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第1話 異世界転移

初投稿です。よろしくお願いします。

「暇だ、素振りでもするか」

20XX年3月、新型コロナの影響でホームワークを余儀なくされた。

俺はその影響を受けた栗林航クリバヤシ コウ28歳、都内海運会社に勤めるフツメンサラリーマン。そんな俺だが毎日欠かさず行っているルーティンがあり、木刀による素振りである。


小、中、高と部活動は剣道一筋を貫き剣道3段、強くなろうと8歳より始めた素振りも20年。当初は竹刀と同じ重さであったが、徐々に増やしていき今では2キロ、毎日欠かさず1時間振り続けるアラサーだ。


木刀で五行の構えを行う。五行の構えは、基本とされる上段、中段、下段、八双、脇構えである。その後、上段、中段の面打ちを何百何千と振る。全て忘れられるこの時間がたまらなく好きだ。


一時間以上素振りを続け一息つく。暖かくはなったとはいえ3月であり、外は冷えるが汗を掻き今日もビールはうまいぞーと思い笑みを浮かべた。


急に辺りが強烈な光に包まれ静寂になり、何か起きそうな予感がする。

突然の出来事で木刀を攻防一致の構え、中段で備えていた。


「驚かせてごめんなさい。私は日の本の神、コノハナサクヤヒメに使える侍女カエデと申しまする。貴方様の絶え間ぬ努力に感服仕り姿を現した次第でございます。」


コノハナサクヤヒメって神話の人物じゃなかったか?戸惑いを隠せないが、剣先を地におろした。


「こちらこそ、なんかすいません。私は栗林航と申します。絶え間ない努力は素振りのことでしょうか?」

「ええ、話が早い方はいいですね。貴方様は異世界に転移条件20年間毎日素振りを1時間以上行う、クリア致しました。行き先は…」

「ええー。ちょっ、ちょっとまってください。異世界転移…言っている意味がわかりませんけど」

「取り乱すのはよくわかります。しかし貴方は20年毎日素振りを1時間続けた強者です。異世界へ行くのは貴方様にとっても悪い条件ではありません。ひとまず私の話を聞いて頂けますか?」


若い美女から質問されて悪い気はしない。


「どうぞ話を続けてください」

「先ほども話ましたが、貴方様は異世界に行くことが出来ます。その世界は強大な魔物が蔓延る世界であり、コウ様にはその世界に蔓延る強大な魔物をやっつけて頂きたいのです」


侍女カエデの話からすると、どうやら異世界に行けて魔物退治をするわけか。まさにファンタジー小説かゲームの世界だな。暇だと呟いていた俺にとっては悪くないというか、宿願でもある。


もう少し異世界について確認するとレベル、スキル、魔法、魔石、貨幣についても教えてもらった。要はRPG同様、戦闘で勝てばレベル、魔法、スキルが向上し、モンスターが魔石を落とし、負ければ命を落とす世界。

転移場所はルーデン王国のルボンの街、冒険者が多く集う街でダンジョンも2つあるらしい。


貨幣の価値は、

白金貨 1枚 金貨10枚  100万円相当

金貨  1枚 銀貨10枚  10万円相当

銀貨  1枚 大銅貨10枚 1万円相当

大銅貨 1枚 銅貨10枚  1000円相当

銅貨 1枚 小銅貨10枚  100円相当

小銅貨1枚        10円相当であった。


彼女もいないし友人も少ない俺にとっては興味深い世界だ。


「もし私が行く場合なんらかのスキルはもらえるのでしょうか?あとルーデン王国、ルボンの街から始まるとして所持金とか装備品はどうなりますか?」

「ずいぶん異世界を気になっているようですね。二十年素振りを毎日続けた特典で、貴方様にはユニークスキル 修行が与えられます。使ってからのお楽しみ。所持金ですが、銀貨3枚、装備品もこの世界に合った服装になります。」


 銀貨3枚でスタートだが、要は魔物を倒して魔石を集めればいいのだろう。レベルシステムに剣と魔法の世界、まさにファンタジー世界の王道である。28歳にもなってRPGの世界に憧れを抱いている俺はきっと中2病だ。迷うことなく、


「異世界に転移します」

「それでは、私の魔法を使って異世界へ転移致します。言い忘れておりましたが、強大な魔物を退治すれば貴方様も現代へ帰れますので安心してください」


カエデは、聞き取れない呪文を唱え始めていた。急に辺りは暗く包まれて気が付くと俺と侍女カエデは上空に浮き、凄い速度で移動し始めたので目を閉じる。


「小手――!!」

「一本!」


とある剣道の試合で副審は1本の旗を上げているが主審ともう一人の副審は、よく見えず1本を取り消していた。そんな馬鹿な!?さっきの小手打ちは間違いなく相手の小手を打ち抜いた。打たれたライバルのあいつも苦虫を潰した表情をしているのに…。結局その試合は延長戦にもつれ込み判定負けという結末を迎えた。

高速で異世界へ転移中にあの夏の試合の思い出が走馬灯のように浮かびあがり呟く。

「あれから10年経つのにまだ思い出すか…」

「どうかされましたか?」

「いえ昔の思い出です」

高3の夏、俺は剣道個人戦で県大会のインターハイ予選決勝まで駒を進めた。あと一つ勝てば全国大会に出場できるが相手はライバルの斎藤、彼とは中学からのライバルであり、県大会で何度も闘っている。

 戦績は五分で実力は拮抗していたが、この試合は俺の将来を変えた。敗者となった俺は抜け殻のように高校生活を過ごし、剣道有名大学に進学もせず、叔父を頼り逃げるように船員となった。


負けたあの試合から俺の素振りは苛烈になった。不動の信念山の如し、とにかく全てを忘れられる木刀を存分に振って、振り抜く。高3の記憶はあの負け試合と素振りをした記憶しかない。

船乗りを選んだのはうるさい外部干渉を遮断したかっただけで、両親は落胆したが、叔父だけは俺の胸中を理解してくれ、


「何も全てリセットする必要はない。ゆっくりと自分と向き合え」


優しく接してくれた。船は一度出港すると長期航海となるので素振りに十分時間が取れる。その上休みはまとまった長期休暇であるので一心不乱に木刀を振り続けることができ、気付けばあの試合から10年が経過していた。


「コウ様着きましたよ」


にっこりと侍女カエデが微笑みかけている。目を開けると何処かの道の上に立っていた。辺りを見渡すと麦畑が多くあり、のどかな風景である。およそ1キロ先に城塞に囲まれている街を確認できたが西欧の城のようだな。


「あれがルボンの街ですか。想像していたよりもずいぶんと大きな街ですね」

「ルボンの街は人口20万、過去何度も魔物の侵攻に悩まされ城塞街となりました。さてコウ様、服装ですがこちらで変更しておきましたので」

「いつの間に!?思いっきりこっちの世界の恰好ですね」

「あと巾着袋と銀貨3枚です。こちらのステータスカードからコウ様のステータスを表示出来るようになりました。カードはこの世界の皆持っております」


侍女カエデからステータスカード受け取りステータス画面をオープンして見ると、


コウ クリバヤシ(28歳)174㎝ 70㎏

レベル1 HP 60 MP 10

装備 木刀、布の服上下、皮の靴、旅人のマント

スキル 修行 剣術4


と表示されている。このカード凄い、ハイテクだな。

うん?攻撃力や防御力表記が無いぞ。素早さや運の良さは?侍女カエデに思った疑問を問いかけると、


「以前は攻撃力や防御力なども表示していたのですが、それに頼って技術を進歩させない冒険者が増加しました。中級の魔物までなら装備品で攻撃力と防御力を上げての力押しでなんとかなるのですが、それ以降は難しいですね。技術や知識の無い冒険者は死あるのみ、それゆえに表示を控えております」

「なるほど、知識と技術と言ったがようはスキルレベル向上と魔物の特性を把握して戦うことが重要ってことですね」

「魔物も知恵を持っており待ち伏せ、不意打ち、毒や麻痺攻撃を行います。以前転移した方もコウ様と同じく強者でしたが、遠距離からの麻痺攻撃を受けて殺されました」


さらっと殺されたって言った…。遠距離の麻痺攻撃ってほとんど反則じゃないか、そんな魔物とどう闘えばいいのだ。やっぱりRPGゲームみたいに頼れる仲間がいるぞ。


「申し訳ないですがコウ様、私はここでお別れです。この後ステータスカードのステータス画面から、ユニークスキル修行を使うことを強くお勧め致します。コウ様の行き先は修行の間の主が導いてくれますので、では」


カエデさんは消えたが、そもそも異世界への条件が20年毎日一時間素振りに笑える。

修行スキル使用を選択すると、突然空間が捻れ、俺はその空間へ引きずり込まれた。



読者のみなさまへ


今回はお読みいただきありがとうございます!


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本日はあと2話投稿予定です。

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