部屋
小説化になろうには以前から掲載してみたいと考えていました
短編・長編と書く予定ですが
まずは短編を掲載してみます
私は部屋の中で目が覚めた。
蹲った状態でフローリングに寝ていたのだ。
そこは何の変哲もない。玄関には廊下がある。
キッチンは、廊下に隣接していた。
トイレ、風呂はキッチンの反対側にある。
そこを過ぎると今私がいる一二畳のフローリングの部屋があった。
クーラーが、室内を冷やしている。目を擦りフローリングの床から立ち上がった。時計を見る。
時刻は、午前三時を指していた。
「何でこんな所で寝ていたんだ?」
理由は良く分からない。ただ、酷く疲れていた。
「喉が渇く」
冷蔵庫まで歩いて行き、中を開けてコーラのペットボトルを取り出す。
蓋を開けてそのまま一気に飲んだ。
身体に水分を入れると、今度は汗まみれである事に気が付く。
私はシャワーを浴びる。念入りに身体と髪を洗った。
そして、バスタオルを使って濡れた部分を乾かす。
再び、冷蔵庫を開ける。
コーラのペットボトルを取り出した。蓋を開けて飲みながらフローリングの部屋に戻る。
部屋の中は、相変わらずクーラーが動いており冷えていた。
ふと、私は窓の外を見る。
窓ガラスには、部屋の内部が写っていた。
光の反射からくる風景だ。
何気にジッと、私は窓ガラスを見詰めていた。
不審な点に気付く。
そこには、本来写っていなければならないものが写っていない。
それは、私だった。
「はぁ。何で写ってないんだ?」
窓ガラスに近寄り、覗き込むように見る。そこにあったのは、そっくりそのままの私の部屋だ。
私は、思い切り窓を開けた。
部屋がある。
「どういう事?」
手摺を乗り越え、私はもう一つの部屋に入り込む。
本来、ここは外である筈だった。
謎だらけである。
部屋の内部には、先程までいた部屋と同じように家財道具があった。部屋の中はクーラーが付いており冷えている。
私は冷蔵庫を開けた。コーラがある。
蓋を開けて飲んでみた。まぎれもなくコーラだ。
自分の頭がおかしくなったのか。私は混乱する思考を何とか抑えようと、テレビのリモコンのスイッチを押す。
私は驚愕した。
そこに映っていたものは、今いる部屋だったのだ。
「何だ。これ何だよ」
急に恐ろしさが増大する。私は元にいた部屋に戻った。
そして、今度は玄関の扉を開けて見る。そこに存在していのは、私がいた部屋だった。
息を飲む程に焦った私は、充電してあった携帯を取りに戻る。携帯はなくなっていない。電波も三本線だ。
友人の番号をリダイアルする。呼び出し音が鳴っていた。
「早く出ろ。何でもいいから出てくれ」
全く出ない。私は携帯を切った。
片っぱしから、掛けまくる。相手は出ない。
「いい加減にしろ!」
携帯に向かって怒鳴る。すると、相手に繋がった。
「やった!」
思わず声を上げる。
『やった!』
数泊遅れて、自分の声が聞こえて来た。
私は呆然とする。
それはまるで、時間が止まったかのようだった。
「もしもし」
『もしもし』
「あんたは誰?」
『あんたは誰?』
同じ言葉に同じ声が響く。理解不能な現状に、呆然とした私はゆっくりと携帯を切る。
いきなり私は、駆け出した。窓を渡り、部屋を移動する。
同じ部屋があるが気にしない。ドンドンと、窓を開けて進んで行く。
同じ部屋を、奥へ奥へと通り過ぎる。体力の限界に差し掛かった時にいたのは、全く変わらぬ部屋であった。
「ふざけんな!」
怒り心頭になり、近くにあったテレビに蹴りを入れる。
「痛って~!」
テレビは壊れず、私の足だけが被害に遭う。
「クソッ!」
私は部屋の中にあるベッドに横たわる。
走りに走ったせいか眠くなった。私は、とりあえず寝る事にしたのである。
ぐっすり眠った。
目が覚めると、私は窓の外を覗き込んだ。見えたのは同じ部屋である。急に泣けて来た。
「どうして外に出られないんだ。テレビも携帯も通じない。何なんだ!」
僕は力の限り走り出す。状況が掴めない苛立ちが、原動力となった。
「どうしてだ。どうしてだ。どうしてだ!」
涙が自然と零れ落ちる。次々と部屋を通過して行く。だが、そこには同じ部屋が立ちはだかっていた。
水道も電気もガスも通っている。風呂もトイレもちゃんと使用出来た。
冷蔵庫の食料や飲料水を口にしても問題はない。他の部屋に行けば全く減っていない同じ物があるからだ。
ただ漠然と生きて行くには、何も部屋には問題はない。
でも、私は外に出たかった。
携帯の時間は、始め見た時から動いていない。通話しようと無駄だと分かった。
テレビは部屋しか映らない。
状況が一切分からないのだ。不安が胸に込み上げる。
「お願いだ。出してくれ!」
声の限りに叫ぶが、誰の反応もなかった。
力が抜ける。
「こんな所にいるのは嫌だ」
私は、そう呟きながらも玄関のドアを開けた。
そこで、驚くべき光景を目の当たりにする。
「私の部屋じゃない」
大理石で出来た床の上に絨毯が敷かれた、巨大な部屋あった。部屋の北側には、暖炉がある。
火は燃えていた。
内部には高級なソファーが置かれており、大きくてやわらかそうなベッドがある。
南側には、今が真夏とは思えない程の柔らかで温かな日差しがあった。
まるで春の季節である。
今までいた私の部屋は、クーラーの効いた涼しい部屋だった。私の覚えている限りそこは夏である。
「どうなっているんだ。夢でも見ているのか?」
何が何だか分からない状況に困惑した。
私が部屋の中に入ると、玄関のドアが急に閉まる。
振り返った私は、反射的にドアを開けようとした。けれど、そこにはドアなどなかったのだ。
思わず、この部屋にあるドアを探す。私は恐る恐る開いてみる。
食堂だ。
しかも、大きな部屋に長いテーブルがある。
そこには、豪華な食材で彩られた食べ物があった。しかも、作りたてなのか湯気まで出ている。
食べ物に飛びついた。
「うまぃ。こんなに上手い料理は初めてだ!」
感激に浸りながらも、食べる手は止めない。
満腹になった私は、館の探索を始めた。ありとあらゆる贅沢品がある。
「こんな所に住めるんだ。だって、ここにはだれもいないんだから」
一抹の寂しささえ吹き飛ばす感激が私を襲う。
玄関ホールに辿り着いた。
窓の外には、大きな噴水付きの庭がある。
春の日差しが暖かい。私は、思い切って扉を開けた。
驚愕の光景が広がっている。
そこは、私が元からいた部屋だった。何かに押される。
私は倒れ込んだ。反射的に後方を見る。
扉がない。
「おぃ。ふざけんな!」
混乱した私が、先程のドアを探す。けれどそこには何もなかった。
「くそぉぉぉぉ!」
あまりのショックに、部屋の中で暴れて見せる。誰もいないので反応がない。疲れ切って、私は窓の外を見る。
そこには、テレビがついた全く同じ部屋があった。
そう、そこは私が最初にいた部屋だったのだ。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
膝を屈し、フローリングに足を付けて蹲る。
そしてそこで力尽き、私は意識を失ったのであった。
初投稿です
どんな感じかを掴むために短編を書いてみました
短編だけではなく長編も書いていく予定です
感想など頂ければ幸いです
よろしくお願いします