三話 初めての魔物退治
本日の二話目です。一話目を投稿していますので、ご注意ください。
三話目は、夜に投稿します。
一応、寝ることはできるみたいだった。
だが、素直に喜べないのは、ZPのせいだろう。
ZP=-1
マイナスってなんだよ……
推測になるが、一日何もしなければ、ポイントが減るみたいだ。
つまり、最低でも一日に一つの善行を積まなければ、どんどん減っていく。
一日一善を義務付けられたみたいです。
いやさ、俺も善行を積もうって気はあるよ。
でもさ、どうしようもないじゃん。
クソ女神め……
そうやって、女神への文句を考えていると、あいつのセリフを思い出した。
『魔物は人間の天敵とされています』
だったら、この洞窟にいる魔物を倒せばいいんじゃね?
これが正解かどうかは知らんが、他にできることもない。
行動の指針が決まれば、あとは実行するのみ。
俺は腐った足で歩き出したが……遅い! ゾンビだからか、歩くスピードが遅かった。
動作の一つ一つが緩慢だ。何をするにも、人間の何倍もかかる。
そういや、地面に触れようと屈んだ時も、寝るために横になった時も、やけにのろのろしてたな。
こんなんで、魔物を倒せんのか?
不安は大きいが、やるしかないんだ。俺と同じゾンビなら、なんとかなるかもしれん。
ゾンビを求めて歩く。
歩く。
歩く。
歩く。
…………
何もいねえ!
いや、当然なんだが。体感的には半日くらい歩いたつもりでも、実際の移動距離は一キロにも満たないだろう。
これ、移動だけで何日かかるんだ?
無理ゲーだろ……
でもって。
ZP=-8
はい、善行ポイントがマイナス8になりました。
分かりやすいね。一日で1ポイント減るなら、俺は一週間歩き続けたって計算だ。
やったね! カレンダー代わりにできるよ! 一日刻みだけど!
って、いらねえよ! カレンダー機能なんていらないから、ポイントの減少をなくしてくれ!
ただでさえ、魔物が見つからないし、善行も積めてないのに……
疲れることはないし、飢えや乾きもない。だから、休憩もせずに歩き通しで一週間。
なのに、成果ゼロなんだぜ。
ひょっとして、詰んだ?
俺が絶望を感じ始めていた時だった。
「イダァッ」
痛い、の意味ではなく、居た、だ。
いたのだ。魔物が。俺と同じゾンビが。
俺も、人様を悪く言える外見ではないが、キモい。鏡を見ているみたいだ。
のろのろ、フラフラ、とうごめいてるのも、俺と同じ。
あれなら勝てる! 俺はゾンビに飛びかかった!
気分だけは。飛びかかれるほど機敏な動作なんてできねえよ。
ゾンビに近付いて、地面に転がってる石ころを使って殴る。
が、腕の振りも緩慢なので、ダメージなんてなさそうだ。
仕方ない。方針変更。本当はやりたくないが、噛みつく。
俺、ゾンビのくせに、歯はきちんと生えそろってるんだよな。
まさか、このために、クソ女神がお膳立てしてくれた?
せめて、剣でもくれればいいのに。錆びてボロボロになったやつでいいからさ。
とにかく、今の俺にできる攻撃は、噛みつきだけだ。
ここにきて初めて知ったが、味覚もあるみたいだ。クソまずい。吐きそう。
何が悲しくて、ゾンビなんぞ食わにゃならんのだ。
噛む。噛みついて食いちぎり、ゾンビにダメージを与えていく。
しばらくすれば、ゾンビは動かなくなって、全身が砂みたいになって崩れた。
死んだ、ってことだろうな。
俺は、すぐさまステータスを確認する。
ZP=-7
ポイントが増えた! 1ポイントだけだが!
ゾンビ一匹倒して、善行ポイントが1だけ増える。
これ、収支はマイナスになるんじゃ? 一日に一匹も見つからないぞ。
とか思ってたから、俺の願いが届いたとでもいうのか。
ゾンビが集まってきましたよ。ざっと見た感じ、十匹ほども。
こいつらを全部倒せば、ポイントはプラスに転じる。
問題は、俺一人で全部倒せるかだが。
やってやろうじゃねえの!
かかってこいやあっ!
そこからの記憶は、正直曖昧だ。
結果だけ言えば、俺は勝った。
決め手になったのは、俺の右腕だ。元々半分腐ってたんだが、ゾンビに攻撃されたせいで、半ばからちぎれた。
んで、幸か不幸か、むき出しになった骨が武器になった。
鋭いってわけじゃないが、そこそことんがってる骨で、ゾンビどもを滅多刺しに。
気がつけば、ゾンビどもは全滅していた、と。
長く苦しい戦いだったが、俺は勝ったのだ。
しかし。
「マダイル!?」
十匹ほども倒したってのに、さらに十、いや、二十匹以上のゾンビがきやがった。
多過ぎだろ。ここ、ゾンビの巣なのか?
そういや、狭い通路じゃなくて開けた空間になってるし、可能性はあるな。
さすがに二十匹は厳しいか。
だが、善行ポイントを溜めるチャンスでもある。
やってやんよ!