策を再開する。あの辺りの窪みが怪しいと周辺を隈なく探すと、下層へと続く階段を見つけた。
マッピングが必須なのは、パーティーによってダンジョン内の階段位置が変化する為だ。
「コンパスで何を測っているのですか?」
「建物の方角だよ。あの建物と大きな木の方角を測り、線を引く。線が重なる地点が現在の俺達のいる場所だ」
「コウさんがいれば迷子にならないですね」
「この階に出現する魔物は?」
「1階の4種類と、キャタピラーとゴブリンです。どちらともF級のモンスターですね。ゴブリンは群れで生活し獲物を狩っているみたい。キャタピラーはわかりません」
「キャタピラーが出現したら観察したい。フーは上空からゴブリンを探すこと」
「ホッホー!」
「フーちゃんがいると魔物の発見が早いですね」
「俺達の強みだ。フーは目が良い上気配に敏感、夜目まで効く」
フーが木に止まり合図を送ってきた。視線の先はゴブリン8匹、声を潜めて、
「この先にゴブリンがいる。どうする?」
「やるに決まっています」
茂みを利用しながらゆっくりと接近する。
「2人とも1,2,3の合図で、あの二匹を一気にやってくれ」
「了解です」
今だ!フーにも攻撃の合図を送る。アンナは手前のゴブリンに向かって両手のナイフを投げつけ、エミリィはもう一匹にファイアーボールを放つ。フーは、群れに急襲し攻撃した。
「フーいいぞ。戻ってこい!」
奇襲は成功。気付いたゴブリンが錆びた剣を持って俺達を取り囲む。俺は2人を守るように前に立ち向き合っている。
「俺が押されていたら投擲と魔術で援護してくれ。フーは2人の守りだ」
投擲で一体に命中させた。ゴブリン達は遠距離攻撃の不利を悟り、攻撃を仕掛けてきた。
右からの切り込みを躱し手首を切りつける。左から切り込んでくる剣を弾いた。弱いな、これなら一気に攻めよう。弾いたゴブリンの喉に突き入れた。
前方のゴブリンを袈裟斬りで仕留め、左にいたゴブリンの腹を裂く。残りは素早く峰打ちで昏倒させた。
「凄い。あっという間にやっつけました!」
「強すぎでしょ!私達の出番がないじゃない…」
「強さを確かめたが弱いので、一気に行かせてもらった。3体は止めを刺していないぞ」
「ありがとう。経験値にさせてもらうわ!」
そう言ったエミリィは俺の脇差を手にする。
「ゴブリンの素材は高いのか?F級魔石はいくらだ?」
「どちらも銅貨5枚でしたよ」
「ゴブリン1体大銅貨1枚か。マッピングを続けて、ゴブリン見つけたら奇襲でどうだ?」
「賛成。できたら峰打ちで何体かお願いします。術士はレベル上げにくいので」
よーし、これからゴブリン狩りだ。俺も試したいことがある、いざ参らん。
バサッバサッと、上空を羽ばたくフー。獲物を見つけこちらに合図を送る、優秀な従魔だ。
フーの視線の先に11体のゴブリンがいた。
フーに攻撃の合図を送り、投擲、魔術、上空からの強襲する。すぐさま前に出て刀を八双に構えた。八双の構えは1対多数を想定した構えで、刀を立てる為中段より前腕、上腕が安全となる。
刀の峰を返し八双で接近する俺に右から左から襲い掛かるが、袈裟斬り、逆袈裟を浴びせ、ゴブリンに近づく。怯んでいる2体に袈裟斬りを与え、脳天に峰打ちで昏倒させた。
止めを刺し終えると皆で素材回収を行う。フーは更なるゴブリンを見つけて合図を送ってくる。15体の群れを発見していた。
奇襲成功の後、俺が姿を現すと怒りで襲いかかってくるが、1体、また1体と打ち据える。八双を実戦で使用するのは始めてだが、中段よりも疲れずに全体を見渡しやすく、多数の敵にはもってこいだ。フーから合図がくる。待機を合図し、2人に話かけた。
「フーがまた見つけたみたいだ」
「私達森深く侵入していますけど大丈夫ですか?」
「数も増えているし、一旦戻ったほうがいいと思いますが…」
「そうだな。こいつらを狩ってから戻ろう」
遠目で集落を確認するが、20体は確実にいる。ゆっくりと近づき、奇襲を仕掛けた。奇襲で狼狽える間に前に出て一歩、また一歩と進む。途中で何体が逃亡したが20体近くを峰打ちした後、水筒の水をグビグビと飲んで一息ついた。
「ホッホー!ホッホー!」
上空を旋回しながら呼んでいる。逃亡したゴブリンが援軍を呼んで迫っているではないか。
「アンナ、エミリィ!ゴブリンの群れがこっちに向かっている、すぐに逃げるぞ!」
「だからいったじゃない!早く戻ろうって!」
素材回収を止めて俺達は一目散と逃げ出した。
「まずいな。あいつら思ったよりも群れの統率が出来ている」
「ゴブリンソルジャーがいるかも…群れが50体超えると、ソルジャーが生まれるらしいわ」
「あの数からすると間違いなくいるぞ。俺達捕まったらどうなる?」
「男は殺されて食糧に、女は捕まってゴブリンの慰み者だわ」
「なおさら捕まるわけにはいかないな。皆覚悟を決めて討って出るぞ。それしか生き延びる方法がない!」
「ダンジョン初日で人生最大の危機ですね。作戦はありますか?」
「フーは上空で敵を攪乱させてくれ。混乱する敵を俺が叩く。エミリィは討ちもらした敵に魔術を、アンナは回復役と止めを刺してくれ!」
「こんな時まで術士に気遣い無用よ。思いっきりぶった斬りなよ!」
「刀ではこの数は斬り抜けられない。峰は刃が無いかわりに強度があるので耐えられる。俺に遠慮しないでしっかり止めを刺してくれ。この木々を利用し有利な地形で斬り抜けるのが生き残れる唯一の手段だ。いくぞ!」
八双の構えで峰を返したが、有名時代劇の八代将軍様を思い出した。上様が暴れる殺陣のシーンの曲が頭に流れている。行ける!アドレアリンは出ているぞ。あの曲を口ずさみながら2体のゴブリンを袈裟斬りに、向かう4体を横薙ぎ、袈裟斬り、脳天へと刀を落とす。
「あっちの木に移動するぞ!」
移動中は、フーが敵の上空で羽ばたき時折、爪で攻撃とヒットアンドアウェイを繰り返し援護してくれた。20体ほど群れが突っ込んでくるが、フーのおかげで攪乱している敵を袈裟斬りに、唐竹にと叩きのめす。更に20体ほど駆け寄ってくるが、取り囲まれないよう木々を利用、二人が投擲と魔術でサポートしてくれる。
「コウさん、ゴブリンソルジャーがいます!」
俺の獲物と、盾を前方に出し剣で突く気である。わざと突かせて、引き際に小手、脳天に一撃を入れる。
「お前の動きは分かっている。アンナ止めは任せた!」
「凄い、ゴブリンソルジャーをあんな簡単に」
迫るゴブリンを何体打ち倒しただろうか。周囲を見渡せば、脅えて立っているゴブリンは数体しかいない。強烈な喉の渇きに襲われ、水筒の水をグビグビと飲み干した。
「どうやら生き残れそうだな」
「MP空っぽよ」
「あちらから大きなゴブリンが近づいてきます!」
アンナの指差した方角を見ると、皮の鎧を着たゴブリンとお供が何体か迫っている。鎧ゴブリンは俺と同じ体格で両手剣を装備している。俺に剣を向けているが挑発しているのか!?
「一騎打ちを希望かな?」
「そうでしょうね、大丈夫でしょうか?」
「余力は残してある!」
鎧ゴブリンと向き合った。強敵登場でつくづく上様のラストシーンを思い出す。
鎧ゴブリンが剣を振り上げ迫り、脳天から振り下ろす。避けると、横薙ぎの追撃をしてきた。
鍔元で受けるとガキンッと、火花が散る。咄嗟に峰を返し向き合う。さっきの横薙ぎは重くなかなかの強敵だ。
鎧ゴブリンの袈裟斬りを躱し、今!伸びきった肘を斬りつけた。
カランカラン。両手を肘から先失った剣が地に落ち、すぐに峰を返し、がら空きの胴へ斬撃を送った。腹をしこたま叩かれた鎧ゴブリンは、
「ゲボッ…」
呻き声をあげて片膝をつき、悶絶している。
「フー。成敗!!」
フーの爪が止めを刺した。刀を残るゴブリンに向けたが、恐れのあまり逃亡していく。残心を解いた俺は鹿皮で刀を拭きチンっと音をさせ納刀した。
フーお庭番役ありがとう、やっぱり上様はこうでなくては。
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