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六話 リュエはやっぱり女神だった

本日二話目です。一話目は朝に投稿済みですので、未読の方はぜひ。


 俺がゾンビ改に進化したのは嬉しい。

 問題なのは、一日でZPがいくつ減るようになったかだ。

 ゾンビで1、スケルトンで10。ゾンビ改なら100か?

 さすがに、十倍ずつになると大変だし、20くらいで収まってくれればラッキー。

 戦々恐々としながら、俺はZPを確認する。


 ZP=-54


 一日で100だったよ……

 え? この先、ずっとこうなの?

 ゾンビ改の次に進化すれば1000で、その次は10000?


 10000って……10000って……

 ゾンビ換算で一万匹分、ゾンビ改でも二百匹だ。

 これでようやく、収支はトントン。

 一日で、だぜ。世界中のゾンビが絶滅するんじゃねえの?


 ゾンビにこだわる必要はなくて、他の魔物でもいいっちゃいい。

 ZPは、より素晴らしい善行なら一気に溜まって、小さな善行なら1ポイントだけ、とかなんだろ。多分。

 だから、人類を滅亡させようとしてるような、強力で凶悪な魔物を倒せば、一気にポイントが入ることになる。

 そんなのがいるかとか、倒せるかとか、問題は山積してるが、可能性はゼロじゃない。


 あるいは、魔物を倒す以外の善行もある。

 普通はこっちだよな。人助けとかさ。

 子供の頃、海岸のゴミ拾いのボランティアとかやったな。強制参加をボランティアって呼べれば、だが。


 昔の苦い思い出に浸るのはやめといて、善行の積み方だ。

 現状、洞窟で魔物を倒すしか方法はない。

 洞窟の外に出て人助けをするってのは、ゾンビじゃ無理だ。こっちが退治される。

 人間になるか、人間に近い形状の魔物になるまで、外に出るのはお預けだ。

 しばらくは、洞窟内で魔物退治に精を出そう。


 ただし、これにも問題はあってだな。

 なかなか見つからないってのもそうなんだが、個人的にはもう一つの方がでかい。

 これまで考えなかったんだが、リュエの存在が俺に気付かせてくれた。


 ゾンビを倒してもいいのか、と。


 俺は、なんにも考えずにゾンビの群れを殲滅したし、ゾンビ改二匹も倒した。

 でもさ、あいつらも、リュエみたいに仲良くできたかもしれないんだよな。

 そもそも、この世界のゾンビって、どんな存在だ?


 人間が死んで、死体が動いてる?

 人間とは全く別の生物?

 異世界特有の物質、例えば魔力とか魔素とかがあって、勝手に湧き出す?

 魔王みたいな存在がいて、生み出している?


 クソ女神からは、人間の天敵としか聞いてない。

 天敵だから倒す。それが善行になるんだし、気にしなくていいのかもしれんが……


「リュエはどう思う? ゾンビを倒してもいいのかな?」


 リュエは答えない。出会ってからこっち、意味のある言葉はもちろん、うなり声みたいなものも一切発しないリュエは、今日も沈黙を保ってた。


「いつか、話ができるといいよな」


 答えがないと知っていても、俺はリュエに話しかけた。

 そういや、ゾンビ改に進化したら、ゾンビと違って普通に声が出せてるな。

 リュエもゾンビ改になれば、会話できるようになるのかね。

 リュエの進化を願いつつ、手を取り、指を絡め合う。恋人つなぎみたいな感じで。


 どっちの手も腐ってるけどな!

 いやほんと、そろそろゾンビから脱しないと、ラブコメしても絵面が悪くていけない。

 ゾンビ同士のラブシーンとか、どこに需要あんの?


 見た目は美少女だけどゾンビ! ならいいんだよ。リュエは、完全無欠のゾンビだぞ。

 俺が転生してから、ゾンビと骨しか出てない。あとは、気味の悪い虫か。

 転生直前なら、クソ女神がいたな。クソでも顔だけは美人だった。スタイルもグラビアアイドルみたいだったし。


 これがエロゲーやエロマンガなら、俺はクソ女神に復讐して、エロエロなことをする展開だな。もう会わない、とか言われたし、望み薄だろうが。

 俺がクソ女神を思い出してたら、リュエは明後日の方向を見ていた。


 他の女のことを考えたから拗ねた? まさかな。

 俺もつられて、リュエと同じ場所を見ると、地面のすみっこに例の気味悪い虫がいた。

 しょっちゅう見かけるな。うまく表現できんが、ゲジゲジを二回りキモくした虫だ。

 他にも虫はいるが、キモいゲジゲジ……キモゲジとでも名づけるとして、こいつが一番多い。


 だから。

 俺がその行動を取ったのは、深い意味があってのことじゃない。

 石をつかんで、キモゲジをぶちゅっと。

 潰した。そう、潰したんだ。


 今まで、虫なんて無視してた。ダジャレじゃなくて。

 繰り返すが、深い意味はない。やけにたくさんいるし、一匹くらい潰してもいいかな。

 子供が、面白半分でアリを踏み潰すことってあると思う。それと同じような感覚だ。


 強いて言えば、リュエが見ていたから。

 リュエは、俺にとっては幸運の女神だ。少なくとも、俺はそう思っている。

 女神が気にするなら、何かあるのでは? そんな気持ちが、少しはあった。


 でも、潰すんじゃなくて、ペットにでもするって手もあったよな。まあ、キモゲジをペットにしたいかって話はあるんだが。

 ただなんとなく、潰した。

 なんとなくで潰されるキモゲジにとっちゃ、はた迷惑だろう。

 それは、俺に思わぬ結果をもたらす。


「あ、あれ? なんか、俺の体が……」


 光ってるんですけど!

 ピカッ! って感じじゃなくて、ボヤァって感じの光り方。

 頭の悪い表現だが、それだけテンパってるって考えてくれ。

 進化か? 進化するのか? だが、これまでの進化で光ったことなんてないのに?

 しばらくすれば光が収まってくれたので、俺は慌ててステータスを確認する。



 サズマトゥ

 ゾンビファイブ

 ZP=946



 突っ込みどころ多っ!

 ゾンビファイブって……ゾンビファイブって……

 なんとなく、意味は理解できる。レベルが5になった感じ?

 ゾンビ改をレベル2とするなら、一気に3レベルアップだ。

 だったらさ、ゾンビLv5とかでいいじゃん。ファイブって、どこの戦隊物だよ。


 あと、ZPだ。一気に1000も加算されてる。

 あのキモゲジ、ZPが1000も溜まるほど強いの?

 それとも、なんかのバグ? 初回討伐のボーナスポイントとかって可能性もあるか。


 レベルもそうだが、俺の思考って大概ゲーム脳だよな。

 考えるよりも、行動に移せば正解が分かる。

 キモゲジを探せ! ウォー●ーを探せじゃないが、キモゲジを探すんだ!


 血眼で探しまくり、見つけるたびに石で潰す。

 そんな、簡単なお仕事を繰り返して、何十匹という数のキモゲジを潰しまくった。

 結果。



 サズマトゥ

 ラストゾンビ

 ZP=59946



「おっしゃあああああっ!」


 進化した! ゾンビの最終形態っぽい魔物に進化したぞ!

 体もすっかり変わって、全身に肉と皮膚がついてる!

 人間そっくりだ! 少し肌が青白いかなって程度で、ほとんど人間と変わらん!

 リュエのおかげだ! リュエがキモゲジを気にしてくれたからだ!

 リュエはやっぱり女神だった!


「って、そうだ! キモゲジならリュエだって!」


 リュエがゾンビを倒すのは厳しかった。ゾンビ改なんて持ってのほか。

 だが、キモゲジなら。


「リュエ! これを持つんだ!」


 俺は、リュエに石を手渡した。


「ほら、潰せ! キモゲジを潰すんだ!」


 俺が指示を出しても、リュエは微動だにしない。


「まだるっこしい! ほら、こうするんだよ!」


 待っていられず、リュエの手をつかんでキモゲジを潰させた。

 女の子にキモい虫を潰させるのは非道な行いだが、進化のためだ。

 キモゲジは潰れたのに、リュエは進化しない。


「大丈夫だ! まだまだいる!」


 俺のZPの糧にしたい気もするが、今はリュエが最優先。

 片っ端からキモゲジを潰して回る。


 どれだけ潰しただろうか。百匹は超えたかな。

 リュエは、まだ進化しない。百匹でも足りないのか?

 なら、もっとだ。


 これまでと同じようにキモゲジを探して、一匹見つけたからリュエに潰させようとした。

 なぜかリュエが脅えて、潰すのを嫌がったが、無理矢理やらせた。

 進化のために、心を鬼にして。

 鬼にしたかいがあった。ついに、その時が訪れたのだ。


 リュエの体が発光し出した。俺の時と一緒で、ボヤァって感じ。

 光が収まった時、俺が目にしたのは。


「……女神だ」


 天界より光臨した、女神のごとき美少女だった。

 もう一度言おう。

 リュエはやっぱり女神だった!


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