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最後の妖怪

作者: 雪河馬
掲載日:2019/12/05

最後に海が見たくなり、はるばる青森までやってきた。

山男も河女もとうにいない。

孤独にも慣れてきたが、あやつらは我を抹殺しようとどこまでも追いかけてくる。


昔、我は澱(よど)みだった。

我を産んだのは人間たちの想念。

想念は外殻となり我は形を持った。

そのうち人間は我々に存在の意味づけをした。

敬われれば我は神になり、恐れれば我は物の怪となった。


我々はその名前に合った姿となる、

人間は我らの産みの親であり、愛しい子供であった。


しかし、世は無常である。

人間達はやがて新たな存在を見つけ、それに夢中になった。

やがて新しい妖怪や神々は世界中を駆け巡り、それに反して我らは駆逐され忘れられていく。


この瑞穂の国に我以外の妖怪はもはやおらんのだろうか・・・・・。


ひょっとして野原には飯綱や狢が潜んでおるかもしれんのお。

潜むべき野原が残っておればじゃが。


竜飛岬というところで、蝦夷の国を俯瞰しておる。

波が高いが、我の目にはしっかりとその島が見えておる。

当時とさほど変わらんように見えるが、あの島にも以前は仲間がたくさんおったのお。


寒いのお・・・・・、芯から寒いのお・・・・・。


奴らの気配を感じた。新しい妖怪どもの気配じゃ。

もう見逃してはもらえそうにないわ。

やつらは我らを捉え、彼らのなかの宇井気なるものに閉じ込めていきおる。

そこでは我らは力を失い、いわば標本となるのじゃ。

人間たちは奴らのことを思い、その呪縛から離れられなくなっておる。


悲しいのお、哀れじゃのお。

哀れなのは人間じゃ。悲しいのは我らじゃ。


我は人間というものが好きじゃった。

驚かせることはあっても、我も我の仲間も人間が好きじゃった。


それがどうじゃ、新しい妖怪どもは人間から金を奪い心を奪い、奴隷としてこきつかいよる。

あやつらは人間を堕落させおる。

我にはそれが口惜しくてたまらん。


そして我の本質は澱みにもどる。

気がつくと我の身体はもうとうに半分消えかかっておる。

じきに姿を消し、皮は宇井気とやらに封印されるじゃろう。

寂しいが仕方があるまい。


新しい妖怪とて永遠ではあるまい。

いずれは我らと同じ澱みにもどろう。



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