最終話 一日一善
本日二話目です。
そして、ついに最終話!
でもって、ミッション終了。
色々とすっ飛ばした感はあるが、救出作戦って銘打つには地味だったからな。
移動の方がだるかった。急いでるのに、馬車の遅いこと。往復で一ヶ月だぞ。
領主もパンドさんたちも、少し痩せてたが、元気だった。
全員でカララドの町に帰ってから、偽ゾンビ虫の実験をやって。
無事、ゾンビになった人たちを人間に戻せた!
リュエや透歌とも、感動の再会を果たした。
「リュエ! 透歌! よかった……人間に戻れて、本当によかった……」
「サズマ……苦しい……」
「あ、あの、そんなに抱き締められては……」
リュエと透歌を抱き締めつつ、俺は男泣きした。
今回の事件で、俺にとって二人の存在がいかに大きいか、思い知らされた。
失いたくない。そのためにも、これから頑張らないとな。
ちなみに、俺のステータスは、リュエと透歌を人間に戻した瞬間にこうなった。
サズマ
半人半神
ZP=10000000000
半人半神って……半人半神って……
人間でいいじゃん。もうさ、人間に進化してくれよ。
女神から半人半神だと、退化にならないか? ZPはやけに溜まったってのに。
百億でも人間に進化できないのかよ。
ぶっちゃけると、人間になったら、プロポーズしようかなって考えてたんだ。
半人半神って、また中途半端な。
人間と神様の恋愛は、悲恋になるような気がしてならないんだが、半人半神はセーフ? アウト?
まあ、こういった事情もあるんで、これから頑張ろうって思ったんだ。
そんな矢先だ。俺は、こんな夢を見た。
夢……だと思う。多分、おそらく。
「私は謝りませんからね。あなたがクズなのは事実です」
のっけから、なんでケンカ腰なんだ、こいつは。
久しぶりだな、女神様よ。あんたのおかげで、得難い経験をさせてもらったぞ。
「そうでしょうとも。感謝なさい」
皮肉だよ! 気付け!
よくも、スカートめくりやエロ動画程度の罪で、魔物に転生させやがったな。
くっそ、次会ったら思い切り文句を言ってやろうと思ったのに、相変わらず声が出せないでやんの。
女神の顔だけは、くっきりはっきり見えるのが、なんかムカつく。
顔とスタイルだけは秀逸なんだよな。俺の好みにドンピシャだったし。
あ、「だった」って過去形な。今の俺には、こんな女神じゃなくて、リュエと透歌がいるんだ。
浮気、ダメ、絶対。
「二股をかけておいて、浮気はダメとか、どの口で言っているのですか」
異世界じゃ、一夫多妻が認められてるだろ。
俺は二人が好きで、二人と付き合いたい。二人も俺を好きでいてくれる。
しかも、一夫多妻が認められてるんだったら、誰恥じることなく手を出すさ。何が悪い。
スカートめくりは、被害者の女の子に悪かったって思ってるが、こればかりは女神になんて言われても反省する気はないし改善もしない。
「そこまで開き直れるのは、ある意味大物ですね。褒めていませんけれど」
お前じゃないんだし、勘違いなんてしないっての。
で、これはなんなんだ? 俺は死んでないのに、なんでお前と会ってる?
「……私は謝りません。あなたは、救いようのないクズですし、女性の敵です」
またそれかよ。俺にケンカ売るために、わざわざ登場したのか?
「謝るつもりはありませんが……ほんのちょっとだけ、私がミスをしたことを認めるのはやぶさかでもないような気がしなくもありません」
回りくどいわ! 素直にミスしたって認めろよ!
「ですから、特別に、救いの手を差し伸べてあげたではありませんか」
救いの手? 何かをしてもらった記憶は……
「マイナスになっていたZPを、ゼロに戻してあげましたよね。あなたも望みました。徳政令を発行して欲しい、と」
あれ、お前の仕業だったのか!?
マイナス一兆がいきなりチャラになるのは、確かにおかしいって思ってたよ!
「しかも、困っている様子でしたので、一時的にZPの増加率を上げました」
ZPが百万になったのは、そのためか。本当に、手助けしてくれてたんだな。
じゃあ、クソ女神って種族になったのも?
半人半神になったのも?
「そちらは、私は関与しておりません。特定の人間を、そこまで贔屓はできませんからね。あくまでも一時的な措置であり、さらに直接力を授けるのではなく、ZPという間接的な手法を用いました。なぜそうなったのかは、私にも分かりません」
分からないって、神様なのに?
「む、私をバカにしましたね。いいでしょう、説明します」
説明できるのかよ。分からないんじゃかなったのか?
「推測になりますが、生き様が原因でしょう。進化には、生き様が関係します」
おかしくね? だって、俺が進化したのって、ゾンビとスケルトンだぞ。
ゾンビは最初からだったしいいとしても、どんな生き様ならスケルトンになるんだよ。
「スケルトンになりたいと望んだではありませんか。しかも、ゾンビを倒す際、自身の骨を使いました。これはもう、スケルトンになるべくしてなったとしか」
アホか! なりたいなんて言ってねえよ! ゾンビよりマシってだけだ!
しかも、その理屈だと、人間になりたいってずっと思ってるぞ!
なんで人間にならないんだよ!
「人間は、進化の最終段階ですからね。時期尚早です。そして肝心の……クソ女神ですが」
な、なんで怒ってんの? クソって言い過ぎた?
「ええ、そうです。散々、クソクソ言ってくれましたよね。そのくせ、最後の最後に、私を敬った。結果、おいしいとこ取りで、クソ女神に進化ですよ。忌々しい」
い、いや、あれはな。クソって言いたくもなるぞ。
それに、最後は感謝したし、いいじゃないか。
「人間はそうですよね。普段は神のことなど気にもかけないのに、危機に陥ると途端に頼り出す。もっとも、すぐに半人半神になったようですが。世界のバランスが働き、神の存在は許されないと判断されたのでしょう」
バランスってのは、分かる。
ウンベホッコのスキルを、世界にあっちゃいけないものって言ったように、神様だって同じだ。
半人半神になった俺の力は、魔物だった時と同じか、下手すりゃ弱くなってる。
神ってのは、名ばかりだな。なんで半人半神なのかは疑問だが。
「亜人を散々殺したからでしょうね。人と魔物の中間である存在を。半人半魔ではなかっただけ、感謝すべきですよ」
……なあんか、こじつけ臭いな。
ま、俺の生き様かなんか知らんが、あんたが助けてくれたってことだろ。
改めて、お礼を言うよ。
ありがとう。あなたが助けてくれなかったら、俺は殺されてたし、リュエや透歌もゾンビのままだったと思う。
「調子が狂いますね……まるで、私の器が小さいようではありませんか」
どっちかっていうと、小さいと思うぞ。素直に謝らないとことか。
「うるさいですよ。とにかく、私のミスの分は手助けをした、と伝えたかったのです。それともう一つ。これから先も、私に助けてもらえるとは考えないことです」
俺はそこまで強欲じゃない。
神様の助けがなくたって、なんとかやってくさ。
今でも、もらい過ぎなくらいだ。
クズには力を授けられない、みたいに言われたが、十二分にチートだよな。
魔物の力があるおかげで、色々守れたんだ。
そういや、ちょっと質問。今の俺って魔物なのか? 半人半神なのに?
「魔物とは、人にあらざる者を指します。亜人は、扱われ方は魔物ですが、分類はれっきとした人。神は、人ではないので、魔物。そう考えてください」
ややこしいな。なんだよ、それ。
でも、俺が魔物だってのは理解した。人間に進化するのは、まだ先か。
長くかかりそうだ。ZPを溜めるにしても、毎日の減少もあるからな。
「その件ですが、日々ZPが減少するのは、改善しておきました。上位者から、やり過ぎだと言われてしまいましたので」
マジ!? 日に日にZPが減ってくのに、これから悩まされずに済むの!?
「絶対に減らないわけではありません。あなたが、一日に一つ善行を積めば、減らないようになっただけです。何もせず、怠惰に暮らしていれば、これまで通りですよ」
一日一善ってことか! それでもありがたい!
ZPの減少率がやばかったから困ってたんだ。ラストスケルトンなんて、一日で一千億だぞ。
そっから人間に進化するのは不可能だ。酷い詐欺だ。
ZPが減りさえしなかったら、小さな善行を積んで地道にZPを溜められる。
そしたら、いずれは人間に進化できる。
人間になったら……リュエや透歌と結婚して……
あかん、妄想が止まらない。
「やはり、クズはクズでしたか。上位者も甘いのですよね。クズは、生涯ゾンビのままにしておけばよいものを」
……待てや、コラ。
まさか、俺を進化させる気が最初からなかった、とか言わないよな?
「言いません。そのつもりであれば、もっと困難な条件を突きつけています」
それもそうか。
なんだかんだ、進化できたんだし、無理ゲーに思えて無理じゃなかったんだ。
「ただ……実は、あなたを手助けするつもりはありませんでした。上位者に何を言われようとも、です」
徳政令の話か? なんで気が変わったんだ?
「あなたはクズです。しかし、クズはクズなりに、懸命に生きようとしていました。マイナス一兆のZPに対し、焼け石に水でしかない善行を積んでいたように。お聞きします。なぜ、善行を積んだのですか? 進化はほとんど不可能だと、分かり切っていましたよね?」
……理由は一つじゃないし、話すと長くなるんだが。
「善行を積んで進化」ってのは、優しい仕様だなって感じたんだ。
ゾンビを殺してもいいのか、疑問を持ってた頃でもあったしな。
何かの犠牲の上に進化するんじゃなく、善行を積んで進化するのは、凄く優しい。
そう思ったんだ。
「把握しました。クズにしては、まともな答えでしたね」
いちいち、一言余計だ!
俺がクズってよりも、あんたが潔癖なんだぞ。絶対に。
「不潔よりも、潔癖である方を、私は選びます」
頑固だな。考え方の違いって言えばそれまでだが。
とりあえず、俺の話はこれだけだ。
んで、そっちの話も終わりだよな?
まとめると、一日一善をしろってことだろ。これまでと変わらないな。
人間への進化を目指すのも変わらない。
リュエや透歌とイチャイチャするのも変わらない。
うん、何も問題はない。
「楽観主義というか、頭空っぽというか……まとめると、クズですね」
俺の真似して、まとめるなよ! 結局、俺をクズって言いたいだけじゃねえか!
「あなたと漫才をするほど、私は暇ではありません。伝えるべきことは伝えましたし、ここまでですね」
女神の顔がぼやけてきた。
転生の時もそうだったが、もうちょい人の話聞けよ。
悪口を言うだけ言って、はいさよなら、は酷くね?
次こそ! 次こそ、俺の口で直接文句を言ってやる!
覚えてろよ!
夢の中で、悪役の捨てゼリフみたいな発言をしたような……気のせいか?
領主の屋敷に与えられた自室で目覚めた俺は、ベッドの上で体を起こし、あれが本当に夢だったのかどうかを考えていた。
そこで、部屋のドアが勢いよく開かれた。
「サズマ! 起きる!」
「リュ、リュエさん、ダメですよ。ノックしないと……あ、サズマさん、起きてらしたんですね」
ノックをせずに開けたリュエも悪いが、透歌はちゃんと止めるように。
あと、妙に残念そうにしてないか? 俺の寝顔を見たかったとか?
「おはよう、リュエ。おはよう、透歌」
俺は、二人に朝の挨拶をした。
「おはよう!」
「おはようございます」
二人も挨拶を返してくれて、透歌は窓のカーテンを開けた。
まぶしい朝日が差し込んでくる。
いい天気だ。絶好の仕事日和だな。
体をぐっと伸ばす。肩や背中の骨が、ポキって心地よい音を鳴らした。
よし、好調好調。
さてさて、そんじゃまあ、今日も頑張りますか。
冒険者ギルドに行って、いつものように雑用をして。
人間になるために、一日一善だ。
以上で、本作は完結となります。
ここまで読んでくださった読者の方々、ありがとうございました。




