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1-15 待望の魔法

「ほれ、アイリーン」

 アイサに促されて、渋々と俺の面倒を見にくる仏頂面のお姉さん。そんな顔をしていると、可愛い顔が台無しだぜ。


「あんたもいい加減に男に慣れないといけないんだからさ。せめて二歳児くらいには慣れなさいよ」

 ふふ。俺の方は女の子には慣れきっていますことよ。四つ股かけて無様に女に刺し殺されるほどには。


 さて、往生際の悪い女から魔法をせしめるとするか。俺はいかにも可愛らしい幼児でございといった風情でここぞとばかりに、ふかふかのおっぱいに、ブラウス越しに思いっきり埋まった。


 この世界はブラジャーが無いからな。なかなかの感触でした。当然の事ながら、スキルはいただいた。だが、俺は驚いて大声を出してしまった。


「あひゃあ!」

「え、どうしたの?」

 アイリーン嬢は、また何かあったかと心配そうな声を上げた。


「う、ううん、なんでもないの。お姉ちゃん、きれいだから」

「ま、まあ」


 あまり言われ慣れていないのか、幼児に言われて少しうろたえて顔を赤くしている。いや、本当に美人なんだけどね。なかなかの残念っぷりだが、そのスキルというか魔法の方はとんでもなく凄かった。


『魔法威力増大』

 習熟により、その倍率は増加する。最大ブーストのレベルは、その適性によって変わる。


 うわあ。どうか俺に適性がありますように。のっけから、こんなものが来るとは!


 そして、こいつだ。

『風の刃』


 いわゆる真空刃だな。なんと、鎌鼬としての使い方だけではなく、自分や他人の刀にも真空風魔法として纏わせられる性質がある。


 これが一番実践的ですごい代物だが、この姉ちゃんはそれだけではない。なんと三つの魔法系統をすべて強力に使いこなすのだ。


『水の嵐』

 これは上級水魔法だ。一番強力なものだな。


 火焔魔法を打ち払う事もできるし、相手を吹き飛ばし薙ぎ払う事もできるし、道に使えば泥沼を生じさせ相手の足を止められる。


 しかも出力を絞って鞭のように使う事も可能とある。もちろん、畑の水やりにも使えるので畑仕事が楽になる事請け合いだ。


 かなり強力なので、砂漠の真ん中でオアシスを作ったり緑化したりして自分の街を作る事さえ可能な代物だ。やりようによっては、俺は自分の街を開拓する事さえできる力を手にしたのだ。いかにも農民の子らしい発想だね。


 そしてもっとも強力な魔法である火焔魔法。これは結構自在に使える。

『ファイヤーボール』

『ファイヤーボール・レイン』


 そして、こいつ。

『フレア』


 これは火魔法というよりも爆発魔法だ。威力は大型ロケット砲に近いが、火の力による物なので、森の中なんかで使ったら森が全焼しかねない。


 町でも使えないし。だが使えば強力だ。例えば、飛行する魔物とか、どでかい魔物なんかには有効だろう。


 あともう一つ凄いのがあった。

『障壁作成』


 いわゆる魔法障壁の『シールド』ではない。三つの魔法特性それぞれで、いろいろな形の『ウォール』を作る事を可能にする応用技だ。結構風の障壁は使い勝手がよさそうだ。


 風魔法で飛ぶのは厳しいな。そういう空気を自在に動かすような使い方をする系統ではなく、攻撃と防御に特化されている。この姉ちゃんの男嫌いと何か関係あるのかもしれない。鉄壁の防御だぜ。


 このウォールを応用して、カーペット上に魔法を展開して広域の敵を相手にしたり、罠を張ったりなどできそうだ。こりゃあ、ゴブリンなんか楽勝だよなあ。あ、冒険者は全部で10人いるって言ったよなあ。


「ねえ、お姉ちゃん。他の冒険者さんは?」


「ああ、みんな森の調査に言っているわよ。もう一つの冒険者チームが森の調査に行っているし、うちのリーダー達は森の手前で陣を張っているわ」


 何だと! しまったあ。やっぱり寝ている間に、有力な冒険者さんが通り過ぎていってしまっていたのか。


「ねえ、お姉ちゃん。僕も陣が見たいなあ」

「駄目、危ないから」


「僕ね、お姉ちゃん。夕べ、ゴブリン倒したんだよ。それに僕のお爺ちゃんは凄い狩人だったんだ。見てて」


 俺はかなり上空を飛んでいた鳥を狙った。届くか。そして、その放った普通の矢は、何故か見事に弧を描いて命中した。


 『ホーミング・アロー』が発動したな。矢速も早くなっている気がする。それは威力に直結するのだ。そして、鳥は10メートルほど向こうに落下した。


「すげえ、今のなんだ? 二歳児がやる事じゃねえな」

「お爺ちゃんはこれができたからね。僕もできて当然なのさ」

 俺は嬉しそうに、それを拾ってきて母親に渡した。


「まあ、立派な山鳩だ事。アンソニー、腕を上げたわねえ。まるで、お爺ちゃんを見ているかのようだったわ」


「へっへー」

 冒険者達は呆れてそれを見ていたが、この調査チームではリーダーらしい、アイリーンが言った。


「それでも駄目よ。子供を前線に連れていって何かあったら困るわ」

 だが、そこへ村長と叔父さんがやってきた。


「ああ、冒険者さん、頼みがあるんだがね。このアンソニーに戦いを見せてやってくれんかね」


「え、村長さん。それはどういう意味ですか。危険ですから絶対に駄目です」


「ああ、こう言ってはなんだがねえ。いつでも冒険者さんが村にいてくれる訳じゃあないんだ。夕べも、この子が斥候のゴブリンを倒していなければ、夜明け前に、うちの村が襲われていただろう。


 戦いを見て、後の世代に伝える者も必要だ。次回、五十年後くらいに五百もの、ゴブリンの軍勢が村を襲うなんて事があるかもしれん。


 たとえ二歳の子供であっても、その目に焼き付けておかねばならない。狩人であるその子が、この先も一番ゴブリンと戦う可能性が高いのだから」


 それを聞いて何も言えなくなってしまう冒険者達。彼は村長としての立場から物を言っているのだ。


「わかりました。しかし、責任は持てませんよ。おそらく、このような大掛かりな斥候グループを放つ群れには大物もいますから」


「ああ、叔父のフランコも行かせよう。だが、この子は自分で身を守れるよ。アンソニー、お前の矢を見せておあげ」


 そして、俺はそれをアイリーンの手の中に置いた。

「おわっ。何よ、これ。まさか、全部鉄でできているの⁉」


「うん。残念ながら数があまり無いんだ。雑魚のゴブリンなら普通の矢でも十分だけど」

 他の二人も矢を検分して大笑いしている。


「なんて奴だよ」

「これ二歳児が扱うような物じゃないわよ。どんな生活しているのよ」


 それはもう、たくさんの蛋白質をいただき放題の生活でございます。今はもう体重25キロは楽に超えているはずだ。絶対に二歳児の体ではないな、これ。サイボーグ幼児アンソニーとは俺の事さ。


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